カンヌ国際映画祭が14日(現地時間、以下同)、開幕しました。感動的な開幕式と、是枝裕和監督も登壇した審査員会見の模様をお伝えします。(文化部 松田拓也)
カンヌ映画祭開幕、審査員の是枝裕和監督も登壇…ジブリに「名誉パルムドール」授与へ
サプライズと涙の開幕式
「名誉パルムドール」を受けたメリル・ストリープさん(右)と、仏女優のジュリエット・ビノシュさん(ロイター) 14日夜、リュミエール劇場で行われた開幕式をもって、ついに始まったカンヌ映画祭。記者は隣のドビュッシー劇場で中継を見ていました。続けて上映されたオープニング作品、仏のカンタン・デュピュー監督「ザ・セカンド・アクト」(英題)は映画愛にあふれたコメディーで場内は爆笑に次ぐ爆笑。のっけから大盛り上がりです。
開幕式のハイライトは二つ。コンペティション部門の審査員長を務める米映画監督グレタ・ガーウィグさんへのサプライズとして、ガーウィグさんが主演し、ブレイクのきっかけとなった「フランシス・ハ」(2012年)の主題歌、デビッド・ボウイの「モダンラブ」を仏の歌手ザホ・デ・サガザンさんがカバーし、生で歌唱する一幕がありました。彼女、なんと24歳だそう。自信に満ちたパフォーマンスは圧倒的で、ガーウィグさんも一緒に歌い、涙していました。また、ガーウィグさんが登壇する際に流された、「バービー」(23年)などの名場面をまとめた映像の出来栄えも素晴らしく、カンヌの“粋”には毎度のことながら、感服させられます。 もう一つは、米女優メリル・ストリープさんへの、長年の映画界への貢献をたたえる「名誉パルムドール」授与です。観客が約2分間のスタンディングオベーションでストリープさんを迎え入れた後、プレゼンターの仏女優ジュリエット・ビノシュさんが6分を超えるスピーチを披露しました。 ビノシュさんは「恋におちて」(1984年)で「私はあなたに恋をしました」などとストリープさんへの敬愛ぶりを示しつつ、涙ぐみながら「あなたは映画界における女性の見方を変えた」と功績をたたえると、会場は再び万雷の拍手に包まれました。 一方、「クライ・イン・ザ・ダーク」(88年)で主演女優賞に輝いて以来のカンヌへの帰還となったストリープさんは、当時を「私は既に3人の子供の母親で、もうすぐ40歳になるところで、自分のキャリアは終わったと思いました」と回顧。それでも女優業を続けてこられた理由として、出演作「ストーリー・オブ・マイライフ わたしの若草物語」(2019年)を監督したガーウィグさんを始め「一緒に仕事をしてきた才能あふれるアーティストたち」や観客の存在を挙げ、謝意を示しました。最後はビノシュさん、ストリープさんで開会を宣言し、大盛況の後に開幕式は終了しました。 なお、25日の閉幕式では米映画監督で脚本家、プロデューサーのジョージ・ルーカスさんに名誉パルムドールが授与されることが発表されています。どんなセレモニーになるのか、大の「スター・ウォーズ」ファンの記者は楽しみでなりません!是枝監督「いい2週間になればいいなと」
カンヌ国際映画祭のレッドカーペットに登場した是枝監督(左から2人目)ら(ロイター) 開幕式に先立ち、コンペティション部門の審査員の記者会見も開かれました。ガーウィグさんをはじめ、「キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン」で今年の米アカデミー賞主演女優賞にノミネートされた米のリリー・グラッドストーンさん、イタリアの名優ピエルフランチェスコ・ファヴィーノさんら、欧米、アジア出身のそうそうたるメンバーです。司会から意気込みを問われ、「自分の決断がフィルムメーカー、映画の運命を左右することになる」(仏女優のエヴァ・グリーンさん)など、光栄であると同時に審査の重責を実感する声が次々とあがる中、「審査員はほとんど初めてで、新人のようなもの」と切り出した是枝監督。「ティエリー(・フレモー総代表)から、『自分を育ててくれた映画祭でもらった賞を、次の世代に渡す役割を担ってほしい』と言われ、そういう責任を果たさなければいけないなという思いでここに座っています」と胸中を明かしました。そして、「昨日、(審査員の)皆さんと一緒にお話して、ディナーを食べ、とても和やかな時間を過ごすことができたので、いい2週間になればいいなと思っています」と話していました。 一方、報道陣からはフランスで再燃している性被害の告発運動「#Me Too運動」など、映画祭を取り巻く環境についての質問が相次ぎました。「#Me Too運動」が映画祭に及ぼす影響を問われたガーウィグさんは「話をして、物事を変えようとするのはいいこと。広げるのが重要で、いい方向に進んでいると思う。コミュニケーションをとり続けましょう」と呼びかけつつ、性的描写の撮影に立ち会って俳優をサポートする「インティマシー・コーディネーター」の導入を例に挙げ、「たくさんのことがすでに変わってきている。(映画界は)進化を続けている」と力を込めていました。 そんな記者会見の中で印象に残ったのが、レバノン出身のナディーン・ラバキー監督の言葉です。「人間らしさを探り、よく知らないことに目を向けさせてくれる。考え方を変えてくれる。何らかのアクションを取り、世界を変えたいと思わせてくれる映画に関心があります。今回もそんな映画を期待しています。物事、状況を変える一つの道具が芸術であり、映画なのです」 この言葉を胸にとめつつ、今からコンペ作品の試写に臨もうと思います。
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