オーストラリアならではの動物たちと触れ合える

 ケアンズと聞いて、まず思い浮かぶのはグレートバリアリーフのエメラルドグリーンの海だ。真っ青な空と美しい海。まさにケアンズを象徴するような景色だろう。

 けれど、ケアンズの旅は海だけじゃない。ケアンズシティは山に囲まれた街。その山の向こうにはアサートン高原と呼ばれる内陸のエリアが広がっている。

 今回は、ケアンズの数あるオプショナルツアーのなかでも特に話題のTrue Blue Toursの「アサートン高原ツアー」に参加した。同社のツアーのなかでも定番ツアーで、日本語ガイドが付くので、言葉が分からなくてもまったく問題ない。ケアンズ市内ホテルからの送迎、バリーン湖でのスコーン、チーズやナッツの試食、昼食、ワインの試飲、ロックワラビーの餌付け体験などが含まれている。

 案内してくれるのは、オージーガイドのシェーンさん。なんと茨城県に住んでいたこともあり、日本語がペラペラ。移動中の車内でもケアンズやアサートン高原の自然、動物、食べ物の話など、豊富な話題で参加者を飽きさせない。立ち寄り先をただ順番に見て回るというよりは、シェーンさんのお気に入りスポットを案内してもらうような、お友達感覚のツアーだ。

ケアンズシティのホテルでピックアップ。True Blue Toursの日本語ガイド、シェーンさんの案内でアサートン高原へ向かう

 朝、ケアンズシティのホテルでピックアップしてもらい、クルマはブルース・ハイウェイを南へ。市街地を離れると、車窓には郊外の住宅地や畑が見えてくる。やがてゴードンベールの街を通過する。

 ゴードンベールを過ぎると、ルートは州道52号線へ。ここから山道に入り、峠を越えて高原方面へ向かう。海沿いのケアンズシティとは空気が少しずつ変わり、窓の外は緑が濃くなっていく。朝の移動時間から、すでに“海のケアンズ”とは違う景色が車窓を流れる。

 峠を越えて、最初に立ち寄ったのはバリーン湖の湖畔にあるLake Barrine Teahouse。湖のほとりに立つクラシックな雰囲気のティーハウスだ。

最初に立ち寄ったバリーン湖の湖畔。なんとも趣のある船が係留されているLake Barrine Teahouseの入口。木造の建物と大きな木の輪切りが目印Lake Barrine Teahouseのテラス席。湖を眺めながら朝のコーヒーを楽しむご婦人

 ここでまず味わいたいのが、名物の自家製スコーン。コーヒーと一緒に頼めば、朝の移動のちょっとしたひと休みにちょうどいい。スコーンはサクッと軽い口当たりで、クリームとジャムは甘過ぎず、ホットコーヒーと抜群の相性だ。ケアンズの海沿いのカフェで飲むコーヒーとはまた違った趣だ。

Lake Barrine Teahouse名物のスコーン湖畔をのぞむテラス席で楽しむスコーンとコーヒーは格別だ

 ティーハウスの周辺は、湖畔の風景も美しい。水面は穏やかで、まわりを緑に囲まれている。湖と森のコントラストは、海辺のケアンズにはない景色だ。

バリーン湖の穏やかな水面。周囲約4.5km、湧き水や川から流れ込む湖ではなく、長い年月、雨水だけで満たされたクレーター湖緑豊かな熱帯雨林に囲まれていて、約5kmの散策道が整備されている湖を眺めながら落ち着いた静かな空間で朝の時間が流れるLake Barrine Teahouseの店内。営業は15時まで

 建物のなかも湖畔のティーハウスらしい落ち着いた雰囲気。朝食やランチも提供しており、店内には湖の歴史を感じさせる展示も見られる。

Lake Barrine Teahouseの裏庭にでると建物と湖を一望できる

 ティーハウスで休んだあとは、湖畔を少し散策した。バリーン湖は火山活動によってできたクレーター湖で、周囲には熱帯雨林の豊かな緑が広がっている。散策路には樹齢約1000年とも言われるKauri Pinesと呼ばれる巨大な2本のカウリの巨木が立つ。シェーンさんの案内で散策路に入り、水宇野成り立ちや周辺の自然についての説明を受けた。景色を眺めるだけでなく、その場所がどういう成り立ちの場所なのかを知るのも旅のおもしろさだ。

