中国人の中には、しばしばシステムの抜け穴を探すのがうまい人がいる。中国を長くウォッチしていると、続々と新手の詐欺ニュースが飛び込んでくる。最終的には他人の銀行口座から金を盗み出す詐欺が少なくないが、そこに強力なシステムが登場した。

 国際金融メディア「The Asian Banker」が発表した「2026年度金融技術革新賞」において、騰訊云(テンセントクラウド)と光大銀行が共同開発した「インテリジェント反詐欺システム」が、「最優秀リスクデータ・分析技術プロジェクト(Best Risk Data & Analytics Project in Asia Pacific)」を受賞した。

 同システムの核心は、多ソースのデータ融合、モデルの多層化、運用の自動反復という3段構えの仕組みにある。データによって状況を早期に把握し、AIによって不正を見抜き、現場での運用を通じて対策を絶えず更新する、という流れである。金融不正対策そのものは目新しいものではないが、これらを一体化した上で大規模運用に乗せている点が高く評価された。

 一言で表すならば、「ルールで止める」対策から、「AIが学習を重ねながら、個人と組織による詐欺をリアルタイムであぶり出し、対策までも回し続ける」仕組みへと進化を遂げたと言える。

 このシステムを紹介しよう。本システムは、銀行内部で発生する不審な動きを早期に検知するための監視体制であると位置付けられる。従来型の防犯が「怪しい人物を発見する」段階にとどまっていたのに対し、本システムは個人・グループ・資金の流れまでも横断的に捕捉する点が特徴である。加えて、構築して終わりではなく、運用しながら継続的に改善していく設計となっている。その実現のためにデータ層、モデル層、運用(運営)層の3層からなる高度なアーキテクチャーを構築している。

 まずデータ層は、いわば材料収集にあたる部分である。銀行内部のデータのみならず、外部データも統合することで、一人の顧客に関する情報をより広範に把握する仕組みが構築されている。具体的には、行内の申し込み情報や取引履歴に加え、中国人民銀行の信用情報や第三者機関の補助的リスク情報などが統合される。銀行のコアシステムや融資システムに加え、中国人民銀行の信用情報や外部の第三者データなど、多様なデータを統合しているのだ。

 従来の銀行システムでは、顧客データは夜間バッチ処理で更新する方式が一般的であり、日中に不正な動きがあっても本来は翌日まで検知が遅れるという課題があった。これに対し本システムは、行内外のデータを連携させることで、顧客のリスク状況を秒単位でリアルタイムに更新することを可能にしている。

 次にモデル戦略層は、いわば頭脳に当たる部分であり、収集したデータをAIおよびルールに基づいて分析し、不正の可能性を判定する役割を担う。個人の分析にとどまらず、複数人のつながりまで捕捉する点がポイントだ。つまり、単独の人物が怪しいのか、あるいは組織的なのかを併せて判断する仕組みとなっている。

 システムは、表面上は無関係に見える複数の人物が、実は同一の詐欺集団として活動している可能性を見抜くことができる。個人と組織それぞれに対応し、端末のOS、ブラウザー、画面、設定、通信の癖などを組み合わせて、同じ人や同じ機械かを見分ける「デバイスフィンガープリント」と、入力の速さ、クリックの癖、ログイン時間、移動の仕方など、ユーザーの振る舞いの「行動パターン」、それに口座同士、端末同士、IP同士、申請同士のつながりの「関係性グラフ」を活用し、Gradient Boosting Decision Tree(GBDT:勾配ブースティング決定木)とディープラーニングを組み合わせたハイブリッドモデルを採用している。申込時の不正から取引時の不正まで多様なシナリオに対応しており、現在では数百に及ぶリスク指標とモデルが稼働している。

 最後に運営層は、実際の現場対応に当たる部分である。不正が検知された後、警告の発出、追加確認の実施、必要に応じた取引の停止などが行われる。重要な点は、この工程が一度限りで終わらないことである。処理結果を学習やルール改善へと再度フィードバックすることで、次回以降はより早く、より正確な検知が可能になる。すなわち、「検知→阻止→学習→強化」という循環構造が形成されている。

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