敗戦で涙をのんだ北中米W杯ブラジル戦翌日、日本代表の3人が語った心揺さぶる話とは。現場取材記者が記す舞台裏。〈全3回〉

先制ゴール? 勝ててないので…何もないっすね

 佐野海舟は、ブラジル戦で先制ゴールを決め、日本のスーパーヒーローになりかけた。それでも――。

「いや、何もないっすね。勝てていないので」

 試合翌日に代表初ゴールの感想を問われたとき、喜びを口にすることはなかった。

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「得点を取れたのは良いことですけど、それを勝利につなげられる選手にならないといけないと思います」

 チーム随一のスタミナを誇る佐野に対しては、常にこんな質問が飛んでいた。「疲労を感じさせないようなプレーをするためには、どのような身体のケアをしているのでしょうか?」と。

 たしかに身体のケアは欠かさなかった。ただ、佐野は決まって他に大切な要素があると挙げていた。例えば、2025-26シーズンの公式戦48試合中44試合でフル出場したマインツでの日々について、以下のように話していた。

「もちろん身体的にしんどい時はありました。だけど頭のほうをしっかり動かし続けながら、1試合、1試合、自分がやるべきことを整理してやることが大事だと思います」

 つまり、身体よりも頭のコンディションを整えることのほうが大切だったわけだ。佐野はこうも話している。

「どれだけ頭を動かせるかということが、すごく大事になってくると思います」

 176cmながら、190cm近い大男に当たり負けせず、疲れを知らないかのようなスタミナを誇る佐野だが、本質は頭脳のミッドフィールダーである。だから、試合に向けた〈頭の準備〉を、実に入念に行なう。

「自分で(対戦相手の)試合を見たり、分析をしていて。(チームでのミーティングは)答え合わせというか、そのような感じで。自分の中である程度、整理することが必要かなと思います。もちろん、試合中の状況判断が必要だと思いますけど、大枠は準備で決まってくるのかなと思っています」

記者陣が息を呑んだ“ある行動”

 佐野と言えば、高いボール奪取力が話題になる。そのベースには自他共に認めるフィジカル能力がある。馬力があり、小回りも利く。

 ただ、ボール奪取の秘訣は――相手との駆け引きで「ここにパスを出させよう」という罠を張り、相手をひっかけるところにある。その仕掛けは、事前の入念な分析によって可能になる。

 では、そんな〈準備の人〉はブラジル戦後の夜、どんな思いを抱えながら過ごしていたのだろうか。

【次ページ】 しんどいですけど、いつもやっていることなので

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