
2026年度(令和8年度)の岩手県の最低賃金は、時間額1,090円に引き上げられます。現行の1,031円から59円(5.72%)の引き上げで、国の目安額(56円)を3円上回る答申となりました。2012年以来14年ぶりに委員全会一致で決着し、企業の準備期間を確保するため発効日を通常より1か月ほど遅らせた2026年(令和8年)12月1日から県内のすべての事業所に適用される見通しです。
📌 この記事の情報は公式発表・報道に基づいています
本記事の金額・発効日は、岩手地方最低賃金審議会の答申について報道各社が確認した内容です。ご自身でも下記の出典から直接ご確認いただけます。
報道:岩手日報社・日本テレビ系列(TVI岩手めんこいテレビ・IBC岩手放送)
📋 このページの内容
2026年度(令和8年度)岩手県最低賃金 改定の概要
項目
内容
答申額
時間額 1,090円
現行の金額(2025年度)
1,031円
引き上げ額・引き上げ率
59円(5.72%) ※過去最高だった2025年度(79円)に次ぐ2番目の上げ幅
中央最低賃金審議会の目安との差
目安(56円)を3円上回る答申
採決の状況
委員全会一致(2012年以来14年ぶり)
答申日
2026年(令和8年)8月31日
発効予定日
2026年(令和8年)12月1日(通常より1か月ほど遅い設定)
適用対象
岩手県内の事業所で働くすべての労働者(パート・アルバイト・正社員を含む)
2026年度 全国加重平均の目安
1,176円(+55円・4.9%) ※目安どおりの場合の試算
今回の答申は、岩手地方最低賃金審議会(会長:齋藤信之氏)が2026年8月31日、岩手労働局長に対して行ったものです。岩手県の最低賃金は2025年度に79円引き上げられ初めて1,000円を超えましたが、2026年度は中東情勢の悪化などで経営の厳しい小規模事業者の負担も踏まえ、引き上げ幅は59円に抑えられました。それでも過去最高だった2025年度(79円)に次いで2番目に大きい引き上げ幅です。なお、国の中央最低賃金審議会が示した全国平均の目安1,176円は下回っています。
参考:岩手日報「岩手県の最低賃金1090円に引き上げを答申 岩手地方最低賃金審議会」 / 日テレNEWS(TVI岩手めんこいテレビ)「【最低賃金】審議会が1090円を答申」 / Yahoo!ニュース(IBC岩手放送)「岩手県の最低賃金 現行より59円引き上げて『1090円』とするよう答申」
⚠ この金額はまだ「答申」段階で、正式決定ではありません
今回発表された1,090円は、岩手地方最低賃金審議会が岩手労働局長に答申した金額です。岩手労働局は2026年9月15日まで異議申し立てを受け付けます。正式決定・発効までは現行の1,031円が適用されています。
なぜ14年ぶりの全会一致で決着したか
岩手県内の最低賃金を巡っては、労働者・使用者の代表などでつくる審議会の専門部会が議論を進めてきました。使用者側は県北や沿岸の企業の厳しい経営状況などを懸念していましたが、最終的に発効日を通常より1か月ほど遅らせ、企業の準備期間を延ばすことを答申に盛り込むことで労使が合意し、2012年以来14年ぶりに委員全会一致での答申となりました。
県経営者協会の藤田芳男専務理事は「県内の中小企業、そして小規模事業者を取り巻く環境というのは不透明さが増して大変な状況。銀行からの借り入れもあるのできちんとした賃上げができるような準備期間を取らないと大変だ」と述べています。一方、審議会の齋藤信之会長は「働く労働者の生活も厳しい。企業経営者に対する影響も大きい。賃上げの原資を確保するためにも今後、価格転嫁の徹底を進めていただきたい」とコメントしました。あわせて審議会は、全国的に低水準にある岩手の最低賃金のさらなる引き上げを図るよう申し入れています。
💡 発効日が「12月1日」と他県より遅い理由
多くの都道府県が10〜11月発効の中、岩手県は12月1日発効と全国的にも遅めのグループに入ります。これは使用者側の懸念に配慮し、労使合意のもとであえて発効日を遅らせ、企業の賃上げ準備期間を長く確保する狙いによるものです。給与計算のスケジュールを組む際は、この発効日の遅さを踏まえて準備してください。
