評・小池寿子(美術史家・国学院大教授)
「通俗水滸傳豪傑百八人之壹人・浪裡白跳張順」(つうぞくすいこでんごうけつひゃくはちにんのひとり ろうりはくちょうちょうじゅん)歌川国芳 江戸時代・19世紀 東京国立博物館蔵(本書より)
壮絶な
勇肌(いさみはだ)
が度肝を抜く。
刺青(いれずみ)
を描いた浮世絵のオールカラーの
希有(けう)
なバイリンガル本である。
[小澤征爾を読む]武者修行、3人の師 心に…音楽学者 沼野雄司
刺青はタトゥーと言われ、いまや世界的に人気を誇るアートだ。しかし、その起源と歴史を図像と共に鮮明にした一般書はない。刺青は肌に描くのではなく、肌を鋭利な器具で彫り、色材を皮膚に定着させる彫物。端緒は古代に遡るが、日本では江戸後期に歌川国芳の浮世絵でブレークし、明治近代化以降、裸体風俗と等しく禁忌された。
本書は、第1章「勇肌の美」歌川派の浮世絵、第2章「刺青の文様」の2部からなる。序文の執筆者谷川渥は、皮膚論の研究で刺青に着目。文化史的位置づけを行い、とくに江戸期隆盛の背景と展開、特質を
仔細(しさい)
かつ簡明に論じた刺激的な論考である。貴重な刺青論が英訳され、図像と共に理解が深まることを期待する。(パイ インターナショナル、3080円)

読書委員プロフィル
小池 寿子(
こいけ・ひさこ
)
1956年生まれ。美術史家、国学院大教授。美術作品から死生観を探ることを研究主題とする。著書に『死をみつめる美術史』などがある。
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