ゴキブリ人民党の“勝利”が揺らすモディ政権
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藤 和彦
経済産業研究所コンサルティング・フェロー
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2026.7.29(水)
アジア・オセアニア
苦境に立たされているインドのモディ首相(写真:ロイター/アフロ)
目次
少子化が加速し「豊かになる前に老いる」
周辺国のように若者の不満が爆発するか
盤石に見えたインドのモディ政権の足元が揺らぎ始めている。
インドの10代や20代の若者を中心とする団体「ゴキブリ人民党(CJP)」の主張を、モディ政権が受け入れたからだ。CJPの指導者らは、医学系大学の入試問題の漏洩疑惑を巡ってプラタン教育相の辞任を求める抗議運動を続けていたが、プラタン氏は25日、X(旧ツイッター)で、モディ氏に辞意を伝えたことを明らかにした。
プラタン氏は、12年間にわたりモディ政権で石油・天然ガス相や鉄鋼相など主要閣僚を歴任してきた政権中枢の人物だ。インド人民党(BJP)の次期指導者候補として期待されていただけに、今回の辞任は大きな政治的意味を持つと言われている。
モディ氏の対応も異例だ。
モディ氏は26日「試験制度を抜本的に見直すため、IT起業家のニレカニ氏が率いる特別作業班を設立する。試験問題漏洩に対処するための新たな法案が27日に議会に提出される」と発表した。ニレカニ氏は、インドが誇るデジタル身分証「アーダール」の構築を主導し、ソフトウェア大手インフォシスの共同設立者として知られている人物だ。
2014年の政権発足以来、モディ氏が圧倒的な支配力を維持してきたインドで、わずか数週間までは考えられなかった動きだ。
インド政府が要求を全面的に受け入れたため、CJPは25日、抗議活動を終了したが、インドの政情は再び安定するのだろうか。
残念ながら、そうとは言えない状況だ。
インドの教育制度が抱える問題の根が深いからだ。
フィナンシャル・タイムズは12日、「インドの教育システムは世界最高であり世界最悪である」と指摘するインドの専門家の主張を伝えた。今回起きた出来事は、インドのエリート学生にとって深刻な問題だったが、そもそもトップ級の大学に入学できるのは志願者の1~2%に過ぎない。一方で、インド政府系シンクタンクのニティ・アーヨグによれば、13歳になって簡単な割り算を解ける学生の比率は46%で、この割合はここ10年間でほとんど変わっていない。
インドは2009年を最後に、15歳を対象に経済協力開発機構(OECD)が実施する学習到達度調査(PISA)への参加をとりやめた。同年の調査では、参加73カ国中72位だった。
モディ氏は2020年に教育政策を大幅に見直す方針を発表したが、現状はほとんど変わっていないのが実情だ。6~13歳の就学率は87%にとどまり、教員の欠勤率も高い有様だ。
