2026年7月28日16時27分頃、熊本県熊本地方を震源とする地震が発生した。震源の深さは約10キロ、マグニチュードは7.1と推定され、熊本県宇城(うき)市と氷川町(ひかわちょう)で震度7を観測した。気象庁は、これを「令和8年熊本地震」と命名した(1)。

国土交通省は7月28日、熊本県内17市町村で約14万戸が断水したと発表した。八代(やつしろ)市では全域の約6万戸が断水(2)。そこに猛暑が重なった。

熊本県で震度7の地震   Cars sit crushed beneath debris from a collapsed building after an earthquake with a magnitude of 7.1 struck Japan's southern Kumamoto prefecture, in Yatsushiro City, Japan, July 29, 2026. REUTERS/Issei Kato (Japan)熊本県で震度7の地震   Cars sit crushed beneath debris from a collapsed building after an earthquake with a magnitude of 7.1 struck Japan’s southern Kumamoto prefecture, in Yatsushiro City, Japan, July 29, 2026. REUTERS/Issei Kato (Japan)(写真:ロイター/アフロ)

筆者はSNS「Threads(スレッズ)」に、ペットボトル入りの水は、賞味期限が過ぎても飲める場合が多い、という内容を投稿した。5,471件の「いいね」がつき、645件再投稿された(2026年7月30日午前10時現在)。

反響はありがたかった。が、これまで何度も著書や記事を通して伝えてきてもなお、これほど多くの人が知らなかったことに意気消沈し、どうすれば伝わるのだろうかと考えた。

ペットボトル水の期限は内容量が担保できる期限

投稿した内容は、次のような趣旨だ。

「熊本地震、無事を祈っています。日本で製造されたペットボトル水は、ろ過・殺菌されており、期限が過ぎても中を確認の上、飲める場合が多いです。ガラス瓶と違い、ペットボトル容器は、長く置いておくと中の水が蒸発していきます。内容量が減ったものを販売すると計量法違反になります。そのため、この期限までは中の容量が誤差範囲を超えずに入っています、という期限が書かれています。飲めなくなる期限ではありません。貴重な水が活かされますように。」

筆者は2008年から食品ロス削減の啓発にかかわり、これまで13冊の著書を書いてきた。Yahoo!ニュースでも講演でも、全国紙サイトの連載でもニュースレターでも、ペットボトル水の賞味期限は「飲めなくなる期限」ではないことを繰り返し伝えてきた(3)(4)。2016年の熊本地震のときにも書いた。

それでも、やっぱり、伝わりきれない。

断水14万戸、猛暑が重なる

国土交通省による2026年7月29日午前6時時点のまとめでは、宇城市で約1万4,000戸、八代市で約1万8,000戸、宇土(うと)市で約1万戸が断水している(5)。熊本市では南区の一部で断水、北区・西区・中央区の一部では水道水に濁りが発生した。熊本市は濁りが解消されるまで飲用や調理に使うことを控えるよう呼びかけ、7月29日には市内15カ所に給水車を配備した(6)。

給水車は入るものの、猛暑の中、高齢者や乳幼児のいる家庭が、給水所まで何度も水を取りに行き、運べるとは限らない。熊本市では熱中症への警戒も呼びかけられている。

こうした中で、家庭や職場などに備蓄されているペットボトル水は、命をつなぐ源である。その水が「期限切れ」で捨てられることなく、活かされてほしい。

ガラス瓶の水には賞味期限はなく、ペットボトル水にはある理由

ガラス瓶に入ったミネラルウォーターには賞味期限表示の義務がない。

農林水産省は次のように説明している。

「国産のミネラルウォーターの多くは、製造工程で加熱殺菌などが行われていますので、品質の劣化が起こりにくく、食品表示基準においては、ガラス瓶入りのもの(紙栓を付けたものを除く)やポリエチレン容器入りのミネラルウォーターの賞味期限や保存方法は、省略できることになっています」

同じ水だが、ガラス瓶とペットボトルとで期限表示の扱いが変わる。

日本ミネラルウォーター協会の渡辺健介氏は、筆者の取材に次のように答えている。

「通常の食品は、時間の経過とともに、酸化などにより、味や色などが変化します。(中略)ところがミネラルウォーターは水なので、時間が経過しても酸化などの変化を受けず、日本のミネラルウォーターはヨーロッパのものほど硬度も高くないので、時間が経過してもミネラル分の析出もなく、味や色が変化することがほぼありません」

