
開演前のロビーには、すでにDRUM TAOの世界が広がっていました。
那覇文化芸術劇場なはーとのロビーに並ぶ大型ビジュアル。その前で足を止め、これから始まる舞台に思いを巡らせる来場者の姿がありました。待ち焦がれた開演を目前に、期待で胸をふくらませた来場者たちは、軽やかな足取りで客席へと吸い込まれていきました。

2026年6月27日・28日の2日間、那覇文化芸術劇場なはーとでDRUM TAO 2026 新作舞台『THE HUMAN』が上演されました。
テーマは「人間」。
和太鼓を中心に、篠笛、三味線、箏、歌、身体表現、映像、照明、そしてコシノジュンコさんが手がける衣装が重なり合い、約90分のステージは一つの壮大な体験として観客に届けられました。
静寂を破る一打。舞台は一瞬で熱を帯びる
客席の照明が落ちると、劇場を包んでいたざわめきがすっと消えていきます。
ステージに広がるのは、黄金色に輝く世界。左右には和楽器が置かれ、演者たちが静かに立ち位置につきます。音が鳴る前から、研ぎ澄まされた空気感と緊張感が漂っていました。
やがて、澄んだ笛の音が響きます。
その音色に三味線の深い響きが重なり、さらに太鼓の一打が加わると、舞台の空気は一気に変わりました。


和太鼓の音は、耳で聴くというよりも、身体に響く感覚です。一打ごとに空気が震え、音の輪郭が客席へ押し寄せてきます。
太鼓だけではない。音が重なり、景色が変わる
DRUM TAOの魅力は、圧倒的な和太鼓の迫力だけではありません。
和太鼓の打音が観る者を飲み込む一方で、篠笛の繊細な音色、三味線の響き、箏の静かな余韻が重なり合います。その層の厚さが、舞台に奥行きを与えていました。

激しい太鼓の連打で一気に高揚したかと思えば、次の瞬間には笛の音が静かに響き、客席の呼吸まで整えていくような時間が訪れます。力強さと静けさ。その緩急があるからこそ、次の一打がより鮮やかに響きました。

さらに、ステージ後方のLED映像も印象的でした。
赤く照らされた和の空間。提灯が並ぶ幻想的な風景、桜を思わせる映像や月夜のような背景。場面が変わるたびに、観客は違う世界へ連れていかれるような感覚になります。




映像は単なる背景ではなく、音と身体表現を引き立てる重要な担い手として精彩を放っていました。
コシノジュンコさんの衣装が、動きに力を与える
音、映像、照明。ここでさらにDRUM TAOらしさを際立たせるのは衣装の存在です。
白、黒、金を基調にした大胆なデザイン。和の要素を感じさせながらも、現代的で力強いシルエットが印象に残ります。
太鼓を打つ腕の動き、旗を大きく振る身体のしなり、舞台を駆ける足元。その一つひとつの動きをより大きく見せていました。
特に、巨大な旗が舞台いっぱいに広がる場面では、布のうねりと演者の身体が一体となり、音のない瞬間にも力強い躍動が生まれていました。
笑いも、熱狂も。人間らしさがあふれる舞台
「THE HUMAN」というタイトルの通り、この舞台には人間らしい表情があふれていました。
真剣なまなざしで太鼓に向き合う姿。
仲間と視線を交わしながら笑う表情。
観客を巻き込むように身体いっぱいで演じる熱気。
なかには、会場を和ませるコミカルな演出もありました。力強く、鋭く、張り詰めた場面が続くからこそ、ふっと笑いが生まれる瞬間に客席の空気がやわらぎます。
DRUM TAOのステージは、ただ圧倒するだけではありません。観客を驚かせ、笑わせ、引き込み、また次の瞬間には息をのむような迫力で包み込んでいきます。その振り幅こそが、舞台全体を豊かにしていました。
クライマックスへ。人の力が音になって迫ってくる
後半に向かうにつれて舞台の熱量はさらに高まっていきます。
大太鼓の前に立つ演者。背中を大きく反らせ、全身を使って一打を放つ姿は、まさに「人間力を剥き出す」というコンセプトを象徴する場面でした。