Twin Kaurisへの案内

 散策路の入口から森のなかに進むと、並んで立つ巨大なカウリの巨木、Twin Kaurisが現われる。まっすぐに伸びる幹はとてつもなく太く、高さは約50mほど。人が横に立つと、その大きさがよく分かる。湖畔の静かな森のなかで、アサートン高原の自然の力を見せつけられた。

巨大なTwin Kaurisの前にかかげられたバリーン湖の案内板を前に、流暢な日本語で説明をしてくれるシェーンさん森のなかにそびえるTwin Kauris。写真だとなかなか伝わりにくいが、シェーンさんがその前に立つと幹の太さがよく分かる

 バリーン湖をあとにして、クルマはさらに高原のなかを進む。途中、ユンガブッラの街を通過する。通り沿いには古い建物が残るオーストラリアの小さな田舎町といった風情がケアンズシティとはまったく違う表情をみせてくれる。そして、街をぬけて向かったのは、カーテンフィグツリーだ。名前のとおり、カーテンのように根を垂らした巨大な無花果(イチジク)の木だ。駐車場から木道を少し歩くと、突如として現われる姿は異様にも感じる。

道路から少し入ったところ。木道を数十歩あるいた所に突如として現われるカーテンフィグツリーカーテンフィグツリーの成り立ちを説明するシェーンさん。もちろん日本語で。しかも合間にジョークまで入れてくるから油断できない

 カーテンフィグツリーは、森のなかでほかの木を足場にしながら大きく育ったイチジクの仲間だ。上から伸びた細い根が、長い時間をかけて地面に届き、やがて太い根の束になっていく。その根が横に広がった姿が、まるでカーテンのように見えることから、この名前がついている。写真で見ても大きいが、実際に目の前に立つとその迫力には圧倒される。森のなかに植物でできた巨大な壁がたっているようにも見える。自然が作り出した造形なのに、どこか建築物のようでもある。

見上げるほどの高さがあるカーテンフィグツリー。垂れ下がっているのは木の根その生い立ちが詳しく説明されている。シェーンさんの説明を聞くとさらに分かりやすい

 大自然の造形を見たあとは、アサートン高原らしい“食”の時間へ。時間はちょうどお昼前。そろそろお腹も減ってきた頃合いだ。そこで向かったのはGallo Dairyland。ここはチーズやチョコレート工房、カフェ、ショップが併設された高原ドライブにはもってこいの休憩スポットだ。周辺は酪農も盛んなエリアで、建物のまわりには高原の牧場らしいのんびりした空気が流れている。

Gallo Dairylandのチーズやチョコ。購入したチーズは保冷バッグにいれて持ち帰りも可能で、開封さえしなければ日本へも持って帰ることができる。その際、ホテルの冷蔵庫へ帰国日まで保管し、帰国日に保冷バッグへ再度入れて持ち帰るGallo Dairylandの入口看板と建物。撮影中もぞくぞくとクルマが入ってきた

 ショーケースには、いろいろな種類のチーズが並んでいる。チェダー系、ハーブを使ったもの、少しクセのあるタイプなどを少しずつ試食していくと、香りや塩味、口溶けの違いがよく分かる。気に入ったものをショップで購入が可能で、未開封の状態であれば日本に持ち帰ることも可能だ。

 ここはレストランも併設されているので、今日のランチはここでいただいた。朝食はバリーン湖で軽めのスコーンを食べているので、お昼はしっかり腹ごしらえする。筆者が選んだのはハンバーガーとフライドポテトの一品。なぜか今回の旅はハンバーガーの接種率が高いのは気のせいだ。

