北中米W杯では数々の注目国が志半ばで大会を去った。勝敗を分けたのは、個の力か、戦術か、それともピッチ外の要因か。彼らの敗因は「世代交代」や「決定力不足」といったステレオタイプでは片づけられない。戦術の進化、過密日程、ルール変更、選手層、育成、チームマネジメント――その背景には、日本サッカーが学ぶべき課題も潜んでいる。本特集では各国の戦いを深掘りし、彼らがなぜ敗れたのかを検証する。

第3回は、ラウンド32で姿を消したドイツ代表。ピッチ上だけを見れば、ユリアン・ナーゲルスマン監督のチームは決して悪くなかった。しかし大会後、現地メディアが次々と報じた舞台裏からは、マヌエル・ノイアー復帰、ファミリーデー、序列を覆す不可解な起用法が選手たちの信頼を失わせていく過程が浮かび上がる。敗因は戦術ではない。組織を率いるマネジメントの崩壊だった。

 もし今回のW杯において「マネジメントが最悪だった監督」に送られる賞があったとしたら、間違いなくドイツ代表のユリアン・ナーゲルスマン監督が最有力候補になるだろう。

 ドイツ代表は決勝トーナメント1回戦(ラウンド32)でPK戦の末にパラグアイに敗れ、2018年大会と2022年大会に続き、またしても早期敗退に終わってしまった。

 今、ドイツのメディアでは内情の暴露が相次いでいる。それによってあぶり出されたのはナーゲルスマンの数々の失策だ。

 いったいドイツ代表で何が起こっていたのか? 各メディアの報道をまとめると、チームが崩壊するまでに少なくとも3つの分岐点があったことがわかる。

ノイアー復帰が壊した「約束」と信頼

 1つ目の分岐点は、マヌエル・ノイアーの代表復帰だ。

 ノイアーは自国開催のEURO2024でドイツ代表を引退し、ナーゲルスマンはバイエルンの守護神の代表復帰を否定し続けてきた。ことあるごとに「正GKはオリバー・バウマンだ」と強調した。

 ところが、今回のW杯に向けたメンバー発表のリストにノイアーの名前が入ったのである。合わせて「ノイアーが正GKになる」と発表した。

 約束を破られたバウマンが大きな失望を味わったのは言うまでもないが、さらに事態を複雑にしたのは第2GKのアレクサンダー・ニューベルとノイアーの不仲だ。

 ことの始まりは、2020年、ニューベルのバイエルン加入だった。

 ノイアーはライバルの出現に露骨に嫌悪感を示し、非友好的な態度を取り続けたと言われている。ニューベルはモナコやシュツットガルトへレンタルで出され、今夏にベシクタシュへ売却された。

 オンラインメディア『ran』によると、ノイアーはドイツ代表に復帰する際、バイエルの若手GKヨナス・ウルビッヒを第3GKとして選出するように要望したと言われている。

 結局、ノイアー、バウマン、ニューベルがW杯メンバーとなり、ウルビッヒはサポートメンバーとしての帯同となったが、ノイアーの意向が少なからず反映された形になった。

 これによってGK陣は2つのグループに分裂してしまう。多くの選手がバウマンに同情し、「ナーゲルスマンは約束を破る」というイメージが生まれてしまった。

「ファミリーデー」がチームに持ち込んだ不公平感

 2つ目の分岐点は、家族や恋人の扱いだ。

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Profile
木崎 伸也

1975年1月3日、東京都出身。 02年W杯後、オランダ・ドイツで活動し、日本人選手を中心に欧州サッカーを取材した。現在は帰国し、Numberのほか、雑誌・新聞等に数多く寄稿している。

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