いつから?岩手県最低賃金の適用タイミング
岩手県最低賃金は、答申どおりに決定された場合2026年12月1日から適用される見通しです。適用の基準は支払日ではなく労働日(実際に働いた日)です。12月1日以降の労働分から1,090円以上の支払いが必要になります。
⚠ よくある誤解:「支払日が12月1日以降なら新賃金」は誤りです
最低賃金の適用は「支払日」ではなく「労働日」が基準です。11月分の給与を12月25日に支払う場合でも、11月中の労働には旧賃金(1,031円)が適用されます。12月1日以降に働いた分から1,090円以上の支払いが必要です。
締め日・支払日別の適用タイミング(発効日が12月1日の場合)
締め日
支払日
新賃金の適用開始
注意点
月末締め
翌月25日払い
12月分給与(1月25日払い)から
12月1〜31日分すべて新賃金
15日締め
当月末払い
12月1日〜15日分(12月末払い)から
12月1日から全日新賃金対象
20日締め
翌月5日払い
12月1日〜20日分(1月5日払い)から
12月1日から全日新賃金対象
日払い・週払い
都度払い
12月1日労働分から即日適用
11月30日までは旧賃金1,031円
月給者の最低賃金チェック方法
計算式
(月給額 ÷ 1か月の平均所定労働時間) ≧ 1,090円
計算例
月給178,000円・所定労働時間163.3時間の場合:
178,000円 ÷ 163.3時間 = 時給 約1,090円 → ⚠ 端数によっては下回るため要確認
最低賃金の計算に含めない賃金
時間外労働手当(残業代)・休日労働手当・深夜労働手当
精皆勤手当・通勤手当・家族手当
臨時に支払われる賃金(見舞金・結婚祝い金など)
1か月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)
固定残業代(みなし残業手当)
参考:厚生労働省「最低賃金の対象となる賃金」
特定最低賃金(産業別最低賃金)
岩手県には特定最低賃金が4業種設定されています。2025年度時点で鉄鋼業・金属製品製造業(1,072円)・自動車小売業(1,068円)・光学機械器具等製造業(1,052円)・電子部品等製造業(1,039円)はいずれも地域別(1,031円)を上回っていました。今回、地域別最低賃金が1,031円→1,090円へ引き上げられる答申が出たことで、4業種すべてが新しい地域別最低賃金を下回る「逆転」が生じる見込みです。特定最低賃金がまだ改定されていない業種でも、地域別より低い金額は適用できないため、逆転が生じた場合は自動的に地域別最低賃金(1,090円)が優先適用されます。
産業
特定最低賃金
(2025年度時点)
新地域別(1,090円)との関係
鉄鋼業・金属製品製造業
1,072円
逆転:地域別1,090円が優先
自動車小売業
1,068円
逆転:地域別1,090円が優先
光学機械器具等製造業
1,052円
逆転:地域別1,090円が優先
電子部品等製造業
1,039円
逆転:地域別1,090円が優先
⚠ 岩手県は特定最低賃金4業種すべてが地域別に切り替わる見込み
特定最低賃金は地域別最低賃金を下回ることができません。今回の答申どおり地域別が1,090円に改定されると、鉄鋼業・金属製品製造業(1,072円)・自動車小売業(1,068円)・光学機械器具等製造業(1,052円)・電子部品等製造業(1,039円)のいずれも特定最低賃金が地域別を下回るため、4業種すべての事業者が地域別最低賃金(1,090円)以上の支払いが必要になります。岩手県は地域別の引き上げ幅が大きく、特定最低賃金の逆転が全業種で生じる典型例です。
💡 特定最低賃金の「適用除外」に該当するケース
以下の労働者は特定最低賃金の適用除外となり、地域別最低賃金が適用されます。
18歳未満または65歳以上の者
雇入れ後一定期間未満で技能習得中の者
清掃・片付けなど軽易な業務に主として従事する者
⚠️ 技能実習生は「雇入れ後一定期間未満で技能習得中の者」には該当しないため適用除外になりません。
参考:岩手労働局ホームページ
