Chainalysis 2026 暗号資産採用指数レポートのハイライトをクイックにご覧ください。

執筆:Chainalysis

翻訳:Chopper、Foresight News

暗号資産はグローバルな潮流であり、その位置づけは人によって大きく異なる。西洋の資産運用者にとってそれは技術的アップグレードであり、トークン化資産が資産取引モデルを再構築しうるものと見なされている。開発途上国の低所得労働者にとっては生命線であり、ステーブルコインが資金の迅速な移動や政治・経済的混乱からのヘッジを可能にしている。世界各地の一般市民にとってそれは代替的な投資商品である。

本年のリポートでは、暗号資産史上における極端な相場の局面に焦点を当てている。統計期間は2025年7月1日から2026年6月30日までとし、この期間中にビットコインは一旦史上最高値を記録した後に史上最大のドル建て下落に見舞われ、高値から安値へ6万7000ドル下落した。暗号資産の時総額は半減し、2兆1000億ドル減少した。これは2022年の連発する暴落スキャンダルに続く最も過酷な熊市場である。

過去の暗号資産の熊市場と同様、今回のサイクルでも暗号資産経済の成長は鈍化したものの、縮小幅は限定的だった。データによると、世界の暗号資産経済総額(プラットフォームへの資金流入、国内ピアツーピア活動、クロスボーダー送金を含む)は前期と比較して僅か1.6%縮小した。2026年6月30日までの12か月間でオンチェーン上の経済活動規模は9.4兆ドルとなり、前統計期間(2025年6月30日時点)の9.5兆ドルを下回った。

熊市場においても世界規模の暗号資産経済活動は強靭さを維持

2026年にはより激しい下落が生じる可能性があった。時総額が半減した状況で、同等規模の資金循環を維持するには取引量が2倍になる必要がある。もし暗号資産が純粋に投資対象としてのみ利用されていたなら、2026年の下落により世界規模の資金フローの減少幅は2023年を大幅に上回る結果になっただろう。2023年のサイクルでは暗号資産の時総額は3000億ドルしか減少しなかったにもかかわらず、経済活動の低下率は23%に達した。一方、今回は時総額が2兆1000億ドル減少しながらも、経済活動の減少幅はわずか0.1兆ドルにとどまった。

暗号資産業界での着地点の多様化が進んだことが、市場縮小による悪影響を緩衝した。

サハラ以南アフリカとラテンアメリカを始めとする3つの地域で成長を実現

少額送金の大幅増加

世界の暗号資産経済の大部分は、ユーザーが取引、売買、貸借、送金を行うために使用する各種プラットフォームサービスから生じている。我々はこれらのプラットフォームセクターを追跡し、どのタイプのユーザーがオンチェーン活動を牽引しているかを把握した。2026年の統計サイクルにおいて、プラットフォーム流入少額資金規模が大幅に増加した。100ドル未満の送金額は78.4%増加し、100〜1000ドル帯は58.6%増加した。個人投資家の取引規模は2730億ドルにとどまり、約10兆ドルの総活動量の中では高い割合ではないが、これは依然として「一般個人投資家が熊市場でも撤退していない」ことを示す証拠となっている。

少額送金がより急速に増加

機関レベルの大規模送金も、価格下落環境下において同様に強靭さを見せた。100万ドル超の送金規模は前年同期比で僅か7.2%減少した。通貨価格の極めて厳しい下落を考慮すれば、これは非常に小さな減少率である。相場の最安値水準では、彼らが保有する暗号資産の評価額は直接的に半分になった。前述の通り、資産価格が半減しても既存資金規模を維持するには取引量を2倍にする必要があり、機関資金フローがこの課題に耐え抜いた格好だ。

クロスボーダーステーブルコイン送金の爆発的増加

米国『GENIUS法案』、EU MiCA法案、ならびに日本、香港、シンガポール、英国で整備された新たな規制枠組みが、ステーブルコインの普及を後押ししている。保守的な推計によれば、月間クロスボーダーステーブルコイン送金額は2025年1月の110億ドルから2026年6月には240億ドルに増加しており、実際の規模はさらに大きい可能性が高い。統計サイクルを通じて、クロスボーダーステーブルコイン送金総額は1242億ドルから2203億ドルへと増加し、増加分は77.5%に達した。此类の国境を越えた取引の平均金額は約3000ドルであり、機関向けの大口取引ではなく、典型的な日常的シナリオを示している。具体的には、サプライヤーへの支払い、国際送金、あるいは貯蓄を変換して本通貨リスクを回避する行為などが該当する。