どこか北海道の富良野や美瑛を思い起こさせるような景色。ちょうど6月のこの気候もにていると感じたが、まぎれもなくここは南半球オーストラリアだ実は筆者、海外に出るとその国のマク○ナルドに行くのが常。ハンバーガーは主食にしたいくらい好物なもので……

 ランチのあとはアサートンの街を抜けてトルガ方面へ。トルガで立ち寄ったのは、地元のローカルショップ「The Humpy」。店頭には野菜や果物が並び、店内にはナッツ、ドライフルーツ、ジャム、ソース、菓子類などがぎっしり。旅行者向けというより、地元の産品を集めた商店。日本でいうなら「道の駅」といったところだ。

トルガのローカルショップ「The Humpy」。充実した地元の産品が並ぶ。ただし生ものは日本には持ち帰ることができないので、購入した場合は帰国までに消費しよう店内に並ぶ野菜や加工品、地元の生活感も感じられる商店という趣

 トルガは、アサートン高原の行業を象徴する小さな町で、特にピーナッツ産業と結びついてきた古い町だ。現在でも周辺はピーナッツ栽培が盛んで、周辺ではマカダミアなども栽培されている。ここThe Humpyでもいろいろな種類のナッツが売られている。素朴な味のもの、甘いもの、スパイスを効かせたものなど、少しずつ試食しながら気に入ったものを選べるので、お土産探しにも向いている。

ナッツや果物だけでなく、ハチミツやジャムなど、地元産の素材を使った商品も多く、お土産物を選びも楽しい。ただし商品によっては日本国内に持ち込めない商品もある。迷った場合はシェーンさんに相談するとアドバイスしてくれる店先に並ぶ野菜や果物、ココナッツやパイナップルのような南国らしい商品も。オレンジ、カボチャ、アボカドなど色とりどりに並ぶ様は、地元の商店といったたたずまい。見ているだけでも楽しい

 高原の食を楽しんだあとは、このツアーのなかでも特に人気の野生のロックワラビーの餌付け体験だ。The Humpyからクルマで30分ほど。トルガの中心部を抜けて向かったのはグラニット・ゴージ自然公園。花崗岩の岩場と、そこに暮らすロックワラビーで知られる自然公園だ。公園の入口から少し歩いた場所の岩場に向かうと、すぐにロックワラビーたちが姿を見せた。花崗岩の岩場を住処にする小型のワラビーで、大きなカンガルーとはまた違うかわいらしさがある。岩の上に座っていたり、岩場の影からこっそりと様子見していたりとさまざま。

花崗岩の岩場に暮らす小型のワラビー岩の上に座ってこちらを警戒するロックワラビー。人慣れしてはいるが、野生動物らしい距離感も残っているお腹いっぱいなのか、餌を見せても見向きもしない。なんともマイペース

 お腹がへっていなかったのか、餌を見せてもなかなか近寄ってこない。辛抱強く動かずに餌を手に差し出して待っていると、警戒しながら近寄ってくる。そのうち、警戒心が解けると前脚を手に乗せて器用に餌を食べてくれた。べったりと触れあうというよりは、相手のペースに合わせて少し距離感を保ちながら楽しむ感じがいい。

最初はなかなか警戒して一定以上の距離から近づいてこないやっと手のひらの餌を食べた! 物音でまた警戒するも……手を乗せて一心不乱に餌を頬張る。なんともかわいい!最初は数頭だったが、続々と岩陰から現われた。ロックワラビーも有袋類なので、運がよければ赤ちゃんワラビーが顔を出している姿も見られるかも?慣れると距離感がどんどん縮まってくる。

 ちなみにこの公園、思いのほか岩場が多い。滑りやすい場所もあるので、歩きやすい靴で行く方がよい。ここは動物園ではなく、岩場の自然のなかに動物がいる場所。ロックワラビーたちは人になれているが、追いかけたり触り過ぎたりせずに、相手の動きに合わせて観察したい。

