記事のポイント
スタンレーは大ヒットした「クエンチャー」への依存から脱却するため、バッグや新型ボトルなど新カテゴリーへ進出し、水筒ブランドからライフスタイルブランドへの転換を進めている。
競争が激化するなかでも、新商品の販売は好調に推移しており、スポーツパートナーシップや男性向け施策を通じて新たな顧客層の開拓を強化している。
日本や韓国、中国を含む海外市場が成長を牽引しており、関税や消費減速といった課題に対応しながらグローバル展開を加速させている。
鮮やかなカラーバリエーションと限定のコラボレーションを持って、スタンレー(Stanley 1913)の「クエンチャー(Quencher)」タンブラーは、2020年代前半の「イット・プロダクト(社会現象的な大ヒット商品)」となった。そして2026年現在、同社はさまざまな領域への拡張を通じて、自社が単なる一過性のSNSで爆発的に流行したウォーターボトル以上の存在であることを証明しようとしている。
スタンレーは現在もクエンチャーの販売を継続しているが、2024年にはトートバッグやクーラーボックスといった布製・軟質製品の分野に進出した。これは、アクセサリーブランドとしての地位をより確固たるものにするための戦略である。2月半ばから4月半ばにかけて、スタンレーは可搬性と収納性に特化した3つの新製品を相次いで投入した。
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バックパック、トートバッグ、シェーカーボトルのシリーズである「バイタライズ・コレクション(Vitalize Collection)」、ストラップが付いた非円形デザインのタンブラー「クラッチ・ボトル(Clutch Bottle)」、そしてランヤード(首掛け紐)付きの漏れ防止ボトル「フロウステイト・スプリング・ボトル(Flowstate Spring Bottle)」である。
さらに同社は、中東やアジア太平洋地域における海外事業の構築を進めるとともに、スポーツパートナーシップを強化することで、男性と女性の双方の顧客層を惹きつけようとしている。
「バイラルな成功の最中にあった2023年から2024年にかけて、会社が次の100年も成功し続けるためには、事業を多角化しなければならないことが極めて明白になった」。スタンレーの親会社であるPMIダブリュダブリュ・ブランズ(PMI WW Brands, LLC)のグローバルブランドプレジデント、マット氏はModern Retailのインタビューでそう語った。
「私たちは、現在そして未来に向けて、自らをライフスタイルブランドとして真に強固なものにしようとしているのだ」。
実用的な魔法瓶からインフルエンサーの必需品へ
1913年に誕生したスタンレーは、これまでに何度も時代に合わせた変革を繰り返してきた。もともとは実用本位の魔法瓶会社として設立され、昼食やコーヒーを持ち歩きたい米国の労働者のあいだで人気を博した。20世紀後半になると、ハイカーやランナーの冒険に寄り添うアウトドア企業として知られるようになる。
そして2020年以降は、インフルエンサーや若い消費者のあいだで支持を集める水分補給のブランドとして急成長を遂げた。2026年の現在、同社は旅行文化やカフェ文化のトレンドを捉え続け、さらにもっとも多くの買い物客を勝ち取るために動いているとマット氏は言う。
マット氏によると、これまでのところ、外出先で使える漏れ防止の製品群が主要な成長機会になっているという。消費者が水やコーヒー、抹茶、さらには食事そのものを持ち歩きたいと考えているからだ。「消費者を観察し、彼らがどのような生活を送っているのか、そして日々のルーティンのなかで水分補給や飲食がどのように現れるのかを理解することに努めている」と同氏は明かした。
「テールゲート(車の荷台を囲んだ屋外パーティー)に行くときであれ、ヨガスタジオにいるときであれ、人々の体験をより良く、より簡単に、よりシンプルに、そしてもっとも楽しいものにすることをめざしている」。
激化する競合とD2C売上高の乱高下 市場調査データが示す現状
スタンレーによるこれらの投資は、飲料容器セクターが急速に変激するタイミングで行われている。パンデミックのあいだに同社の売上高は急増し、2019年の7300万ドル(約115億円)から2023年には約7億5000万ドル(約1185億円)にまで達したものの、米国内におけるD2Cの売上高は変動を繰り返している。