Tether 経済副社長 Philip Gradwell は以下のように述べている。「オンチェーン上の資金流動が安定し、ウォレットに依存して継続的に発生するようになり、もはや急騰急落ではなくなった。これは単なる投機ではなく、貿易およびビジネス活動の特徴そのものだ。」

ステーブルコインのクロスボーダー資金循環

全ての国境を越えた資金流には始点と終点があり、貿易経済学において「資金チャンネル」と呼ばれるネットワークを構成する。上位 quartile の資金チャンネルは、全クロスボーダーステーブルコイン資金の96.1%を支えており、前年比70.8%増加した。ステーブルコインがグローバルビジネスに統合されるにつれて、かつて沈黙していた多数のチャンネルへ資金が流れるようになった。2026年サイクル以前、最下部の3グループのチャンネル規模は合計2.6億ドルに過ぎなかったが、今回のサイクルでは86.6億ドルに達し、新たな資金チャンネルが急速に開設された。報告書によると4708の新しいクロスボーダーチャンネルが検出され、累計で264億ドルの資金を支えている。多くの取引で主要ステーブルコインのUSDTが使用されている。

Gradwell は次のように指摘する。「USDT が真価を発揮するのはロングテール市場だ。伝統的な金融サービスではコストが高すぎたり利用制限があったりする多くの経済層がUSDTを活用できる。1件あたりの平均取引コストはわずか1セントであり、即時決済が可能で、スマートフォンがあれば十分だ。」

クロスボーダーチャンネル別に分類されたステーブルコイン送金額

本稿におけるクロスボーダー統計は、送信元・送信先国家が確認可能な送金のみを対象としている。ウォレットアドレスの所在地が特定できない場合や、経路によって送金片側が隠蔽される場合は統計に含まれない。したがって、ステーブルコインの実際のクロスボーダー規模は、報告書が統計した2203億ドルを大幅に上回っている。

ピアツーピア取引が大幅な伸びを示す

各種暗号資産プラットフォーム事業は厳冬期を迎えているものの、ピアツーピア(P2P)取引は市場の逆行をものともせずに強さを示した。取引所やDeFiプロトコルなどの商業プラットフォームへ流れ込んだ資金は前年比4.3%減少し、9兆3000億ドルから8兆9000億ドルへ減少した。一方、同一国家内の個人ウォレット間の直接送金規模は302.9%増の2287億ドル(過去568億ドル)へと急拡大した。P2P取引が両セクター合計に占める割合は0.6%から2.5%へ向上し、8つの地域全てで比率が上昇した。

全地域においてプラットフォームサービス取引に対するP2P取引の割合が向上

プラットフォーム内での取引は主に換金や入金操作が多く、通貨価格と強く連動している。価格が半減すると、同数の取引に対応するドル換算価値も自動的に半減し、投機的な回転率も市場センチメントの低迷に伴って低下する。しかしステーブルコイン決済はこの影響を受けにくい。USD基準で価格決定されるため送金額はユーザーの実需に基づき決定され、相場の昇降にかかわらず正常に機能し続ける。

プラットフォームとP2Pチャネルの内部構造にも違いがある。プラットフォーム全体の資金流入が減少したとしても、プラットフォーム内へのステーブルコイン流入は引き続き5.3%増加した。全資産を対象とした国内P2P取引全体は19.7%減少したが、そのうちステーブルコイン取引は377.7%増で大躍進した。この2つの路線の核心的差異は資産タイプにある。P2P取引の96%がステーブルコインであり、プラットフォーム取引はそうではない。熊市場で打撃を受けるのは価格感応性の高い投機資産であり、決済手段としての特性を持つステーブルコインはほぼ影響を受けていない。

市場の混乱におけるステーブルコインの価値錨としての役割

オンチェーン残高(ウォレットおよびプラットフォーム内の暗号資産ドル換算総量)はマーケット全体の変動に連動する。世界的な統計残高は2025年9月のピークである8600億ドルから、2026年6月には4400億ドルへ減少した。9ヶ月間にわたる下落サイクルの中で、ステーブルコインの残高は980億ドル〜1090億ドルの範囲で推移した。ステーブルコインはUSDにペッグされており、オンチェーン上の価値は暗号資産相場の動向に左右されない。その他の暗号資産総残高は55.6%減少した。2026年6月時点でステーブルコインが世界のオンチェーン資産残高に占める比率は22.5%に到達したが、これはユーザーが大挙して買い入れたわけではなく、他の資産の目減りによる相対的な持ち株比率の引き上げである。

