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 福島県が実施した「福島県営野田町団地保存活用設計業務委託」の公募型プロポーザルの結果が6月11日に公表された。最優秀提案者は仲建築設計スタジオ。同事務所と県が契約を交わしたことも併せて公表された。

最優秀となった仲建築設計スタジオの提案書の一部

 当サイトで募集時にも報告したが、このプロポーザルで筆者(宮沢)は審査員の1人を務めた。自分が関わったからというわけではないが、このプロポーザルはいくつかの点で、非常に珍しい(先進的な)内容だった。

1)最初期のスターハウス「54C-2型」に手を入れて、国の登録有形文化財を目指す。
2)まだ入居者がいる公営住宅の空き住戸を、「公営住宅以外」の用途に変えることも想定している。
3)設計者選定の段階で改修後のソフトの提案を求めている。
4)基本的には一級建築士であれば、だれでも提案できる。(事業コンペではないので、単独でも出せる)

現状の福島県営野田町団地のスターハウス2棟(写真:宮沢洋)

2棟は、昭和28年に建築家の市浦健が建設省と共同で設計した公営住宅の標準設計54-C-2型(スターハウスの最初の型)の唯一の現存例と考えられている

 審査委員会は下記の6人。

松村 秀一 神戸芸術工科大学学長 (審査委員会委員長)
大月 敏雄 東京大学大学院教授 (審査委員会副委員長)
木下 庸子 工学院大学名誉教授
海老澤 模奈人 東京工芸大学教授
宮沢 洋 (株)ブンガネット代表取締役
村上 金彦 福島県土木部建築住宅課長

 2026年2月4日の締切までに40者が応募(うち4者は失格条項等の該当があり無効)。資料審査で5者が選ばれ、3月26日に公開ヒアリングが行われた。同日に非公開の審査を実施し、最優秀と次点を選んだ。

最優秀:仲建築設計スタジオ
次点:ツキノワ+マルノアーキテクツ設計共同体

 以下、6月11日に公表された審査講評より。

【最優秀】仲建築設計スタジオ

 2棟とランドスケープを一体的な空間構成とし、様々な機能を組み合わせることで新たな住環境を形成している提案でした。

 1階に公営住宅を設け高齢者に配慮しながら外部とつながる住宅以外の機能を配置し、2階以上も現入居者に配慮しつつ多様な関わりを想定しており柔軟に対応できる計画となっていることから、これからの「集まって住む」という観点で高い評価となりました。

最優秀となった仲建築設計スタジオの提案の一部(以下の7点とも)

 また、少子高齢化を見据え、福祉事業者の活用や高校・大学との連携、助成金の活用など、具体的かつ実践的な体制で福祉のまちづくりを構築しており、ハードとソフトの相互関係による「持続可能な住環境運営」という観点からもミクストコミュニティの実現に向けて期待が集まりました。

 設備計画の提案について、特徴的な階段室空間の保存に関する質疑がありましたが、検討過程の具体的な説明とともにヒアリング時点においてもなお検討を継続している真摯な姿勢が印象に残りました。 提案全体を通して十分な調査と丁寧な検討がなされており、ヒアリングでの質疑に対する回答も的確で、総じて完成度が高い提案であるとの評価を受け最優秀となりました。

 プロポーザルなので、上に掲載したイメージ図は、そのまま実施されるわけではない。提案書の全体を見たい方はこちらを。→https://www.pref.fukushima.lg.jp/uploaded/attachment/749178.pdf

 応募要項では、工事費:約4億円(消費税込み、建築工事、電気設備工事、機械設備工事の他、外構工事を含む)、全体工程:2026年度に改修設計等、令和2027~28年度に改修工事としている。

 野田町団地(スターハウス)の建築的な特徴については、筆者のイラストルポが「ふくしま建築探訪」に掲載されているのでご覧いただきたい。

https://fukushima-kenchikutanbou.jp/junrei_detail.html?no=62

(イラスト:宮沢洋、ふくしま建築探訪)

 上記のイラストルポが、県が再生事業に踏み切る一因になったらしく、乗りかかった船なので、当サイトでは今後も事業の節目にお伝えしていきたいと考えている。

 なお、福島県のサイト(こちら)では、最優秀以外の提案書(2次選考に残らなかったものも含む)を見ることができる。これもかなり珍しいと思うので、今後こうした“ソフト提案型”のプロポーザルがあったときの参考にぜひご覧いただきたい。2次選考に残った他の4者の審査講評と提案書のリンクをコピペしておく。(宮沢洋)

[次点]ツキノワ+マルノアーキテクツ設計共同体

 まちとスターハウスを一体的に捉え地域全体の暮らしが豊かになるよう、地域計画レベルから住戸内まで様々なスケールで検討されている密度の高い提案でした。

 地域の中の文化的価値を持つ存在と捉え外観や階段室空間を大切に保存しようとする方針や、暮らし体験住宅や見学ツアー、シェアサイクルなど、ソフト事業を中心に様々なアイディアを組み合わせることで、「スターハウスの聖地」としてブランディングしており、「生きた建築」として継承する観点で高い評価となりました。

 概算工事費の綿密な試算、法的整理、運営体制の構築、福島市や公営住宅の実情を把握しているなど、事業の実現性が高く説明にも説得力がありました。

提案書→https://www.pref.fukushima.lg.jp/uploaded/attachment/749179.pdf

藤原酒谷設計事務所・アラウンドアーキテクチャー・EQSD設計共同体

 現状保存を軸とし継承する棟と大胆な改修により用途転換を図る棟との対比によって、新旧の共存を表現しようとする意欲的な提案でした。

 立体街路という大胆な空間構成や生業と公営住宅を結びつけることなど、独自性のある試みとして評価されました。

提案書→https://www.pref.fukushima.lg.jp/uploaded/attachment/749180.pdf

髙濱小松ビルススタジオ設計共同体

 円をモチーフとしたランドスケープをベースに新たに共用棟を設け、外部に開いた構成と小商いを通じて人が集まる空間を丁寧に検討している提案でした。

 「公園に住む」というイメージをもとに、南側から住棟へのアクセスを可能にしながら2棟を取り込むように計画された外部空間や、現存している建築当時の部品を愛でるという考え方のほか、災害対応も想定している点など、地域のシンボルとして新しい場をデザインしている点が評価されました。

提案書→https://www.pref.fukushima.lg.jp/uploaded/attachment/749181.pdf

ナノメートルアーキテクチャー

 EVを設置し2棟をつないだブリッジと温浴施設を中心に新しい居場所づくりに取り組んでいる提案でした。

 バリアフリー化と住戸タイプのバリエーションや組み合わせにより、多様なライフスタイルの受け皿になる点が評価されました。

提案書→https://www.pref.fukushima.lg.jp/uploaded/attachment/749182.pdf

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