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三菱UFJリサーチ&コンサルティング 調査部 主任研究員
原油価格が安定化してもインフレは加速する
米国とイランが停戦協議を行っているが、依然として予断は許さない。イスラエルはレバノンを攻撃するなど、独自の動きを強めている。米国はそのようなイスラエルを見限っている感があるが、見限られているのはむしろ米国かもしれない。いずれにせよ、情勢が不透明なままに、原油価格は一時の騰勢を失い、安定してきている(図表1)。

出所=インターコンチネンタル取引所
そもそも原油価格の上昇は、供給のひっ迫を織り込んだ先物が主導だった。言い換えれば、原油の需要はそれほど強くないのだから、供給のひっ迫への懸念が和らげば、原油価格が安定することは自明の理であったわけだ。しかしながら、各国中銀は、インフレの加速を見越してタカ派の姿勢を強めている。これはいったい、なぜだろうか。
石油製品の供給がインフレを左右する
重要なことは、供給のひっ迫は、原油もさることながら、石油製品だという事実である。原油の供給のひっ迫が和らいで原油価格が下落したところで、石油製品の供給のひっ迫が和らがなければ、インフレの加速は免れない。ではなぜ石油製品の不足が解消されないかというと、米国とイランの戦争で湾岸各国の製油施設が破壊されたためだ。
これまでの脱炭素化の潮流に伴う石油製品需要の減退を受けて、主要国の製油能力は縮小している。加えて原油には、スウィート、サワー、軽質・重質と質に違いがある。石油精製が足りなくなったからといって、原油さえあれば国内で精製できるというものでもない。原油や石油製品の輸入の多角化は言うは易く行うは難しの世界そのものだ。
日本では、イラン情勢が緊迫化する以前から、原油や石油製品の中東依存の高さを問題視する声が聞かれた。それはその通りだが、それでも中東依存度が9割以上のままであったのは、結局のところ、種々のリスクに鑑みても、中東産の原油や石油製品を輸入した方が、コストが圧倒的に安かったからだろう。この点は軽視されがちである。

写真=AFP/時事通信フォト
2026年6月17日、ベルサイユ宮殿でイランとの和平合意に署名したトランプ米大統領(左)と、マクロン仏大統領(右)=2026年6月18日、マクロン大統領の公式Xに投稿された動画より