この傾向は今回が初めてではない。2022年12月から2025年9月にかけてステーブルコイン残高は72.5%増加し、その後2026年の下落相場では規模を維持した。牛市場・熊市場のサイクルを繰り返すごとに、ステーブルコイン残高のベースラインは前回のサイクルを上回り、マーケット全体が下落するたびにステーブルコインが全資産に占める割合は引き上がる。

世界規模の暗号資産残高とステーブルコイン残高の割合

ブラジルが世界暗号資産採用指数で首位を獲得

プラットフォームへの資金流入、ウォレット残高、国内暗号資産経済、クロスボーダー資金フローの4指標を総合評価したグラースルート暗号資産採用指数において、ブラジルが世界第1位となった。いずれの個別項目でも世界首位を獲得したわけではないが、熊市場のサイクルにおいて自国経済規模に対して持続的に堅調なパフォーマンスを維持し、米国や日本といった先進市場を上回った。

グラースルート暗号資産採用指数 世界トップ20か国(統計期間:2025年7月1日〜2026年6月30日)

統計手法

グラースルート採用指数は各国における暗号資産採用の普及度を測るものであり、暗号資産経済の異なるセクターを表す4つのサブ指数から構成されている。

プラットフォーム資金流入:中央集権型取引所、DeFiプロトコル、その他の暗号資産サービスへ流入した資金。各国の一人当たりGDPで加重平均。

国内ピアツーピア送金:同一国家内の個人ウォレット間で直接送金された資金。

クロスボーダー送金:国境をまたぐ資金の流れ。4つのパスを含む。個人対個人、個人対プラットフォーム、プラットフォーム対個人、企業対企業。

資産残高:特定時点の総保有量。所在地が特定可能な個人ウォレット資産と、一部のプラットフォーム(取引所、KYC不要取引所、P2P取引所)内の残高を含む。

報告書では十分なデータを有する117か国を対象にランキングを作成した。原始数値はまず購買力平価(PPP)に基づいて加重され、ミニマックス正規化を経由して0〜1の範囲に統一マッピングされる。最下位国を0、最上位国を1とする。一国の総合指数スコアは、4つの正規化済み分数の幾何平均値として算出される。このアルゴリズムは4指標の均衡ある発展を促し、特定の1項目だけが秀でている状態が他分野の弱点を覆い隠す事態を防ぐ。首位のブラジルを例に挙げると、いかなる個別部門でも世界首位を獲得していないものの、4指標すべてで均衡かつ強力な実績を上げているため、総合順位で首位となった。

取引帰属国の判定方法

個人ウォレットの帰属は行動特徴に基づく。例えば、国内の単一国家向け取引所とのインタラクション履歴など。プラットフォーム側の判定はより困難である。取引所は全ユーザーの資金を同一のオンチェーンアドレスに集約するため、ブロックチェーン情報だけではユーザーの国籍を判断できない。プラットフォーム資金は各国のWebサイトトラフィックシェアに基づいて対応する国家に割り当てられ、プラットフォーム内の資産残高も同様の分配ロジックを採用する。高所得国のアクセストラフィックは、通常、1件あたりの金額が大きな取引に対応する。そのため、各国のトラフィックシェアは一人当たりGDPの平方根を乗じて再加重正規化する。平方根を使用し、一人当たりGDPの本来の値を用いることで、重みを適度に調整し、収入が分配に影響を与えつつも結果を完全に支配しないようにする。世界の資金総規模は変更せず、異なる国家間の再配分にのみ用いる。

具体事例を挙げる。2026年6月のある大手取引所で、韓国とインドのトラフィックシェアは共に8.1%であった。当月の流入総額は1193億ドルであり、両国の初期割当額はそれぞれ97.1億ドルとなった。調整後、韓国の比率は11.6%(138.7億ドル)に上昇し、インドは3.2%(37.8億ドル)に低下した。両者の3.7倍の差は、まさに両国の一人当たりGDP(韓国3万6239ドル対インド2695ドル)の比率の平方根に一致する。取引所の総資金規模は不変であり、調整は国家間の分配比率を変更するのみである。

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