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有田焼、吉野ヶ里遺跡、嬉野温泉。九州の玄関口である福岡に隣接する佐賀県は、通過されがちでありながら、独自の観光資源を持つ県です。
その観光の経済規模はどれくらいなのでしょうか。
観光庁が公表している都道府県別の集計から確認していきます。
この記事の3つのポイント
2025年の佐賀県における旅行消費額は約1124億円
旅行消費単価は約2万3000円
訪問者数は延べ486万9000人で、最も大きな費目は宿泊費の約355億円
1. 佐賀県の旅行消費額は約1124億円
まず、指標の中身を確認しておきましょう。旅行消費額には、団体・パックのツアー料金や宿泊費、飲食費、交通費などが含まれます。
国土交通省観光庁の公式サイトに掲載されている「旅行・観光消費動向調査【参考表】2025年年間 都道府県別集計表」によると、2025年の佐賀県における旅行消費額と旅行消費単価は、以下の結果になりました。
旅行消費額:約1124億円
旅行消費単価:約2万3000円
1124億円という金額を、これまでご紹介してきた数字と比べてみましょう。
観賞魚用品の出荷金額:166億600万円
防災食品の市場規模:261億円
佐賀県の旅行消費額:約1124億円
空港整備勘定:4250億円
ひとつの県の観光だけで、全国規模の産業に匹敵する経済が動いていることになります。
2. 旅行消費単価は約2万3000円
1人あたりの支出を示すのが旅行消費単価です。佐賀県は約2万3000円でした。
同じ調査の全国集計では、2025年の日本人国内旅行の1人1回あたり旅行支出(旅行単価)は4万8424円でした。内訳は宿泊旅行が7万2412円、日帰り旅行が2万円です。
ただし、この2つの数字は単純に比べられません。都道府県別集計の「消費単価」は、資料の注記で都道府県間の交通費を含まないとされています。一方、全国の旅行単価には交通費が含まれます。含まれる費目が違うため、差のすべてを旅行の中身の違いとして読むことはできません。
比べるのであれば、同じ都道府県別集計のなかで見るのが適切です。たとえば同じ表で三重県の消費単価は3.6万円、佐賀県は2.3万円でした。福岡都市圏から近く、車でも鉄道でも短時間でアクセスできる立地は日帰り観光に向いており、そのことが単価に影響している可能性は考えられます。
3. 「通過県」からの脱却という課題
佐賀県の旅行消費額1124億円を費目別に見ると、最も大きいのは宿泊費の354億8000万円でした。次いで交通費が251億1000万円、買物代が237億6000万円と続きます。宿泊してもらえるかどうかが、地域に落ちるお金を大きく左右します。
佐賀県の場合、九州新幹線や高速道路が通っており、福岡から長崎や熊本へ向かう経路上に位置します。アクセスの良さは強みですが、同時に「通り過ぎられやすい」という課題にもつながります。
温泉地の滞在、窯元めぐり、気球やバルーンフェスタといったイベント。滞在時間を延ばす要素をどう組み合わせるかが、単価を押し上げる鍵になります。
旅行消費単価という指標は、こうした地域の課題を映し出す鏡でもあります。
旅行消費額と旅行消費単価は別々の数字として示されていますが、この2つは掛け算の関係にあります。
約1124億円を約2万3000円で割ると、およそ489万人。実際に同じ資料には訪問者数が延べ486万9000人と示されていて、掛け算の関係が確かめられます。
この分解をしておくと、数字が動いたときの読み方が変わります。消費額が増えたとして、それは訪れた人が増えたのか、1人あたりの支出が増えたのか。前者は集客の話で、後者は滞在の話です。同じ増加でも、打つ手はまったく違ってきます。
逆に、消費額だけを追っていると、このどちらが動いたのかは分かりません。本文が単価の低さから日帰り客の比率を読み取っているのも、この掛け算を逆からたどった見方だといえます。
「通り過ぎられやすい」という課題は、このうち後者に関わる話です。人は来ているのに単価が伸びない、という形で数字に表れるのだと思います。

4. 都道府県別集計を読むときの注意点
今回のデータは、観光庁が全国統一の基準で実施している調査の都道府県別集計です。
この点は重要です。都道府県が独自に実施している観光統計は、調査方法や集計範囲がそれぞれ異なるため、県どうしを単純に比較することができません。
一方、観光庁の「旅行・観光消費動向調査」は同じ基準で全国を調査しているため、都道府県間の比較が可能です。
「うちの県の観光消費額は他県と比べてどうか」を知りたいときは、こうした全国統一基準の調査を参照するのが適切だといえます。
