劇団青年座が5月、創立70周年を迎える。記念公演第1弾は、大正時代の女性解放運動家の「実家」を描いたマキノノゾミの新作「ケエツブロウよ 伊藤野枝ただいま帰省中」。入団10年目のホープ、那須
凜(りん)
が主演し、彼女の素質をいち早く見いだした宮田慶子が演出する。(森重達裕)
老壮青の「それらしい」俳優がそろっているのが青年座の強みだ。最前列左から2人目が宮田、3人目が那須=大金史典撮影 1954年5月1日、俳優座の若手だった10人が創作劇を上演するという理念の下に独立し、青年座を旗揚げした。メンバーの一人が後に「日本のお母さん」と呼ばれた名優、山岡久乃で、その後も西田敏行を筆頭に数々の人気者を輩出。現在は高畑淳子、山路和弘をはじめ約200人の劇団員らが所属する。宮田は「人間くさくエネルギッシュ。70年間ずっと新作をやってきて、冒険をものともしない文化が染みついている」と自身も含めた劇団員の特徴を評する。
外部劇作家と組む機会が多い青年座にとって、マキノとの縁は特に深い。「最初に上演した『MOTHER』からもう30年。マキノさんも私も30代だった」と宮田は懐かしげに振り返る。
2016年、入団2年目にしてマキノ作・宮田演出「
横濱短篇(よこはまたんぺん)
ホテル」の大役に抜てきされたのが那須だった。その後、劇団内外での活躍により22年に読売演劇大賞の杉村春子賞を受賞。外部出演依頼が途切れない人気者となり、今回は3年ぶりの「実家」での舞台だ。「マキノさんと宮田さんは私にとって親……は別にいる(元青年座の女優、那須佐代子)ので、恩師です。3年ぶりに稽古場に戻ってきて多分、どの現場よりも緊張している。宮田さんやマキノさんに会うと心が新人に戻っちゃうんです」
「ケエツブロウよ」は、伊藤野枝(1895~1923年)が福岡・今宿の実家に滞在中の出来事が描かれる。宮田は「見事な台本です。野枝と(内縁の夫の)大杉栄を扱った芝居も映画もいっぱいあるのに、野枝の実家を舞台にするなんて全く新しい切り口。平塚らいてうの(婦人誌)『
青鞜(せいとう)
』に飛び込み、(前夫の)辻潤、大杉とのすったもんだ、最後に虐殺されるまで、この作品を見れば野枝がなぜあんな人になったのかが全部わかる」と言い切る。
一方、那須は「野枝は嫌いでした」と明かす。「思想がころころ変わるし、結婚はダメと言いながら子供をいっぱい産んだり、わがままを貫き通したり。色々な矛盾を感じるし、それが何となく、自分と似ているところもあって……」 そんな那須に、マキノも宮田も「嫌いなままでやればいい」と助言しているという。宮田は「いい距離感だと思う。『野枝大好き』という人がやるよりはよっぽどいい」と笑顔で語った。 5月24日~6月2日、東京・新宿の紀伊国屋ホール。綱島郷太郎、松熊つる松、横堀悦夫らが共演する。(電)0120・291・481。
![[舞台] 劇団青年座70周年、染みついた冒険精神…記念公演第1弾は女性解放運動家の実家描いた新作 [舞台] 劇団青年座70周年、染みついた冒険精神…記念公演第1弾は女性解放運動家の実家描いた新作](https://www.walknews.com/wp-content/uploads/2024/04/1713929837_20240424-OYT1I50047-1-1024x576.jpg)