賃上げを支援する助成金
① 業務改善助成金
項目
内容
助成上限額
最大450万円(特例事業者は最大600万円)
助成率
事業場内最低賃金が1,050円未満の場合は5分の4、1,050円以上の場合は4分の3(※岩手県の新地域別最低賃金は1,090円のため、答申どおりの改定後は多くの事業者で助成率は4分の3となります)
対象
中小企業・小規模事業者(事業場内最低賃金が地域別最低賃金+50円以内)
注意点
交付決定前の設備投資は対象外。必ず事前申請を行うこと
参考:厚生労働省「令和8年度 業務改善助成金のご案内」
② キャリアアップ助成金(賃金規定等改定コース)
引き上げ率
助成額(1人あたり・中小企業)
3%以上4%未満
4万円
4%以上5%未満
5万円
5%以上6%未満
6.5万円
6%以上
7万円(最大)
参考:厚生労働省「令和8年度 キャリアアップ助成金パンフレット」
③ キャリアアップ助成金(短時間労働者労働時間延長支援コース)
項目
内容
助成額(1年目・1人あたり)
最大50万円(小規模企業)/最大40万円(中小企業)
対象
週の所定労働時間を5時間以上延長し、社会保険に新たに加入させた事業主
💡 2026年10月施行:労働条件明示ルールの変更に注意
2026年(令和8年)10月1日より、パート・有期雇用労働者を雇い入れる際(契約更新時を含む)の労働条件明示事項に、「待遇の相違の内容・理由等に関する説明を求めることができる旨」の追加が義務化されます。違反した場合は10万円以下の過料となります。岩手県の地域別最低賃金の発効予定日(12月1日)より前に施行されるため、両方の対応時期を混同しないよう注意してください。
よくある質問(FAQ)
Q1. 2026年度の岩手県最低賃金はいくらですか?いつから適用されますか?
2026年度(令和8年度)の岩手県最低賃金は、地方最低賃金審議会の答申額で1,090円です(現行1,031円から59円・5.72%引き上げ)。答申どおり決定された場合、2026年(令和8年)12月1日から適用される見通しです。ただし2026年8月時点ではまだ答申段階であり、異議申し立て手続き等を経て正式決定されます。
Q2. なぜ14年ぶりに委員全会一致で決着したのですか?
使用者側は県北や沿岸の企業の厳しい経営状況を懸念していましたが、労使が「発効日を通常より1か月ほど遅らせ、企業の準備期間を延ばす」ことで合意しました。この歩み寄りにより、2012年以来14年ぶりとなる委員全会一致での答申が実現しています。発効日が他県より遅い12月1日となっているのは、この合意を反映したものです。
Q3. 「答申」と「決定」は何が違いますか?
「答申」は地方最低賃金審議会が労働局長に提出する意見です。岩手労働局は2026年9月15日まで異議申し立てを受け付けます。異議があれば審議会で再審議したうえで、労働局長が正式に金額を決定し官報に公示します。正式決定・公示までは現行額(1,031円)が法的に有効です。
Q4. 岩手県最低賃金(1,090円)に自社の賃金が対応しているか確認する方法は?
月給制の場合は「月給額÷月平均所定労働時間≧1,090円」で確認します。通勤手当・時間外手当・固定残業代・賞与等は比較対象外です。最低賃金を下回る賃金の支払いは最低賃金法違反(50万円以下の罰金)となります。
【罰則の違い】地域別と特定最低賃金で罰則が異なります
・地域別最低賃金を下回った場合:最低賃金法違反→50万円以下の罰金
・特定最低賃金を下回った場合(地域別は上回っている):労働基準法違反→30万円以下の罰金
Q5. 岩手県の特定(産業別)最低賃金はどの業種に適用されますか?
岩手県には鉄鋼業・金属製品製造業(1,072円)・自動車小売業(1,068円)・光学機械器具等製造業(1,052円)・電子部品等製造業(1,039円)の4業種に特定最低賃金が設定されています。今回の答申どおり地域別が1,090円へ改定されると、4業種すべてで特定最低賃金が地域別を下回るため、地域別最低賃金(1,090円)が優先適用されます。
Q6. 最低賃金引き上げへの対応として活用できる助成金はありますか?