なお、この調査における旅行消費額は、旅行者が訪問先で支出した金額を都道府県別に配分したものです。集計方法の詳細については、観光庁の公表資料をご確認ください。
5. 佐賀県を旅する予算の目安
旅行者の視点で見ると、約2万3000円という単価は予算を組む際の参考になります。
ただしこの単価には都道府県間の交通費が含まれていないため、自宅から佐賀県までの移動費は別に見積もる必要があります。宿泊を考えるのであれば、同じ資料で佐賀県の宿泊費が1人あたり0.7万円程度とされている点も参考になります。
平均値はあくまで目安ですが、旅行計画の出発点としては役立つ数字です。
6. 佐賀県の観光資源をあらためて見る
数字の背景には、その地域が持つ観光資源があります。佐賀県の場合、独自性の高い資源が複数存在します。
まず、やきものです。有田焼、伊万里焼、唐津焼。日本を代表する陶磁器の産地が県内に集まっています。春の陶器市には全国から愛好家が訪れます。
次に、温泉です。嬉野温泉と武雄温泉は、いずれも歴史のある温泉地です。
そして、佐賀インターナショナルバルーンフェスタ。アジア最大級とされる熱気球の大会は、開催期間中に多くの来場者を集めます。
さらに、吉野ヶ里歴史公園という弥生時代の大規模環濠集落跡もあります。
こうした資源は、いずれも「その場所でしか体験できない」性格を持っています。旅行消費単価を押し上げるには、こうした固有の魅力をいかに滞在に結びつけるかが鍵になります。
7. まとめにかえて
今回は、観光庁の調査から佐賀県の旅行消費を確認しました。
2025年の佐賀県における旅行消費額は約1124億円
旅行消費単価は約2万3000円
訪問者数は延べ486万9000人、最も大きな費目は宿泊費の約355億円
数字は、その地域の観光のかたちを教えてくれます。
8. 【執筆者コメント】通り過ぎられる側から見ると
「通過県」という言葉は、書き手としてよりも生活者として耳にする機会が多いように思います。私が住んでいる群馬県も、新幹線と高速道路がその先へ向かう人の経路上にあるという点では、佐賀県と少し似た立場にあるのかもしれません。
人が動いていること自体は間違いないのに、その動きが地域の数字になるかどうかは別の話です。道路が混んでいる日と、宿が埋まっている日は、必ずしも同じ日ではないように思います。
観光の話をするとき、つい訪れた人の数のほうに目が向きます。ただ、地域に残るお金という点では、何人来たかよりも、そのうち何人が一晩泊まったかのほうが効いてくるようです。本文にある宿泊と日帰りの差は、そこを端的に示しているように思います。
旅行の計画を立てるとき、行き先の県が自分にとって「経路」なのか「目的地」なのかを一度考えてみてください。目的地として組み直すと、同じ場所でも見えるものが変わってくるかもしれません。
参考資料
中沢 新
著者

株式会社モニクルリサーチ
編集者
1989年生まれ、群馬県出身・在住。くらしとお金の経済メディア「LIMO」にてニュース解説記事の編集・執筆に従事後、現在は厚生労働省管轄の年金・貯蓄・資産運用・住宅ローン・FX等の記事制作支援を担当。現在は群馬県内の中山間地域に暮らしながら、二地域居住・地方移住・地方での働き方をテーマとした記事では、地方で生活する当事者の視点をあわせて執筆・監修している。証券外務員一種、3級ファイナンシャル・プランニング技能士(FP3級)保有。
早稲田大学文化構想学部文芸・ジャーナリズム論系卒業。学部では戯曲・研究創作ゼミに所属し、主に英米の劇作家の作品を耽読。早稲田大学大学院政治学研究科ジャーナリズムコース中途退学。準修士(ジャーナリズム)。大学院では精神医療の現場にてアートセラピーの実践者を取材し、ルポの執筆を行う。
フリーランスライターとして活動した後、東京都世田谷区の訪問介護事業所の訪問介護職員、地域情報サイト編集記者、老人ホーム検索サイト編集者、おすすめ情報サービス編集者を経て、現職。訪問介護の実務経験と介護福祉士実務者研修の修了を通じて、地方における医療・介護アクセスの実情にも知見を持つ。介護職員初任者研修・介護福祉士実務者研修修了。
【主な執筆・監修テーマ】
年金・貯蓄・資産運用などの家計分野に加え、二地域居住と特定居住促進計画、テレワークの普及状況、鳥獣被害と農林業、地方の教育費負担など、地方で暮らすことに関わる公的統計の解説を継続的に担当。
【編集方針】
記事中の数値は原則として官公庁・公的機関が公表する一次資料にあたり、出典と公表時期を明記しています。制度や支援策は改正・年度更新があるため、適用可否は各自治体の窓口や公式情報での確認を推奨しています(2026年8月28日更新)。
