2026年6月8日 午前7時30分

 【論説】インバウンド(訪日客)の少なさが課題となっている福井県の中で、敦賀市のゲストハウスに多くの外国人観光客が集まっている。興味深いのは、客の多くが敦賀を目的地ではなく、関西などの周辺観光地へ赴くための「宿泊ハブ(拠点)」にしている点だ。宿泊費が高騰する都市部のホテルを敬遠しているとみられ、交通の結節点である敦賀の地の利が生かされている形だ。

 このゲストハウスは「ほぼ家」(同市相生町)。築150年超の建物を現代風にリノベーションし2024年12月にオープンした。開業時からインバウンドを照準に、世界最大級の旅行予約サイトでのみ予約を受け付けている。

 最大収容人数は20人程度と小規模だが、オープンから現時点までの1年半ほどで世界65カ国から5千人を超す海外客が宿泊している。昨年の県内全体の外国人宿泊者数は延べ11万人余りとなっており、健闘ぶりがうかがえる。

 背景には京都や金沢などの都市圏で宿泊需要が逼迫(ひっぱく)し、料金が高騰している現状がある。ほぼ家の魅力は、1泊5千円台からという手頃さに加え、鉄路や高速道路、北海道へのフェリー航路も備えた敦賀の交通の利便性だ。大きな荷物を置いたまま各地へ赴きやすい「穴場」として、海外のSNS上で情報が拡散している。人気は加速しており、これまでの訪日宿泊客5千人のうち、千人はここ2カ月ほどで積み上げた数字だという。欧州からの客が中心だ。

 市内ではこのゲストハウス以外にも県外資本が手頃な価格で宿泊できる施設のオープンを検討しているという話もある。行政や観光業界は、こうした動きに機敏に反応してほしい。

 県内では新幹線開通に前後して、駅周辺の施設が着々と整備されている。観光の受け皿を整える上でこうしたハード面の整備は不可欠だが、それだけで多様化する旅行者のニーズをつかみきれるわけではない。外国人旅行者の誘客に成功している県外の先進地が示すように、大切なのは旅行者が求める価値の提供だ。

 県内の訪日客が伸び悩む現状において、今回の敦賀市の現象は、外国人観光客増加の可能性を探るヒントになるのではないか。単なる「宿泊の場」で終わらせず、地域の回遊性を高めて消費の増加に結びつけたい。ゲストハウスと連携しながら、敦賀の魅力を知ってもらう仕掛けを模索する必要がある。

Share.