主な制度は①業務改善助成金(特例事業者の場合最大600万円・一般事業者は最大450万円。答申どおりの改定後、岩手県の助成率は多くの場合4分の3)、②キャリアアップ助成金・賃金規定等改定コース(1人あたり4万円〜7万円)、③短時間労働者労働時間延長支援コース(最大50万円)です。業務改善助成金は交付決定前の設備投資は対象外となるため、事前申請が最重要です。
Q7. 試用期間中・外国人労働者にも最低賃金は適用されますか?
はい、試用期間中・外国人労働者・技能実習生を含む全ての労働者に最低賃金は適用されます。「試用期間だから最低賃金以下でよい」という考えは誤りであり、違反した場合は罰則の対象となります。
Q8. 最低賃金と社会保険の適用拡大が重なる場合の影響は何ですか?
社会保険の適用拡大により、月収8.8万円(年収106万円)以上・週20時間以上働くパート・アルバイトは社会保険加入義務が生じています。最低賃金の引き上げにより新たに加入対象となるケースがあります。社会保険の適用拡大により新たに加入対象となる短時間労働者の保険料負担を、最長3年間軽減する「保険料調整制度」が2026年(令和8年)10月から実施されます。
Q9. 適用開始日をまたぐ給与計算はどうすればよいですか?
答申どおり2026年12月1日が発効日となった場合、11月30日までの労働分は旧賃金(1,031円)、12月1日以降の労働分は新賃金(1,090円)を適用します。なお計算の手間を省くため、月の最初から最後まで新しい最低賃金で計算して支給しても問題ありません。
お問い合わせ先
■ 監修者情報
寺田 慎也(てらだ しんや)
寺田税理士・社会保険労務士事務所 所長 / 社労士法人フォーグッド 代表社員 /
株式会社フォーグッドコンサルティング 代表
【保有資格】税理士、特定社会保険労務士
【専門分野】税務顧問、確定申告、税務調査対応、社会保険手続き、給与計算、労務相談、助成金・補助金申請支援、人事評価制度構築、デューデリジェンス(DD)、経営コンサルティング
【組織体制】1950年創業。スタッフ22名、税理士有資格者4名・社労士6名(うち特定社労士2名)・給与計算実務能力検定有資格者4名が在籍し、大阪(本町)・東京(日本橋)の2拠点で全国450社以上の企業をサポート。
【代表者の実績・メディア掲載】
・テレビ朝日系列「羽鳥慎一モーニングショー」専門家として複数回出演(生出演:2024年5月22日・6月4日、資料使用:2025年6月9日)
・PRONIアイミツ「税理士と社労士が在籍するおすすめ事務所」実績部門 4年連続全国1位(2023〜2026年)
・中央経済社『税務弘報』にて連載執筆中
・著書:『多様化する雇用形態への税務対応Q&A』(ぎょうせい、2026年6月)
・著書:『中小企業の人材コストは国の助成金で払いなさい』(幻冬舎、2018年)
・著書:『雇用関係助成金申請・手続マニュアル』(日本法令、2020年)
事務所公式サイト:https://taxlabor.com/
※本記事は2026年8月31日時点の情報に基づいて作成しています。2026年度の岩手県最低賃金(1,090円・12月1日発効予定)は答申段階であり、異議申し立て(〜2026年9月15日)などの手続きを経て正式決定されます。法改正等により内容が変わる場合があります。実際の実務判断は顧問税理士・社会保険労務士にご相談ください。
・岩手日報「岩手県の最低賃金1090円に引き上げを答申」(2026年8月31日)
・日テレNEWS(TVI岩手めんこいテレビ)「【最低賃金】審議会が1090円を答申 過去最も高かった去年に次ぐ上げ幅」(2026年8月31日)
・Yahoo!ニュース(IBC岩手放送)「岩手県の最低賃金 現行より59円引き上げて『1090円』とするよう答申」(2026年8月31日)
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