地元の漁業を守ろうと世界に向けて魚を売りこむ、高知県宿毛市の水産会社を取材しました。

6月11日の午前8時。
宿毛市にある与力水産では、海外事業部のメンバーがこの日輸出する魚の出荷作業に追われていました。

輸出部門のリーダー・中田衣吏子部長は、発注の確認から仕入れた魚の状態をみるなど契約の管理を担っています。

■与力水産・海外事業部 中田衣吏子部長
「今日はタイ向けとベトナム向けに輸出の出荷をしてまして、今からあげるのが高知県産の養殖マグロです。高知県は黒潮と豊後水道に挟まれてるので、お魚が養殖も天然魚も非常に豊富です」

70キロ以上もある大きなクロマグロをフォークリフトで持ち上げ、丁寧に、そしてすばやく梱包していきます。

■中田さん
「私たちがやっているのは水産物になるので特に生鮮。賞味期限3日という風に言われることもあるので時間との戦いなんですね」

梱包した魚はすぐに国際線が飛んでいる愛媛県の松山空港へと陸路で運ばれ、自社のチャーター便にのせて翌朝には現地へと届けられます。

与力水産は2008年に宿毛市で創業した会社で、2017年から宿毛湾で獲れた魚を中心に輸出を開始。輸出金額は2021年度は1000万円余りでしたが、2024年度には1億円を突破しました。

大きな特徴が「直接貿易」。
国内の商社を通して輸出する間接貿易ではなく貿易の実務を自社で行い、商談会を通じて現地のパートナーを開拓し直接売り込みを図っています。
直接貿易では先方の希望をリアルタイムに把握しながら地元の優れた魚を提案できるメリットがあります。

■中田さん
「マダイ、これ高知県産の養殖マダイなんですけど、マダイはすごい有名なんですけど、高知県産の生姜を与えていて、とにかく臭いが少ないマダイ。海外の方って意外と生魚まだ食べられる方が少ないので、こういう臭いが少ない特徴的な商品というのは非常に魅力的」

地元の魚が海外へと販路を拡大していくことは、地元の漁業者を守ることにつながります。
日々宿毛湾などで獲れた魚が水揚げされるすくも湾漁協中央市場です。

与力水産ではここに衛生面に配慮した専用の台を構えて、台の上で血抜きや神経締めをしています。
与力水産の有田専務にこだわりを聞きました。

■与力水産・有田輝一専務
「お魚を地べたに置くことがだめなので、台の上に載せて血抜きを行っている。血を抜くことによって臭みがなくなっていきますので、血抜きを行っている行ってないで最終的に料理人さんの評価が変わってくる」

下処理の仕方も国際基準に合わせていくことで、水揚げされた魚の価値を輸出できるまでに高めているのです。

地元の漁業者は。

■漁業者
「与力さんが来てくれてから、今までの単価がぐっと上がりました。値段もぐっと上がって生活が楽になった」

与力水産が目指すのは貿易を通じて、こうした地元漁業者を守り、産地を維持すること。

すくも湾漁協によりますと、漁業者の数は2004年4月には2200人ほどいましたが、今年(2026年)3月末では701人と20年ほどで約3分の1に激減しました。

■有田専務
「やはり地元を盛り上げるというのは第一条件ですし、やはり漁業者という部分に関しては昔からちょっと収入の面とかきついとかいう部分で後継者がいないことがあったので、そういう部分も含めて収入を増やすプラス後継者になっていただける人を増やしていく(のが狙い)」

与力水産が輸出した宿毛の魚は、海外で高く評価されているそうです。
こちらは6月、ベトナムのレストランに届いた宿毛のアマダイとカツオです。

現地のシェフが丁寧にさばいていきます。
宿毛の漁業者が釣った魚は海外で、美しい刺身のひと皿となりました。

与力水産と取引をしているベトナムの会社に高知の魚の魅力を聞きました。

■UOSHO VIETNAM CO.,LTD
CEO KATSUHISA KURAMOCHI
「(ベトナムのシェフに)評判すごくいいですね。ベトナムにもイトヨリダイがいるが、じゃあなんで高知の買ってくれるかというと全然味が違う。きれいにあぶらがのってて、きれいな身質してる高知の魚はと言ってるシェフの方たち(がいる)」

魚勝のベトナム人従業員は。

■UOSHO VIETNAM CO.,LTD
SalesMs. Dungさん
「ベトナム人は脂っぽい魚が好きです。養殖の魚はマグロとか、マダイとかかんぱち、天然の魚は、イサキ、いしがきだい、ウスバハギとかいつも注文しています」

与力水産の輸出先はタイやベトナム、シンガポールなどアジアが中心で、GDP(国内総生産)で比較すれば日本よりも経済規模が小さい国々です。

こうした国々でなぜいま、高知の魚が支持されるのか県に聞きました。

■県地産地商・外商課 森本順也企画監
「特に海外はアジア地域なんかを中心にまだまだ経済成長してたり、人口が増加してたりしますので、輸出食品というのはどうしても値段が高くはなってしまうが、一定の富裕層とか中間層の方もどんどん増えてきている国がどんどん出てきてますので、海外にはターゲットになる購入者がどんどん増えている状況にある」

また、森本企画監は、人口減少が急速に進む県内では海外への地産・外商が大事なキーワードになると指摘します。

■森本企画監
「国内の市場で食品を考えてしまうと、どうしても人口が急激に減少していくと、それが継続的に減少し続けることは決まっておること。そういう意味では県内のメーカーさんも国内だけじゃなくて、しんどい所ありますけど、海外への貿易というのも目をむけていただくのも非常に大事なことじゃないかなと思います」

与力水産では多様な魚種や安定した量を調達するために、2022年からは定置網事業にも乗り出しました。

この日、土佐清水市の貝の川漁港沖で行った定置網漁では200キロほどの水揚げでしたがシマアジやカンパチ、旬のイサキなど、約15種類が入りました。

地元宿毛を中心に高知県産の魚の価値を高め、直接貿易で販路を拡大している与力水産の取り組みは国の目にもとまり、昨年度、農林水産物の輸出に取り組む優良事業者として表彰されました。

■中田さん
「いまようやく私たち高知県の水産物が表舞台に登場し始めたところなので、この認知度を上げれば消費もおのずとあがってきますので、魚の価値の底上げを行って漁業者さんの収益につながるように私たちはきちんと日々の取り組みを直接(海外へ)紹介していけたらと思っています」

人口減少が進む中、貿易を通じて地元漁業者の所得を増やし産地を守ろうとする与力水産の取り組みはこれからも続きます。

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