ロックワラビーだけでなく、さまざまな野鳥の姿も見ることができる。これは独特の鳴き声のワライカワセミ

 園内では爬虫類との触れあいもできる。シェーンさんがおもむろにゲージからトカゲを見せてくれた。実際に抱くこともできるが、筆者は丁重に遠慮させていただいた。これもオーストラリアの生き物との出会いだ。そういえば、筆者が幼少期、エリマキトカゲがブームになったことを思い出した。そんな話をシェーンさんにすると、エリマキトカゲもオーストラリア北部に住む固有生物で、気温が30℃を超えると、このアサートン高原ツアーで見ることができる可能性があるそうだ。

わりと躊躇なく触る同行者。少しヒンヤリとした触り心地“らしい”筆者に触らせようと脅すシェーンさん。「こんなにかわいいのに!」と。うーん……グラニット・ゴージ自然公園からの眺め。岩場と乾いた森が広がり、午前中の湖や熱帯雨林とは異なる風景だ

 グラニット・ゴージ自然公園の風景は、バリーン湖やカーテンフィグツリーともまったく違う。乾いた森と岩場が広がり、少々荒々しい雰囲気も漂う。1日のツアーのなかで、湖、熱帯雨林、牧場、岩場と景色が次々に切り替わっていくのがアサートン高原ツアーの特徴だ。

 動物たちと別れたあとは、マリーバの町へ。マリーバはコーヒー栽培でも知られるエリアで、「Coffee Works」はその名のとおり、コーヒーとチョコレートの店だ。オーストラリアはカフェ文化が根付いた国で、ケアンズシティでも朝から多くの人がコーヒーを手にしている。高原側へ来ると、そのコーヒーを産地に近い場所で味わえるのがおもしろい。

マリーバの町のメインストリートから少し入ったところ。Coffee Works Mareebaの入口店内に入ると豆の量り売りカウンター。カフェはこの裏にあるCoffee Worksの店内。コーヒーやチョコレート、ギフトが並ぶ。コーヒーにまつわる小物もたくさん

 店内にはコーヒー豆やチョコレート、ギフト類が並び、少し休憩しながら買い物もできる。湖畔で始まった朝のコーヒーが、高原のコーヒー店につながっていくのも、この高原ツアーの流れとしておもしろい。

 アサートン高原ツアーの最後を締めくくるのは、de Brueys Boutique Winesでの試飲だ。マリーバ近郊にあるブティックワイナリーで、トロピカルフルーツを使ったワインやリキュールを扱っている。

こぢんまりとした佇まいのde Brueys Boutique Winesいろいろな種類の果実酒。調子にのって酔っ払いそうに……ここでもシェーンさんがそれぞれの種類について説明をしてくれる。終日通して、流暢な日本語にはよどみがなかった。さすがの一言!

 試飲では、甘口のもの、酸味のあるもの、食後酒のように楽しめそうなものなど10種ほど試すことができた。ワインという言葉から想像するものとは違う、ケアンズ周辺の熱帯らしい果実の味をツアーの締めくくりで楽しんだ。もちろん気に入ったものがあれば購入することも可能で、割れないようにしっかりと梱包してくれるのもうれしい気遣いだ。

 朝、ケアンズシティを出発したときには、まだ海の街の感覚が残っていたけれど、1日掛けて巡ってみると、景色はどんどん変わっていく。クレーター湖のティーハウスに始まり、森の巨木、高原のチーズ、トルガのナッツ。花崗岩の岩場に暮らすワラビーにマリーバのコーヒー、そして締めのトロピカルフルーツワイン。

 グレートバリアリーフの海とは別のケアンズが、内陸部には広がっている。しかも、日帰りで巡れるのがおもしろい。アサートン高原を初めて訪れるなら、日本語ガイドと一緒に回れる安心感も大きい。移動中にその土地の話を聞きながら点在するスポットを効率よく巡る。海だけでは終わらないケアンズを見たいなら、アサートン高原の1日ツアーはかなり満足度が高い。

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