山地における侵食と土砂移動現象の基本的性質を理解し、山地保全や土砂災害軽減のための治山・砂防計画技術の現状と課題を理解することを目的としています。

授業内容

※広報課の職員が実際に受講しました。

授業に先立ち、担当の木村先生から資料をいただいて予習をしていましたが、その中でミカン農業や稲作に欠かせない棚田が、実は地すべりと深い関わりを持っていることを知りました。地すべりは恐ろしい自然災害というイメージがありましたが、その一方で地域の暮らしや農業の発展とも関係しているという意外な事実に興味を引かれながら、授業に臨みました。

授業の前半は、Moodle上で出されていた宿題の答え合わせの時間でした。挙手した学生が黒板に解答を書き、木村先生がその内容をもとに要点を整理しながら解説を加えていきます。学生たちは手元の資料やノートを見返しながら理解を深めていました。

中盤では、前回の授業で学んだ地すべりに関する公式をさらに発展させ、実際の地盤条件にも適用できるような、より実践的な計算方法について学びました。どの程度の力が加わると地すべりが発生するのかを数式によって求める「安全率」という考え方が示され、安全率が「1」を超えていれば斜面は安定し、「1」を下回ると地すべりが発生する可能性が高くなることを知りました。正直なところ、予習の段階では公式の意味がさっぱり理解できませんでしたが、授業を受けたことで「安全率が1以上あれば安全である」という公式への理解が少し深まりました。公式の説明の中には三平方の定理も登場し、中学・高校までに学んだ数学が実際の防災やインフラ整備に活用されていることに驚きました。

授業の後半では、土壌が水を含むことによってどのように動くのかを映像で学びました。地中に浸透した水の力によって土壌が円弧を描くように滑り落ちる現象が地すべりの主要な原因の一つであることが示され、実際の動きを映像で見ることで理解が深まりました。静止した図や数式だけでは分かりにくい現象も、映像を通して見ることで非常に分かりやすく感じました。

授業中、木村先生は学生たちの理解度を確認しながら丁寧に解説を進めていました。専門的な内容を扱う授業ではありますが、教室全体の雰囲気はとても穏やかで、木村先生の丁寧で親しみやすい話し方もあり、学生たちは安心して熱心に授業に取り組んでいるように感じられました。

今回の授業で最も印象に残ったのは、地すべりに対する見方が変わったことです。地すべりは恐ろしい自然災害である一方で、過去に地すべりによって形成された地形が、地下水の豊富な水はけの良い棚田として利用され、人々の暮らしや農業を支えてきた側面もあることを知りました。この授業は、地域の暮らしや農業、そして防災という大きなテーマにつながっていることを実感できる大変興味深い授業でした。

教員からのコメント

大雨が降ると、河川の氾濫による水害だけでなく土砂災害が起きることがあります。これは山地の地盤をつくっている土砂が雨水によってゆるみ、斜面の上や河川の中を動き出すためです。普段は地面の下でじっとして森林などの生態系を育んだり建物や道路といった私たちの生活基盤を支えている土砂ですが、ひとたび動き出すと、森林を破壊したり私たちの生命や財産を脅かすやっかいな存在になってしまいます。

こうした土砂の移動を研究して山地や森林を保全し土砂災害などの被害を軽減しようとする学問が「治山・砂防学」です。山地の中では、雨水によって土壌が削られたり、地盤の一部が崩れ落ちたり、あるいは斜面が変形するようにゆっくりと地盤が滑り落ちたりといったように、さまざまな現象が起きており、土砂の移動のしかたは実に多様です。その多様さの背後には、土砂の移動を引き起こす複雑なしくみが隠されているはずです。「治山・砂防学」の分野では、山地における多様な土砂の移動に注目して発生の原因や移動する土砂のふるまいなどを研究しています。

土砂の移動のしくみを理解するためには、土砂を構成している岩石や土の強度などの性質のほか、土砂の性質に変化をもたらす水の流れ、土砂の移動に影響する地形の特徴といった幅広い知識が必要です。「治山・砂防学」の授業では、地質学や地形学の視点から土砂の移動がどのような場所で起きるのかを学びます。また、地表や地下での水の流れを水文学の視点でとらえることによって土砂の移動がどういった時に起きるのかを学びます。さらに、砂防ダムなどの土砂災害対策技術についても学びます。 本授業は森林資源学コースの専門科目でありながら、森林や樹木ではなく、それらの生育基盤となっている地面の下の土砂に注目するところが特徴です。しかし、土砂の移動のしくみを知れば、森林が土砂の移動というダイナミックな環境変化に適応しながら成立していることや樹木の成長と土砂の移動が互いに影響し合う関係にあることへの新たな気づきがあるはずです。生物環境に興味がある人にこそ、ぜひ受講してもらいたいと思います。

受講学生のコメント

農学部生物環境学科森林資源学コース 3年生 長野 ゆらさん

土砂災害を予測し、被害を軽減するためには、土砂移動現象を正しく理解することが重要です。この講義では、そのために必要な知識として、侵食や土砂移動現象の基本的な性質や発生メカニズム、土砂移動現象に関わるさまざまな要因について学びます。

土砂災害が起こると、私たちの命や暮らしに大きな被害をもたらすことがあります。治山・砂防学で侵食や土砂移動現象の仕組み、その要因について学ぶことで、土砂災害から私たちの命や暮らしを守ることにつながる知識を身につけることができます。

自然災害や山地保全に興味のある方は、ぜひ受講してみてください。

長野さんら受講学生と木村先生

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