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三菱UFJリサーチ&コンサルティング 調査部 主任研究員
40.5%増でもブームは長続きしない
欧州連合(EU)は以前2035年までに新車を電気自動車(EV)に代表されるZEV(走行時に温室効果ガスを排出しないゼロエミッション車)に限定する目標を掲げた。実質的には、日系メーカーが得意なハイブリッド車(HV)を排除する目的のためだったが、中国製EVに押された結果、自らが重視する自由貿易と相反する関税を導入した。

写真=AFP/時事通信フォト
パリのローラン・ギャロスで開催された「La REF 2026」で基調講演を行う欧州委員会のフォン・デア・ライエン委員長=2026年8月27日
そのEUのEV市場は2024年、2025年と低調だったが、今年に入って急拡大している。欧州自動車工業会(ACEA)によると今年前半における乗用車の新車登録台数は前年比5.7%増となったが、うちEVの台数は前年比40.5%増と、プラグインハイブリッド車(PHV)の22.5%増やハイブリッド車(HV)の13.2%増を引き離した(図表1)。

出所=欧州自動車工業会(ACEA)
また乗用車新車登録台数に占める割合は20.7%と、前年から5%ポイント拡大した。こうしたEV拡大のトリガーとなったのが、イラン発のエネルギーショックだ。化石燃料の価格が再び高騰する中で、EVの人気が高まっているようだ。EV推進派は朗報と言えるのだろうが、この第2次ブームの賞味期限は、そうは長くないと考えられる。
そもそも、市場の動きに最も敏感である自動車メーカーが、高らかに掲げたEVシフトを見直していることの意味は大きい。例えば日本のホンダやドイツのメルセデス・ベンツなどは、近いうちに新車の供給をEVに完全シフトするとしていた方針の撤回・修正を迫られている。
旗振り役の英国も目標を下方修正
加えて、EV推進派である英国の労働党政権の対応も注目される。
7月に就任したアンディ・バーナム新首相のもと、政権を率いる中道左派の労働党の支持率は回復基調にある。その労働党はもともと2030年までに新車登録に占めるEV(正しくはZEVだが、実質的にはEVを意味するものである)の割合を80%とする目標を掲げていたが、その下方修正に向けた協議を8月14日から開始したところだ。
脱炭素化を強く志向する労働党にとって、EVシフトはその有力な戦術となるはずだった。そして、第2次ブームがEV普及の強力な推進力になり得るものなら、バーナム首相のもとで支持率が回復している労働党が、その下方修正に取り組む理由もない。しかしEVシフトはやはり難しいからこそ、労働党は目標の下方修正に臨むわけだ。
EUとして最もエレガントな流れは、EVの走行に必要な電力を再エネで賄うことにほかならない。そうすればまさにカーボンフリーなモビリティが成立するためだが、それが実現するための発電量を再エネだけで賄うことはまだまだできない。そうであるからこそ、EUは原子力やガス火力を容認し、エネルギーの確保に努めようとしている。
