土田 陽介

三菱UFJリサーチ&コンサルティング 調査部 主任研究員

またも阻まれたフォルクスワーゲンのリストラ

ドイツ最大であり、世界でも一、二を争う自動車メーカーであるフォルクスワーゲン(以下VW社)のリストラがなかなか進まない。業績の悪化を踏まえ、VW社は7月9日に監査役会を開き、2030年に向けた中期の経営計画を協議した。モデル数の半減などで生産台数の10%減を目指す内容だが、一方、雇用整理への言及は避けられた。


リストラの本丸は寧ろ世界で10万人規模とも報じられた雇用整理だったわけだが、労組がこれに大反発したため、経営はこれを撤回した。2024年にも同様の事態が生じており、それに続いて経営が労組に譲歩を迫られた形となった。生き残りのためのリストラをしようにもできないVW社の姿は、まるでドイツ経済そのものの姿と言える。


2026年1月30日~31日、クロアチアのザグレブで開催された欧州人民党(EPP)指導者会議に出席したドイツのフリードリヒ・メルツ首相
2026年1月30日~31日、クロアチアのザグレブで開催された欧州人民党(EPP)指導者会議に出席したドイツのフリードリヒ・メルツ首相(写真=@epp.eu/CC-BY-4.0/Wikimedia Commons)


VW社の経営は確かに厳しく、2025年のグループ全体の総資本利益率は1.1%と、トヨタの4.0%(ただし会計年度)に比べると大いに見劣りする。VW社の不振は複合的な要因によるものだが、大きな理由の1つに、中国市場での販売不振がある。これまでVW社にとってキャッシュカウだった中国市場で、VW社はもう稼げないわけだ。


2020年代に入り、中国ではBYDなど電気自動車(EV)に強みを持つ民族系メーカーが急成長し、国内の自動車市場を席巻するに至っている。VW社の強みはあくまで旧来の内燃機関(ICE)車にあるため、中国市場で劣勢に立たされるに至った。さらに北米市場では、トヨタのハイブリッド車(HV)に市場を取られ、苦しい状況が続いていた。


加えて、国内でのコスト高がVW社の経営を苦しめた。2015年の最低賃金導入以降、ドイツでは国内の賃金コストは急増している。さらに、ロシアとの関係の断絶に伴うエネルギー高も深刻である。経営を立て直すためには収益と費用の両面でリストラが必至であるにもかかわらず、VW社はそれを進めることができない状況に陥っている。


フォルクスワーゲンのホイール

写真=iStock.com/Ivan Kyryk

※写真はイメージです



Share.