J2初年度の2025シーズンに昇格争いを演じたFC今治は、百年構想リーグで低迷。監督交代にも踏み切ったクラブが、再浮上への答えとして選んだのが「スペイン化」だった。スペイン人のアベル・モウレロを新監督に迎え、安部裕葵、そして“ピピ”こと中井卓大を相次いで獲得。バルセロナとレアル・マドリーのDNAを持つ2人が加わったことで、リーグでも異色の存在として注目を集めるようになった。もっとも、開幕から2連敗と結果はまだついてきていない。それでも、攻守で主体的にゲームを動かす新生・今治には、これまでとは異なる可能性が確かに芽生えている。モウレロ、安部、中井――3人を軸に始まった「スペイン化」は、今治をどこへ連れていくのか。
今治の「スペイン化」を象徴する3人
J2初陣の2025年でいきなり昇格争いを演じた今治は先の百年構想リーグで思わぬ低迷。クラブはそのハーフシーズンで監督交代に踏み切るも突破口は見出せずにいると、来るべく新シーズンでチームスタイルの方向転換を強いられた。そこで辿り着いた答えはチームの“スペイン化”へのシフトだった。
【トップチーム】
アベル・モウレロ・ロペス氏が2026/27シーズンのFC今治トップチームの監督に就任することとなりましたのでお知らせいたします。
モウレロ新監督コメント🗣️
FC今治の皆さん、こんにちは!… pic.twitter.com/2JUDTES1k9
— FC今治 (@FCimabari) June 11, 2026
指揮官として白羽の矢を立てたのはスペイン人のアベル・モウレロ。その招聘で新生・今治の方向性を明確にしてチームは始動すると、7月11日から始まったキャンプで大きな話題をさらう動きがあった。
19日、ルーキーイヤーから鹿島で存在感を示してスペインの地へ羽ばたき、バルセロナBでも活躍した安部裕葵を浦和から獲得のリリースが駆けめぐる。
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浦和レッズより安部 裕葵選手が完全移籍で加入することとなりました。
🗣️安部選手コメント
はじめまして。FC今治に加入することになりました、安部裕葵です。
目標であるJ1昇格に向けて、全力で頑張ります。
よろしくお願いします!… pic.twitter.com/6dh94Bm7NF
— FC今治 (@FCimabari) July 19, 2026
そして、その知らせの熱も冷めやらぬ3日後、かねてよりキャンプに参加していたスペイン育ちの“ピピ”こと中井卓大(登録名・中井卓大ピピ)獲得の報。チームのスペイン化へ極めつきの補強となった。
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CDレガネスより中井 卓大選手が完全移籍で加入することとなりましたのでお知らせいたします。
なお、背番号は80となります。
中井選手コメント🗣️
はじめまして。
このたびFC今治でプレーすることになりました、ピピです。
この1年、J1昇格に向けて全力を尽くします。… pic.twitter.com/yaLGPnLuNV
— FC今治 (@FCimabari) July 22, 2026
スペイン人指揮官のもと、バルサとレアルのDNAを持つ選手が同時期に加わったインパクトは言わずもがな大きな話題に。今治は成績低迷で影が薄くなりつつあった状況から一転、一躍リーグで大きく注目される存在となった。
太田康介GMが語る“大転換”への手応え
「監督がやりたいサッカーができる選手をどれだけ揃えられるか。特に最後に入った2人(安部と中井)はそれを体現できると思いますし、それ以外の4人の補強もそれを狙って取っています。百年構想リーグで奮わなかったところをガラッと変えるという意味では、監督が求めるモノに近づける補強ができたのではないかと感じています」
チームの大きな方向転換。そして、耳目を引きつける目玉補強に手応えを得ているのは太田康介ゼネラルマネージャー(GM)だ。
太田康介ゼネラルマネージャー(Photo: Takashi Matsumoto)
今治はかつてチームに所属したマルクス・ヴィニシウス(現・名古屋)という圧倒的な前線の個の力を生かすとともに、組織的なハードワークと組み合わせた縦に速いサッカーで躍進。J2昇格を経て、さらなる高みを目指したが、2025年限りでヴィニシウスがチームを去ると、百年構想リーグでは経験値のある駒井善成らを加えてポゼッション傾向を強めるも、これが思うように機能し切らず。結果的にその前年の幻影を追うようなリアクションサッカーへ寄り添う形に落ち着いたが、ハーフシーズンを通してチームはかつての怖さを取り戻せずに終わった経緯があった。
モウレロ監督の指揮官就任と時を同じくして、多くのサッカーファンを魅了したのは北中米W杯で優勝を遂げたスペイン代表のスペクタクルな伝統のパスサッカー。
太田GMは「あれ(スペイン代表)は極端すぎるというかスペシャルな部分があるので、そこをイメージされると少し苦しい部分はありますけど」とやや苦笑い。しかし、「攻守両面において主体的にプレーする中から相手を攻略するサッカーであることに変わりはないですし、百年構想リーグとは違ったチームの色を出していくことができると思います。やりたいことははっきりしているので、それを信じてみんなでやっていければ良いサッカーができる」と生まれ変わろうとするチームに期待を込めた。
アベル・モウレロ・ロペス監督(Photo: Takashi Matsumoto)
「集大成を出す時」モウレロ監督が秘めた情熱
タクトを振るのは、チームを音楽のバンドになぞらえて表現するのが好きなスペイン人。情熱的で陽気。声が大きく、おしゃべり好きなキャラクターはまんまステレオタイプのスペインの血。モウレロ監督のそのパーソナリティだけを見ても、現実的なサッカーを好むタイプではないことがすぐわかる。
その指導歴はスペインを中心に積み上げながら、2019年に徳島でリカルド・ロドリゲス監督の腹心としてJリーグ挑戦を試みたことを皮切りに、韓国、ギリシャ、中国など複数の国で戦術面を担当するコーチを歴任。そして、この今治でついに監督としてのデビューを飾る。
……
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Profile
松本 隆志
出版社勤務を経て2007年にフリーへ転身。2009年より愛媛FCを中心としたプロサッカークラブの取材活動を始める。サッカー専門紙エルゴラッソ、サッカーダイジェスト等へ寄稿。ライター業とともにフォトグラファーとしても活動する。
