台湾初かつ唯一のLCC(格安航空会社)として2014年に設立され、今年で運航開始から12年目を迎えるタイガーエア台湾。日本と台湾を結ぶ路線を精力的に開拓し、現在では日本全国22の空港と台湾の4都市を結ぶ計34路線を展開しています。今回、sky-budgetでは同社の黄世恵(ジョイス・ファン)代表取締役会長にインタビューを実施し、今後の機材計画や日本市場での戦略についてお話を伺いました。

■昨年12月に決定した15機のA321neo導入。その背景とアジア路線拡充への狙い
タイガーエア台湾は昨年12月、計15機のA321neoを導入することを決定しました。その決定の過程で、好調な日本路線などを踏まえワイドボディ機の導入は検討しなかったのでしょうか。この問いに対し、黄会長は「あくまでもターゲットとする市場はアジアであり、効率面を考慮してもワイドボディ機は検討に値しなかった」と明言されました。
Photo : Airbus
今後の機材戦略の軸となるA321neoですが、同機材の導入による航続距離の延長を活かし、今後はアジア域内での新路線開拓を進めていく方針です。また、A321neoは座席数が従来のA320の180席から232席へと大幅に増加します。このスケールメリットを最大限に引き出すため、旺盛な需要がある東京や大阪をはじめとした日本の主要路線へ優先的に投入し、収益の向上を図る考えです。
■上級座席は導入せず、LCCとしてのサービスを突き詰める
近年、一部のLCCでは上級座席(プレミアムクラス)を設定して単価向上を狙う動きが見られますが、タイガーエア台湾にその計画はありません。
黄会長は「仮に上級座席を設定したとしても、それに伴い機内食、ラウンジ、優先チェックインなど各種サービスを提供する必要があり、結果としてコストがかさみ、競争力が落ちることになる」と指摘しています。さらに、「搭乗前に食事を済ませた方に機内食は不要であるように、必要なサービスだけを無駄なく選択できる現在のLCCのビジネスモデルこそが利用者の利益にかなう」との認識を示し、あくまでもローコストキャリアとしてのビジネスモデルを堅持し、そのサービスを突き詰めていく姿勢を強調しました。
■「行きは空、帰りは40kg」 LCCの柔軟性が生む手荷物収入
同社の収益を支えるもう一つの柱が、手荷物などの付帯収入です。台湾から日本に向かう利用客の中には、「行きは空のスーツケースで日本へ向かい、買い物を存分に楽しんで、帰りは40kgの荷物を預ける」というケースも多いといいます。
さらに黄会長は、「実際に電子レンジや扇風機、掃除機といった日本の家電製品を預け入れる利用客も多い」というユニークなエピソードを披露。利用客それぞれの状況やニーズに応じて預入手荷物の容量を柔軟に選べることこそがLCCならではの魅力であり、同社の収益向上にも大きく寄与しているとのことです。
■搭乗率9割の好調な日本路線、日本人比率は20%へ拡大
現在、タイガーエア台湾の日本路線の搭乗率は9割という高水準で推移しています。これには歴史的な円安によるインバウンド需要の好調が大きく作用しているという認識を示されました。
一方で、日本の自治体などと連携したプロモーションを地道に強化した結果、これまでの15%だった日本人利用客の比率が20%にまで拡大していることも明かしました。特に岡山や鳥取、東北地方などの路線では日本人比率が25%を超えており、同社の独占路線においてその傾向が顕著に表れているそうです。
円安という厳しい環境下で日本人の海外渡航のハードルは上がっていますが、黄会長は「これからも日本の皆様に信頼されるエアラインを目指し、もっと日本人利用客を増やしていきたい」と意欲を見せています。現在の驚異的な高搭乗率に決して満足することなく、日本からの新規需要を積極的に開拓しようとするその姿勢は、非常に印象的でした。
■台湾を経由して東南アジアへ。「あなたの街と世界をつなぐ」

さらに今後のネットワーク構想として、日本の地方都市から台湾を経由して東南アジアへ向かう需要や、またその逆の需要も積極的に開拓していきたいと語られました。
同社は、本日の新ブランドアンバサダー就任発表会において「あなたの街と世界をつなぐ」というメッセージを掲げています。このビジョンを実現すべく、将来的には台湾での乗り継ぎ時に荷物を預け直す必要がないバゲージスルーの導入なども目指していく方針です。
今後の日本市場について、既存路線の増便にとどまらず、未就航地への新路線開設を含めてまだまだ日本のネットワークを力強く拡大していく意欲を見せる同社。今年9月には新たに小松~高雄線、石垣~高雄線の開設を予定しており、これにより日台路線は全36路線へと拡大します。日本各地と台湾、そして台湾から世界へとネットワークを広げるタイガーエア台湾の勢いは、今後も留まることなく続いていきそうです。
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