そのうえで、ペットボトル容器特有の性質を挙げる。

「ペットボトル容器は、その表面から水分が蒸発していくので、ペット入りミネラルウォーター製品の場合、時間の経過とともに中味の容量が減っていきます」

ガラス瓶は水を通さないが、ペットボトルは、わずかずつ、水を通す。この違いが、期限表示の扱いの違いを生んでいる。

飲料メーカーは、賞味期限を年月日表示(左)から年月表示(右)へと変更しているケースが多い。年月表示化することで、飲食料品を月の途中ではなく、月末まで流通し消費することが可能となる。賞味期限が3ヶ月以上あるものは、日付を省略できる決まりになっている(写真は筆者撮影)飲料メーカーは、賞味期限を年月日表示(左)から年月表示(右)へと変更しているケースが多い。年月表示化することで、飲食料品を月の途中ではなく、月末まで流通し消費することが可能となる。賞味期限が3ヶ月以上あるものは、日付を省略できる決まりになっている(写真は筆者撮影)「計量法によるものではない」?自治体の注意喚起

2025年12月、朝日新聞から賞味期限に関する取材依頼を受けた。記事は2025年12月29日付と2026年1月16日付で掲載された(7)。その取材の際、記者から教えてもらったのが、静岡県富士市が2025年5月15日付で公表していた「ペットボトル入り飲料水の賞味期限に関する誤解への注意喚起」である(8)。

「一部の事業者・消費者の間で、『ペットボトルに入ったミネラルウォーターの賞味期限の表記は、計量法の規定により、内容量が保持される期限(日付)を表示したものである』という誤解が生じているようですが、賞味期限は食品表示法に基づき表示されているものであり、計量法によるものではありません」

これを読んで戸惑った。日本ミネラルウォーター協会の渡辺氏は、かつて産経新聞の取材に「水の賞味期限は表示容量が確保できる期限」だと答えていたからだ(9)。筆者自身も、その説明をもとに記事を書いてきた。

自治体は「計量法によるものではない」と言い、業界団体は「容量が確保できる期限」だと言う。どちらが本当なのか。

そこで、業界団体、大手飲料メーカー3社、全国清涼飲料連合会、賞味期限を管轄する消費者庁に取材した。

なお、富士市にも2026年1月23日、注意喚起の根拠について問い合わせフォームから質問を送ったが、7月30日現在、回答は得られていない。回答があれば追記したい。

取材でわかった「なぜ計量法が優先するのか」

回答は次の通りだった。

サントリー食品インターナショナルは「経時的な香味変化が少ないミネラルウォーターにおきましては、商品の流通期間や計量法を主たる要因として賞味期間を設定しております」。

アサヒ飲料は「おいしさを含む品質が保たれている期限と、容器の耐久性を含め、内容量を担保できる期間と考えて表示しております」。

キリンビバレッジは「未開封の状態で、かつ容器に表示されている方法で保存した時、美味しくお飲みいただける期限」。

3社のうち2社が、表示容量を確保できる期間を、賞味期限設定の要素として挙げた。

消費者庁 消費者教育推進課 食品ロス削減推進室室長、田中誠氏の回答は以下の通りだった。

「賞味期限は、食品表示法に基づく食品表示基準の定義に沿って科学的根拠をもって設定されるものです。一方で、長期保存が可能なミネラルウォーターは、販売前の流通・保管の段階で計量法違反とならないよう、安全係数にかなりのバッファーをもって賞味期限を設定する商慣習があると認識しております」

賞味期限の法的な根拠は、あくまで食品表示法である。この点で富士市の説明は正しい。

一方、日本で製造されたペットボトル入りミネラルウォーターは、ろ過・殺菌されており、味や色がほとんど変化しない。つまり「おいしさのめやす」として考えるなら、期限はきわめて長く設定できる。

ところがペットボトルを通して、中の水は少しずつ蒸発していく。計量法が定める許容誤差範囲(500mlのペットボトルなら2%以内)を超えずに表示容量を担保できる期間は、おいしさが保たれる期間(=賞味期限)より短いことがほとんどである(10)。

両方を考慮すれば、短いほうが優先される。結果として、ペットボトル水に印字されている賞味期限は、本来の「おいしさのめやす」より短くなる。消費者庁の田中誠室長も、この点を指摘している。

富士市の説明も業界団体の説明も間違っていない。法的な根拠は食品表示法にある。だが、実際のところ、計量法で定める期間の方が短いから、結果的にそちらが優先されるのだ。

