レアル・ソシエダードは4大会に挑む試練のシーズンを開始したが、決して順調とは言えない状態にある。

スペインリーグ第6節終了時の成績は、2勝1分け3敗、6得点11失点で13位。直近10年で最低のスタートとなった昨季に比べればましだが、その前年まで5季続けて6位以内でシーズンを終えていたチームとしては物足りない成績である。

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■消極的投資策が補強に影響

チームが勢いに乗れていない主な原因として、ワールドカップ(W杯)北中米大会の影響や移籍市場でのクラブの方針が挙げられる。

Rソシエダードはプレシーズンをスタートしたが、久保建英、オヤルサバル、ゲデス、スチッチはW杯参加により合流が大幅に遅れ、マタラッツォ監督のチーム作りに弊害をもたらしていた。

さらに今夏、昨季のメンバーからブライス・メンデス、エルストンド、チャレタ=ツァル、ウェズレイが退団し、オドリオソラが長期離脱中のため、特に右サイドバックとセンターバックの補強が必須であったが、消極的な投資が影響し、実現にかなりの時間を要していた。

Rソシエダードは健全経営を維持し、負債がなく、財布の紐が非常に硬い。そのため、サラリーキャップ(選手の契約年数に合わせて分割された移籍金や選手年俸などの限度額)はスペインリーグ7番目となる1億3719万ユーロ(約246億9420万円)であるにもかかわらず、今夏費やした補強費はわずか1000万ユーロ(約18億円)だった。

ジョキン・アペリバイ会長が先月、「ラ・レアル(Rソシエダードの愛称)には投資できる資金はあるが、下部組織の選手たちにこれまで以上に投資すべきだと考えている。補強の義務を感じていない」と話したことからも、獲得する選手は本当に必要な即戦力のみで、それ以外は手塩にかけて育てた選手で十分に補えるという考えが感じられる。とはいえ、近年は補強失敗の例がいくつもあった。

最終的に補強したDF2人をうち、1人目が加入したのは移籍市場が閉まる4日前と非常に遅かった。セネガル代表DFママドゥ・サールを手数料150万ユーロ(約2億7000万円)でチェルシーから期限付き移籍、その翌日にU−21スペイン代表DFエクトル・フォルトを850万ユーロ(約12億7500万円)でバルセロナから完全移籍でそれぞれ獲得した。さらに期限付き移籍から戻ってきたDFパチェコがDF陣に加わった。

その他、期限付き移籍で昨季Bチームに所属した喜多壱也(※今季開幕から2部リーグ5試合全てでフル出場)を150万ユーロ(約2億7000万円)で買い取っている。

攻撃陣に関しては、「センターフォワードの補強が必須」と地元メディアに指摘されていたが、最後まで動かなかった。下部組織の選手を積極的に登用するという方針に従い、今季はサイドアタッカーのオチエングをトップチームに昇格させている。

久保建英(2024年撮影)久保建英(2024年撮影)

■守備優先で攻撃力を出せず

W杯参加選手の合流と補強という2つの遅れによる準備不足は顕著に表れ、連携面やコンディション面での問題を露呈し、チームは開幕2連敗という厳しい形でスタートした。その後、粘り強さを見せて3戦無敗を維持したものの、直近のアトレチコ・マドリード戦は物議を醸すPK判定をきっかけに守備が崩壊して0−3の大敗を喫し、リーグ戦で中位以下に沈んでいる。

現地ではここまでの戦い方に関してさまざまな分析が行われ、マタラッツォ監督が昨季のリーグ戦で最多失点という状況を立て直すべく、守備の再構築を最優先したことで、攻撃力が失われているとの指摘がある。

チームは昨季、マタラッツォ監督就任以降に公式戦26試合を戦ったが、無得点試合はわずか2回のみだった。一方、今季はすでに3試合を無得点で終えている。その原因として、守備ブロックを昨季よりも低い位置に置いていることに加え、ビルドアップがうまく機能していないこと、主力選手の得点力不足(※2ゴールのスチッチがチーム得点王。オヤルサバル、ゲデス、久保、カルロス・ソレールはノーゴール)、アタッキングサードへの侵入やサイドでのドリブル突破の数が減少していることなどが挙げられている。

かといって守備面が大幅に改善されたわけでもない。失点数は下から3番目で、クリーンシートは1試合のみ。不安定な状況が続き、昨季同様にリード後のゲームコントロールに問題を抱えている。今季はさらに納得できない不利な判定が重なり、クラブ内で度々不満が噴出していることもチーム状況に悪影響を及ぼしている。

■ケガに苦しめられた1年…

Rソシエダード5年目の久保にとっては厳しいシーズンの始まりとなっているが、この1年度重なるけがに苦しめられてきたことを考えると、致し方ない部分もある。

昨年9月の左足首捻挫は完治まで2カ月を要し(※無理を押してプレーしたため、欠場は3試合のみ)、今年1月の左足ハムストリング負傷は全治3カ月、計12試合の欠場を余儀なくされた。さらに、W杯初戦のオランダ戦で左膝を負傷したことでチームへの合流が大幅に遅れ、プレシーズンマッチは2試合に出場したのみだった。

こんな状況ではベストパフォーマンスを発揮できなくても無理はない。開幕から2戦連続でスタメン入りしたが、ここまでの成績はスペインリーグ5試合(先発3試合)、223分出場、得点、アシスト共になく、シュートはわずか1本のみ。ここ2試合ベンチスタートが続き、第5節エルチェ戦は出番がなかった。マタラッツォ監督が「タケがベストの状態でないことを我々も彼自身もよく理解している」と話していたことからも、良い状況ではないことが分かる。

今季ここまでの久保に対する地元メディアの評価は全体的に低く、レギュラー確保が容易ではないと度々報じられている。オヤルサバルは絶対的な存在であり、W杯参加と手術で出遅れたゲデスも今後、不動の地位を築くと考えた場合、マタラッツォ監督は4−2−3−1を採用しているため、残る攻撃のポジションは2枠になる可能性が高い。

そこから先は監督の起用法次第だが、久保が直接的あるいは間接的にポジションを争うのは、バレネチェア、オスカルソン、スチッチ、そしてエルチェ戦で1得点2アシストの活躍を見せたオチエングとなりそうだ。さらに、トップ下とボランチの両方でプレーできるカルロス・ソレール、負傷中のパブロ・マリンがこの争いに加わる可能性もある。

久保はこの後、17日に2季ぶりに参加する欧州リーグ初戦でボーンマス(イングランド)と対戦し、20日に今夏バレンシアに加入した佐藤龍之介との日本人対決に臨む。今季はけがに苦しむことなく、早急に本来の調子を取り戻し、以前のように右サイドで違いを作り出す姿を見せてくれることを期待したい。

【高橋智行】(ニッカンスポーツコム/サッカーコラム「スペイン発サッカー紀行」)

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