インド国立脳研究センター(NBRC)などの研究者らが、感情を伴う場面で高齢者の脳活動が若年者より不安定に変動することを明らかにした。科学誌nature indiaが6月4日に伝えた。研究成果は学術誌Cerebral Cortexに掲載された。

研究者らは、アルフレッド・ヒッチコックの映画「Bang! You’re Dead」を磁気共鳴画像装置(MRI)内で視聴した参加者209人の脳画像データを解析した。対象は18~35歳の若年成人111人と、60~88歳の高齢成人98人で、安静時のスキャンも含まれた。

分析の中心は、感情の意味や不確実性の評価に関わる眼窩前頭皮質(OFC)である。高齢者では、内側と外側のOFCで血中酸素濃度依存性信号が瞬間ごとに大きく変動した。この違いは、従来の平均的な脳活動の指標では確認できなかった。研究結果は、加齢により感情反応が単に弱まるのではなく、恐怖と驚きなど近い感情の意味を頻繁に見直し、感情の受け止め方が不安定になる可能性を示している。

さらに研究者らは、オンラインで別に募った64人に同じ映画を視聴させ、脳活動の時間的な変化を可視化する機械学習手法T-PHATEで解析した。若年者の脳は感情の流れを滑らかに追った一方、高齢者では神経軌跡がより分散した。不確実性下の学習モデルでも、高齢者は物語の進行に応じて感情解釈を、より低い確信度で頻繁に修正していた。最もサスペンスが高まる場面では、高齢者が報告した感情的な覚醒も弱かった。

この傾向は映画の視聴だけに限られなかった。表情による感情認識課題では、高齢者が恐怖と驚き、怒りと嫌悪を混同しやすいことも示された。これらの結果は、感情の加齢変化が、感情の弱まりというより、感情を解釈し、時間とともに更新する過程の不安定化として表れる可能性を示唆する。

研究チームのNBRCのディパンジャン・ロイ(Dipanjan Roy)氏は「高齢者の脳信号は、感情を処理する際、瞬間ごとにより大きく変化します」と述べた。一方、研究に関与していないインド理科大学院(IISc)認知研究所のスリダラン・デバラジャン(Sridharan Devarajan)氏は、変動性の増大はOFCに特異的に観察されたと指摘し、OFCの変動性が感情安定性や将来のメンタルヘルスリスクの信頼できる指標になるかは、追加研究が必要だとしている。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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