ペットボトル水に印字されている賞味期限は、水が飲めなくなる期限よりも手前に設定されていることが多い。長期間保管し、中の水が蒸発したペットボトル水は、容器がへこんでくる。

中の水が蒸発し、内容量が少なくなったペットボトル水。容器にへこみが生じている(筆者撮影)中の水が蒸発し、内容量が少なくなったペットボトル水。容器にへこみが生じている(筆者撮影)国の公式サイト「賞味期限過ぎても一律に飲めなくなるものではない」

農林水産省の公式サイトでは次のように説明している(11)。

「賞味期限は、定められた方法により保存した場合において、期待される全ての品質の保持が十分に可能であると認められる期限であり、飲料水は賞味期限を過ぎても一律に飲めなくなるものではありません」

長期保存水の賞味期限は5年から10年。通常のミネラルウォーターは約2年である。

消費者庁の公式サイトでも、賞味期限の切れた災害備蓄品について、こう記している(12)。

「飲料水は、賞味期限を超過しても一律に飲めなくなるものではありません。品質の変化が極めて少ないことから、一部のものについては期限表示(消費期限・賞味期限)の省略も可能としています」

消費期限(ピンクの点線)は、時間の経過とともに品質が急激に劣化するが、賞味期限(緑の点線)は、過ぎてもすぐ品質が劣化するわけではない(消費者庁資料をもとにoffice3.11がグラフ作成)消費期限(ピンクの点線)は、時間の経過とともに品質が急激に劣化するが、賞味期限(緑の点線)は、過ぎてもすぐ品質が劣化するわけではない(消費者庁資料をもとにoffice3.11がグラフ作成)お茶やジュース・乳飲料は、水とは異なる

ただし、賞味期限が過ぎてもどんなものでも飲めるわけではない。以下3点は確認しておきたい。

第一に、保管場所によって、中の状態は変わる。直射日光にあてていたり、高温高湿のところに長く置かれたりしていると、中の品質は変わりやすい。ペットボトルは、においを透過するため、灯油や防虫剤、洗剤など、においの強いものと一緒に保管されていたものは、中の水もにおいの影響を受けやすい(特にペットボトルの厚みが薄いもの)。容器が膨らんでいないか、変形や漏れがないか、キャップに錆がないか。開けたときに濁りや異臭がないか、などは飲む前に確認する必要がある。

第二に、賞味期限は、いったん開封したら無効になる。これは水に限らず、ほかの飲食品でも同様だ(13)。飲料メーカーは、直接口をつけた場合はその日のうちに、コップに移して飲んだ場合でも、冷蔵庫で保管して2〜3日を目安に飲むよう、呼びかけている。

第三に、お茶や果汁飲料、乳飲料、炭酸飲料は、水とは異なる。お茶や果汁飲料、コーヒー飲料、乳飲料や炭酸飲料は、時間の経過とともに品質や風味が変化する。「ペットボトルならなんでも、期限が過ぎても大丈夫」ではない。

東京都内にあるマルヤス大森店に設置されていた、飲料メーカーの掲示。一人一日3リットルの水が必要と書かれている(筆者撮影)東京都内にあるマルヤス大森店に設置されていた、飲料メーカーの掲示。一人一日3リットルの水が必要と書かれている(筆者撮影)10年前の熊本の教訓

10年前、2016年に発生した熊本地震では、全国から膨大な支援物資の飲料水が集まった。ところが、地震から3年経った2019年になっても、期限切れの水130トンが山積みになっていた。熊本市は2020年1月までに使い切るとして、花壇の水やりや手足を洗う用途に活用したことを、地元の熊本日日新聞が2019年7月に報じていた(14)。その後、熊本市は、復興工事の作業員の手洗いなどで50トン使い、残りをイベントなどで使うと説明した。

支援物資を送る側は、必要のない物資を送ることは、被災地の迷惑になってしまう可能性があることを考慮したい。

備蓄食品を使う方は、賞味期限が過ぎたことを理由に、すべてを一律に廃棄しないでいただけるとありがたい。

被災地の外にいる人は、自宅や職場で備蓄しているペットボトル水の期限を確認してほしい。期限が過ぎていても、すぐに捨てず、捨てる前に中身を確かめてほしい。できれば、普段から使いながら買い足す「ローリングストック」に切り替えると、買いだめや備蓄による期限切れを防ぐことができる。

