同盟国は今や、ウクライナを自国の将来の安全保障に貢献する重要なパートナーとして位置づけている。Serhii Mykhalchuk/Global Images Ukraine via Getty Imagesウクライナは、ロシアによる全面侵攻が始まった当初、得られる軍事支援は何でも受け入れていた。ウクライナが支援された装備の中には、数十年前に製造され、倉庫から引き出された旧式のものもあった。現在では、友好国がウクライナの技術や戦場での経験を学んでいる。
ウクライナは、欧米の友好国が提供できる軍事支援をほぼ何でも受け入れる立場から、友好国が新たな戦い方に備えるために支援する立場へと変わっている。
ロシアによる全面侵攻が始まった当初、ウクライナは最先端の兵器ではなく、友好国から供与された旧式の装備を使いながら、生き残りをかけて戦っていた。しかし現在、ウクライナは独自の兵器や生産方法、戦術を開発し、欧米諸国の軍は、将来再び大規模な戦争が起きる可能性に備えるためにウクライナからそれらを学んでいるという。

NATO、調達方針を転換か…ウクライナから学び「ドローンの大量備蓄は無意味」「防衛企業との戦略的協力が必須」と高官らが明言 | Business Insider Japan
ウクライナ国家安全保障・国防会議のダヴィド・アロイアン(Davyd Aloian)副書記は、2022年にロシアの侵攻が始まった当時、ウクライナは「とにかく何でもいいから支援を求めていた」とBusiness Insiderに語っている。
アロイアン副書記によると、ウクライナの方針は、2023年から変わり始めたという。「一層賢く、戦略的に行動する必要があり、自国の防衛産業に非常に積極的に取り組み始めている」。ウクライナは、兵器を他国からの供与に頼るだけでなく、自国で開発・生産する体制を強化していった。当初は砲兵装備や装甲兵員輸送車など従来型の兵器に重点を置いていたが、その後、無人艇や攻撃用ドローンなどのドローン戦で使う新たな技術の開発にも力を入れるようになった。
2024年、ウクライナは人口や軍の規模で不利な立場にあることを補うため、ドローンやその他のシステムの開発を大幅に加速させた。ウクライナの国内企業は、それまでとは比べものにならない規模でドローンや関連部品を生産するようになった。ウクライナ軍によるドローンの使用も急増し、友好国の軍がこれまで経験したことのないほど大規模な運用が行われるようになった。
2025年になると、ウクライナは物資の輸送や負傷者の搬送など、戦場で危険を伴う任務に使う地上ロボットの量産を始めた。ドローンの生産もさらに拡大した。アロイアンは、2025年について、「こうした防衛技術を大規模に展開した年だった」と話している。
ウクライナの友好国は、ウクライナの戦場技術だけでなく、それを短期間で開発・生産する仕組みについても学ぼうとしている。Viktor Fridshon/Global Images Ukraine via Getty Images
そして現在、2026年は、「AIなどを活用した、より高度なソフトウェアの導入」に重点を移しているとアロイアンは語っている。
アロイアンは、2026年について「ウクライナは、かつては何でもいいから支援を求める国だったが、今では自らが学んだ教訓を友好国に伝え、共通の防衛に貢献できる準備が整った国へと変わった。そのことを、私たち自身と友好国に改めて示した年になった」と語った。
ウクライナは指導者へと変貌を遂げた
2022年、ウクライナは友好国がすでに退役させた兵器や倉庫で保管していた兵器まで軍事支援として受け取り、その中には、使用するために修理や整備が必要なものもあった。供与された兵器には、ドイツが2010年に退役させた1960年代開発の自走対空砲ゲパルト(Gepard)や、2003年以来飛行していない北マケドニアが保有していた旧ソ連のSu-25などが含まれていた。
その後、ウクライナの友好国は、ウクライナが以前から求めていた最新鋭の戦車やF-16戦闘機などの欧米製兵器を徐々に供与するようになった。ただし、供与が決まるまでには、戦争がさらに激化する可能性や、ウクライナ側の受け入れ態勢、友好国側の兵器在庫の不足などに関して、長い議論が続くことが多かった。
供与を待っている余裕のなかったウクライナは、自国の防衛産業に多額の資金を投じ、戦場で使う新たな技術を開発するとともに、現代戦の新たな要求に合わせて生産体制や戦術を急速に変化させていった。欧米の当局者は、ウクライナが兵器の開発や生産体制、戦術を次々と変えていく速さに、自国の軍や防衛機関は追いつけていないと語っている。
急速に変化する戦場への理解を深めようとする欧米諸国の軍にとって、ロシアとの戦争を通じて厳しい経験を積み重ねてきたウクライナは、ますます重要なパートナーとなっている。ウクライナが置かれている状況は特殊であり、ロシアとの国家存亡をかけた戦争で得られた教訓がすべてのNATO加盟国の軍やあらゆる紛争にそのまま通用するわけではない。それでもNATOは、ウクライナから学び、自らの能力を高める機会を見逃してはいない。
だがウクライナは現在も旧式の装備を受け入れている。ロシアとの戦争では兵器が非常に速いペースで消耗するため、性能の高さと同じくらい、十分な数量を確保することが重要になるのだ。旧式の装備でも、現在の脅威に合わせて改良すれば、引き続き有効に使える場合があるという。
例えばウクライナ軍は、アメリカが20年以上前に退役させた防空システム「MIM-23ホーク(MIM-23 HAWK)」を使い、ロシアの攻撃用ドローンやミサイルを撃墜している。また、ある部隊では2026年7月、70年以上前に開発されたスウェーデン製の対空砲、ボフォースL70口径40㎜機関砲(Bofors L70)を使って、ロシアの新型ミサイル2発を撃墜したと発表した。
MIM-23ホークのような旧式の欧米製兵器も、ウクライナにとって大きな戦力となっている。Nina Liashonok/Ukrinform/NurPhoto via Getty Images
一方、ウクライナは地上ロボットや、飛来する敵のドローンを撃墜する迎撃ドローンなどのシステムも急速に開発している。友好国は、ウクライナが開発した技術の一部を導入するとともに、自国の防衛産業にウクライナの開発・生産方法を学ばせたいと考えている。
2025年、北大西洋条約機構(NATO)のマルク・ルッテ(Mark Rutte)事務総長はウクライナについて、「軍事技術の革新と対ドローン技術の分野で非常に強い国である」と述べ、ウクライナが友好国と専門知識を共有する姿勢は「非常に重要だ」と語っている。
当時NATO加盟国ラトビアの首相だったエビカ・シリニャ(Evika Siliņa)は、「ウクライナの友人や同盟国と緊密に協力を続けているのは、ウクライナが戦場で培った優れた知識や経験を学び、それをラトビアの陸上・海上防衛に直接生かすためである」と語った。