消費者の購入行動を追跡するコンシューマー・エッジ(Consumer Edge)のデータによると、スタンレー製品の米国D2C支出は2022年に300%以上の成長を記録したものの、2025年には約20%減少した。
コンシューマー・エッジのリサーチ&マーケットインテリジェンス担当シニアバイスプレジデントであるマイケル氏によると、2026年に入ってからのスタンレーの米国D2C売上高は乱高下しており、第1四半期は前年同期比で増加したものの、第2四半期は前年同期比で減少しているという。オワラ(Owala)やイエティ(Yeti)、ハイドロフラスク(HydroFlask)といったブランドが顧客の獲得を競い合っており、競争は極めて激しいと同氏は説明する。
コンシューマー・エッジの推計では、現在のウォーターボトル市場における米国D2Cのシェアのうち、スタンレーは約30%を占めており、もっとも勢いがあるのは25歳から54歳の消費者層であるという。
「服に合わせる水筒」へ
もっとも、マット氏によると、スタンレーの最近のイノベーションは消費者の強い需要を捉えているという。特に「フロウステイト・スプリング・ボトル」は好調で、同社によると、発売初週の小売パートナーにおける消化率は22%、D2Cにおいては50%に達した。
「クラッチ・ボトル」は、「当社が文化的な関連性を維持できていることを示す、おそらくもっとも優れた事例だ」とマット氏は語り、その多様なカラーバリエーションや持ち運びやすいストラップの存在を指摘した。「自分のコーディネートに合わせてボトルを選ぶようになるのだ」。
コアな消費者層だけでなく、新しい顧客層に向けて発信していくこともブランドにとって重要になりつつある。近年、スタンレーの顧客層は若年層や女性に偏っていたが、男性消費者は「より直近のターゲット」であるとマット氏はいう。
スタンレーはこの目標を達成するためにスポーツ領域に注力しており、欧州のサッカーチームであるアーセナル(Arsenal)やユヴェントス(Juventus)、さらにはレオ・メッシ、ケイトリン・クラーク、ネリー・コルダ、コリン・モリカワといったトップアスリートたちとコラボレーションを展開している。5月には、ワールドカップ(World Cup)の時期に合わせて、7種類の限定版サッカンブラーを投入した。

Image via Stanley 1913
これらスポーツに関連したローンチは、「すでに当社を愛してくれている女性アスリートたちを刺激するだけでなく、スポーツに関わりのある領域にいる男性アスリートや男性消費者に対して、ブランドを新しく導入、あるいは再認知してもらうためのものでもある」とマット氏は述べている。
一方、海外市場は「今後数年間で[スタンレーにとって]おそらくもっとも急速に成長する領域になるだろう」とマット氏は語る。同社は、米国文化とつながりがありつつ、サステナブルな製品や水分補給に対して高い親和性を持つ市場に目を向けている。現在はイギリス、ドイツ、スペイン、フランス、日本、中国、韓国、オーストラリア、ニュージーランドでの拡大に注力している。海外での成長は「過去おそらく12カ月から18カ月のあいだ、当社の最大の成長分野であり続けている」とマット氏はいう。
しかしながら、スタンレーが拡大を続けるなかにはいくつかの課題も存在する。ドリンクウエア空間での競争激化に対処することに加え、スタンレーは自由裁量所得を持つ顧客を対象としているため、ガソリン価格の高騰を受けて予算を注視している層の影響を受けるものがある。さらに、同社製品の多くがリサイクルステンレス鋼でつくられているため、最近の関税問題にも直面してきた。
「現実問題として、関税への対応は一筋縄ではいかなかった」とマット氏は語る。「私たちがどのようにビジネスを構築してきたか、そして関税の導入前、導入中、導入後において何が成功を支えてくれたかといえば、それは世界中に柔軟で機敏、かつ強靭なサプライチェーンを構築している素晴らしいチームが存在することだ」と同氏は続けた。「私たちは、どのような環境であっても成功を収められる体制が整っていると確信している」と締めくくった。
[原文:Brands Briefing: Stanley 1913’s next era focuses on storage, international growth and sports]
Julia Waldow(翻訳・編集:杉本結美)
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