判決を聞く田中被告(右)(イラスト・構成 富永商太)
大村秀章知事のリコール(解職請求)運動を巡る署名偽造事件は19日、無罪を訴えた署名活動団体事務局長で元県議の田中孝博被告(62)に懲役2年、執行猶予4年の判決が言い渡された。ただ、田中被告は公判を通じて事件についてほとんど説明せず、民主主義を揺るがした事件にいくつもの疑問を残したまま、一つの区切りを迎えた。(福益博子) 事件の発端は、2019年に行われた国際芸術祭「あいちトリエンナーレ」(実行委員会会長=大村知事)の企画展「表現の不自由展・その後」だった。 展示内容を問題視した美容外科医の高須克弥氏や名古屋市の河村たかし市長が、知事の責任を問うリコール運動に取り組むことで合意。高須氏を会長、田中被告を事務局長に据えて署名活動団体を結成し、20年11月、各市区町村の選挙管理委員会に約43万5000人分の署名を仮提出した。 ところが、提出直後から多数の署名が偽造された疑惑が浮上し、県選管が調査を開始。田中被告ら団体関係者が一斉に逮捕・起訴されるなどした。 田中被告は逮捕前の21年4月、読売新聞の取材に「取り調べには黙秘し、裁判で事実を述べる」と説明していた。だが、公判では認否を弁護人に代弁させ、被告人質問も行わないなど、ほぼ無言を貫いた。 偽造を主導したことは認めたものの、「県選管の署名簿の調査は違法で、署名簿は証拠にできない」などと手続きの違法性を争い、法廷では、当時の県選管の職員らが手続き面について証言する時間が長く続いた。 判決で大村陽一裁判長は、県選管の調査について「リコール制度を適正に運用する正当な目的だった」とし、弁護側の主張を退けた。 その上で、偽造の動機について「リコールを成立させ、高須氏の歓心を得て政界進出の足場を作ろうと考えた」と認定。「首謀者として犯行を主導し、動機も利己的で厳しい非難に値する」とも述べた。 ただ、民主主義を脅かす前代未聞の事件ながら、偽造を決意した経緯や活動資金の出所など、数々の疑問について田中被告本人の口から説明されることはなく、この日も、弁護人とともに足早に名古屋地裁を後にした。「河村氏説明を」知事 判決を受け、大村知事は「極めて悪質な事件であり、大変重い判決だ。誰が指示し、誰が資金を用意したのかなど、全体の事実関係が明らかになっていない。河村氏、高須氏は事件について説明する責任がある」と語った。 河村市長は「なぜ偽造したのか、田中被告には法廷で真相を全部話してほしかった。熱心に署名活動をしていた人に申し訳ない。私の関与がなかったことをまとめ、なるべく早く記者会見で示したい」と話した。
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