イラン戦争考察①:イランの非対称戦略が暴いた米軍の限界

福山 隆

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2026.7.7(火)

中東地域に展開する米空母「エイブラハム・リンカーン」から発艦する「F/A-18F」戦闘機(6月25日、米中央軍のサイトより)

 本稿は、停戦交渉が続く今だからこそ見えるイラン戦争の構造を、テーマ別に振り返り・分析する「イラン戦争考察シリーズ」の第1回である。

 ホルムズ海峡は、今回のイラン戦争が「制限戦争(Limited War)」として始まったことを最も早く映し出した場所といえる。

 制限戦争とは、政治的理由から双方が使える軍事手段を自ら制限する戦争であり、戦力の総投入が行われない戦争形態である。

 米軍は海峡を恒常的に安全化するには、イラン側沿岸の火力拠点を制圧する必要があることを理解していたが、死傷者増大、湾岸諸国の離反、戦争の本土化を恐れた政治的制限のために実行できなかった。

 海兵隊の上陸作戦や陸軍の投入といった選択肢は採られず、米軍の行動は船団護衛・監視・接近阻止といった防御的措置に限定された。

 世界最強の米軍であっても、トランプ政権の政治判断が軍事行動の上限を決めたのである。

 イランもまた、海峡封鎖を完全版にせず、機雷敷設は限定的な配置に、小型艇の妨害は短期的な嫌がらせに留めた。

 その結果、海峡は短期間ながら実質的な封鎖状態になった。

ホルムズ海峡の戦略的意味

 ホルムズ海峡の狭さと沿岸の近さが、米国とイラン双方の行動を強く縛った。最狭部はわずか40キロしかなく、米艦は常にイラン沿岸の対艦ミサイル射程内に置かれる。

 つまり、海峡の地形そのものが、米軍の自由度とイランの攻撃手段を決めてしまったのである。

 イラン側沿岸には、機雷敷設、小型艇、対艦ミサイル、無人機といった非対称戦力の発射拠点が密集している。

 これらは米軍の海上優勢を覆す力はないが、海峡の通行を「不安定化」させるには十分な能力を持つ。

 イランは海峡を完全封鎖する力はないものの、部分的妨害を継続する力を持ち、これが米国の行動を常に拘束する。

 一方、米軍が海峡を恒常的に安全化するには、これらの発射拠点を物理的に排除する必要がある。そのためには、イラン側沿岸の制圧が最も確実な方法となる。

 しかし米国は政治的制限のため、この決定的手段を選択できない。

 結果として、米軍は「守るが、決定打は打たない」という制限行動に固定され、イランは「揺さぶるが、全面戦争の一線は越えない」という制限行動に固定された。

 この仕組みを理解することが、イラン戦争の全体像をつかむ第一歩になる。

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