ローリングストックのイメージ。普段から備蓄し、それを食べたり飲んだりし、使った分だけ補充していくと、備蓄が循環していく(出典:政府広報オンライン)ローリングストックのイメージ。普段から備蓄し、それを食べたり飲んだりし、使った分だけ補充していくと、備蓄が循環していく(出典:政府広報オンライン)水は無限ではない 国連「地球規模の水破産の時代」

蛇口をひねれば水が出るので、普段、水のありがたみを実感することはない。だが、水資源は気候危機状況にある。

2026年1月、国連大学は、地球規模の水「破産」の時代に入ったと警告する報告書を公表した(15)。経済損失は年間3,070億ドル(約49兆円)に相当する。長年にわたる過剰な取水や気候変動、汚染などによって、従来の水システムが回復できない状態に陥っている。

2026年7月、ロイターは、フランスで熱波と水不足により干ばつが深刻化していると報じた。

長年、環境問題に関する提言を続けてきたレスター・ブラウン氏は、食料生産には飲み水の500倍もの水が使われると述べている(16)。私たちは水を飲まなければ生きられない。だが、食べものをつくるために、その何百倍もの水を使っている。

食品ロスは、水のロスでもある。

日本の食料自給率は38%。食料だけでなく、食料生産に必要な水資源も海外に依存しているということだ。人が決めた期限表示が切れたからといって、貴重な水を捨ててよいだろうか。

仏、熱波と水不足で干ばつ深刻化  Dry, cracked soil in Petosse as drought conditions worsen following a heatwave and water shortages across much of France, July 21, 2026. REUTERS/Stephane Mahe (France)仏、熱波と水不足で干ばつ深刻化  Dry, cracked soil in Petosse as drought conditions worsen following a heatwave and water shortages across much of France, July 21, 2026. REUTERS/Stephane Mahe (France)(写真:ロイター/アフロ)熊本でも全国でも「水を大切に」

日本で製造されたペットボトル入りの水は、ろ過・殺菌されている。印字された賞味期限は、飲めなくなる期限ではない。おいしく飲める長期間の期限より、ペットボトル容器を通して水が蒸発することにより、表示された容量を担保できなくなる期限の方が短い。だから、それを基準とすることが多い。おいしさが失われる時点より、ずっと手前の年月が表示されている。だから、たとえ期限が過ぎていたとしても、容器と中身を確認したうえで、飲める場合が多い。

断水が14万戸に及び、猛暑が重なる熊本で、その一本が、誰かの命をつなぐかもしれない。

貴重な水が活かされますように。

参考情報

1)熊本県熊本地方でM7.1の地震 最大震度7 各地の震度(ウェザーニュース、2026/7/28)

2)熊本で約14万戸断水 国交省、給水車派遣を要請(共同通信、2026/7/28)

3)ペットボトル水、賞味期限を決める基準は?大手飲料メーカー3社、業界団体、消費者庁に聞く(井出留美、Yahoo!ニュース エキスパート、2026/1/24)

4)ペットボトル水の賞味期限は何が基準?大手メーカー、消費者庁、協会に取材した結果(井出留美、パル通信291号、2026/1/23)

5)【7/28熊本地震】水道施設の被害状況等について(国土交通省、2026/7/29 6:00時点)

6)【ライフライン情報】熊本で3万2110戸が停電中 断水・濁り水も広がる(TKUテレビ熊本、2026/7/29)

7)(FOOD発見)賞味期限を考える おいしさの目安、多少過ぎても食べられる 井出留美さんに聞く(朝日新聞、2026/1/16)

8)ペットボトル入り飲料水の賞味期限に関する誤解への注意喚起(静岡県富士市、2025/5/15)

9)賞味期限を過ぎたペットボトルの水は飲めるか、飲めないか?(産経新聞、2018/7/3)

10)ペットボトル水の賞味期限に関するお問い合わせ(経済産業省)

11)防災備蓄用の水は賞味期限が切れたら使用できなくなりますか。(農林水産省)

12)賞味期限の切れた災害備蓄食品について(消費者庁)

13)食品期限表示の設定のためのガイドライン(消費者庁)

14)飲料水130トン、未使用のまま 熊本市への地震支援物資、賞味期限切れ・・・活用策模索 平成28年熊本地震(熊本日日新聞、2019/7/29)

15)国連大学の最新報告書:地球規模の水「破産」を宣言(国連大学、2026/1/21)

16)『カウントダウン 世界の水が消える時代へ』(レスター・R・ブラウン著、枝廣淳子監訳、海象社)

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