太鼓を打つのは腕だけではありません。
足を踏み込み、腰を落とし、背中をしならせ、呼吸まで音に変えていく。
その姿から伝わってくるのは、技術だけではない、生身の人間が持つ熱です。
複数の太鼓が重なり、笛や掛け声が加わり、舞台上の全員のエネルギーが一つになっていく。音は次第に厚みを増し、客席へ向かってまっすぐに迫ってきました。
アンコール「THE HUMAN」へ。余韻まで刻まれる時間
本編ラストの演目を終えると、舞台はいったん区切りを迎えます。
そしてMCを挟み、アンコールでは作品タイトルでもある「THE HUMAN」が披露されました。
最後に並んだメンバーの表情には、ステージをやり切った充実感がありました。客席から送られる拍手に応えるように、出演者たちは笑顔で舞台に立ち続けます。
和太鼓の力強さ、笛の澄んだ音色、三味線や箏の響き、映像と照明、そして身体表現。すべてが重なり合った約90分は、全身で受ける舞台体験でした。
デジタルでは置き換えられないもの。画面越しでは伝わりきらないもの。それを生身の人間が全力で表現する。
DRUM TAO 2026「THE HUMAN」は、その言葉の意味を、音と身体でまっすぐに伝えてくれるステージでした。
「一番違うのは、指笛…」DRUM TAOの ”顔” 西 亜里沙インタビュー
艶やかな舞から力強い演奏まで、変幻自在に観客を魅了し、長年「TAOの顔」として活躍し、現在では「取締役統括」に就任している西 亜里沙さん。
DRUM TAOを舞台上でも、舞台から降りても牽引する彼女からみた沖縄とは?
世界を巡るDRUM TAOが、それでも沖縄に帰ってきたくなる理由
沖縄へ来ると、「ああ、帰ってきたな」と思う瞬間があります。
それは、指笛ですね。
全国いろいろな場所で公演をしていますが、沖縄みたいに自然と指笛が鳴る場所って、ほとんどないんですよ。
「楽しんでくださっているんだな」そう思うと、私たちも自然と楽しくなります。
メンバーもみんな指笛に挑戦するんですけど、意外と難しくて(笑)。
だから、沖縄の皆さんが当たり前のように鳴らしているのを見ると、「すごいな」と思います。
沖縄にはエイサーの文化もありますよね。だからなのか、会場全体が一緒になって盛り上がっている感じがするんです。
もちろん、どの地域にも待っていてくださるお客様はいますが、沖縄は少し違います。
なんでしょうね。温かいというか、入りやすいというか。言葉にするのは難しいんですけど、会場全体にほんわかした空気が流れているんですよね。
だから毎年、沖縄公演は楽しみなんです。
飛行機の窓から海が見えると、「来たな」って思います
沖縄へ来る楽しみは、公演だけじゃありません。飛行機の窓から海が見えてくると、「来たな」って思うんです。海外へ行くことも多いので、きれいな海を見る機会はたくさんあります。
でも、沖縄の海はやっぱり違います。青さが違うんですよね。
今回も到着した日は少し曇っていたんです。それでも、窓から見えた海は本当にきれいでした。特に忘れられないのは、石垣島の川平湾です。
少し雨が降っていたんですけど、着いた瞬間に晴れて、海の色がサーッと変わったんですよ。「ああ、こんなにきれいなんだ」あの景色は今でも忘れられません。
それから、国際通りも毎年歩きます。公設市場も好きですね。特に目的があるわけじゃないんです。でも、あそこを歩いていると、「沖縄に来たな」って実感するんですよ。
そんな時間も、毎年の楽しみになっています。
毎回来ると、食べ過ぎちゃうんです(笑)
沖縄へ来ると、食べたいものが本当にたくさんあります。まず、もずくです。沖縄のもずくって、食べ応えが違うんですよね。
それから、ゴーヤチャンプルー、フーチャンプルー、そうめんチャンプルー、チャンプルーは全部好きです(笑)。
サーターアンダギーも食べたいし、ポーク玉子のおにぎりも食べたい。
毎回来るたびに「あれも食べたい」「これも食べたい」ってなってしまって。結局、「まだ食べるの?」って言われるくらい食べちゃいます(笑)。
そして、昔から必ず行くお店があります。
国際通りにある沖縄料理店「ゆうなんぎい」です。
本当に昔から通っていて、沖縄へ来たら「今年も行こう」って楽しみにしている場所なんです。人気店なので、いつも開店時間を狙って行くんですよ。
でも今回は… お休みでした(笑)。
張り切って行ったので、ちょっと残念でした。でも、「また来年のお楽しみかな」って。
そんなことも含めて、沖縄へ帰ってくるのが楽しみです。
また沖縄へ帰ってきます
京都の専用劇場も始まりました。海外公演も増えています。
京都で舞台を観てくださった海外のお客さまが、そのあとオーストラリア公演まで来てくださったこともありました。
あのときは本当にうれしかったですね。
だからこれからも、もっと世界へ行きたいと思っています。
もっとたくさんの人にDRUM TAOを知ってもらいたい。
そして、「日本まで観に行きたい」と思ってもらえる存在になれたらうれしいですね。
でも、「また行きたい場所は?」そう聞かれたら、答えは決まっています。
沖縄です。
また皆さんに会いたい。また指笛を聞きたい。また、一緒に盛り上がりたい。
今回の公演でも、一階席も、二階席も、三階席も、本当に楽しそうでした。
身を乗り出して手拍子をしてくださる姿が、舞台の上からもしっかり見えていました。
その景色が、本当にうれしかったんです。
だから、来年も帰ってきます。
また皆さんに会える日を、今から楽しみにしています。
