連載コラム「ロームシアター京都 幕が上がる、その前に」ではロームシアター京都自主事業の中から、スタッフによるイチオシ作品をご紹介します。

 

ロームシアター京都では、9月25日(金)・26日(土)の2日間、リトアニアのアーティストによる現代オペラパフォーマンス『HAVE A GOOD DAY!』を上演します。

2019年、世界最高峰の国際美術展の一つ、ヴェネチア・ビエンナーレで『Sun & Sea(Marina)』が金獅子賞を受賞し、一躍、世界のアートシーンから注目を集めたリトアニアの女性アーティスト、ヴァイヴァ・グライニテ(台本)、リナ・ラペリテ(作曲・音楽監督)、ルギーレ・バルズジュカイテ(演出・美術)。

本作『HAVE A GOOD DAY!』は、彼女たちによるオペラ作品です。これまで世界各国で上演され、3人のコラボレーションの原点ともいえる本作が、ついに待望の日本初演を迎えます。

左からルギーレ・バルズジュカイテ、ヴァイヴァ・グライニテ、リナ・ラペリテ

彼女たちのオペラは、一見すると日常と地続きの、ごく身近な設定から始まります。『Sun & Sea(Marina)』は、ビーチで海水浴を楽しむ人々の歌声を通して「環境破壊」や「気候変動」について問いかけるものでしたが、今回の『HAVE A GOOD DAY!』の舞台となるのは、現代の消費社会を象徴するスーパーマーケットです。

タイトルの『HAVE A GOOD DAY!(=良い一日を!)』は、買い物を終えたお客さんに店員が言う「ありがとうございました!」「またお越しください!」という言葉に相当するフレーズ。このオペラでは、こうした機械的な言葉や作り笑いを繰り返す、10人の店員たちの内面にフォーカスします。

「10人のレジ係、スーパーマーケットの音、ピアノのためのオペラ」というその副題のとおり、舞台美術はとてもシンプルなものです。舞台上には商品そのものは登場せず、スキャンされるたびに鳴り響く「ピッ」という単調なブザー音が、観客の想像力を掻き立てます。

作品で描かれるのは、不慣れな世界へ足を踏み入れる不安を表現する不器用な「新人」、家族や親戚たちと離れて異国で働く「移民の母」、日々の生活に追われる「シングルマザー」といった店員たち。警備員のピアノが静かに引き立てる店員たちの声は、淡々としていながらも切実なものです。それは現代を生きる私たちの縮図といえるかもしれません。

スーパーマーケットに代表される消費社会に埋もれがちな人間一人一人の豊かさを、静かに浮かび上がらせる本作。個々の店員の呟きはやがて合唱として昇華され、皮肉とユーモア、そして詩的な美しさをもって観客を包み込みます。

Photo by Simonas Svitra

リトアニアの巨匠ジョナス・メカス(映像作家・詩人)は、次のような言葉で本作を激賞しています。アートファン・オペラファンに限らず、はじめて劇場に足を運ぶ方々にも体験していただきたい作品です。この機会をぜひお見逃しなく。

 

❝「まるで小さい傑作のようだ。削ることも、加えることも不要。すごく堅実、すごくシンプル、すごくリアルだ。」


It’s like a mini masterpiece. It’s just nothing to take away, nothing to add – it’s very solid, very simple and very real.


―――ジョナス・メカス (Jonas Mekas)

 

執筆:後藤孝典(ロームシアター京都)

 

 

リトアニア 現代オペラパフォーマンス『HAVE A GOOD DAY! 』

日時:9月25日(金)午後7時開演

   9月26日(土)午後2時開演

※9月25日(金)終演後に、ヴァイヴァ・グライニテ、ルギーレ・バルズジュカイテ出演 のアフタートークあり(聞き手:小崎哲哉)

会場:ロームシアター京都 サウスホール

料金:一般 6000円ほか

公演の詳細はロームシアター京都公式ホームページにてご確認下さい。

 

問い合わせ|ロームシアター京都 TEL=075-771-6051

 

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