ながさき 一生

魚で社会を調える人/さかなプロダクション 代表取締役 フェロー/一般社団法人さかなの会 理事長/東京海洋大学 非常勤講師

なぜ外国人は日本で寿司を食べたがるのか。寿司にまつわるビジネスに詳しいながさき一生さんは「世界的な魚介消費の伸びや和食のユネスコ無形文化遺産登録に加え、自国の寿司と日本との間にある圧倒的なクオリティと価格の差が背景にある」という――。


※本稿は、ながさき一生『最強の寿司ビジネス』(中公新書ラクレ)の一部を再編集したものです。


軍艦巻きや握り寿司の盛り合わせ

写真=iStock.com/ma-no

※写真はイメージです



寿司はなぜ老若男女に愛されるのか

寿司ほど、世代や国境を越えて愛される料理はありません。子どもが回転寿司で目を輝かせ、働き盛りの会社員がランチで握りを頬張り、年配の方が祝いの席で寿司桶を囲む。


日本では、寿司が「特別なごちそう」でありながら「日常の食事」としても定着しています。この“ハレとケ”の両方に存在できる懐の深さこそが、寿司が人気であり続けている大きな理由の一つといえるでしょう。


このように老若男女に愛され続ける理由はまだまだあります。


第一に、寿司には「究極のシンプルさ」がある点です。魚と米、そして酢。大きく言えばわずか三つの要素から成り立つ料理でありながら、無限の表現があります。


場合によって焼いたり煮たりもしますが、基本的には素材の良し悪しがそのまま味に反映されます。脂ののったマグロのトロ、すっきりした旨みの白身、弾力と甘みのある貝――その美しさと瑞々しさは、誰の舌にもわかりやすく届けられます。


「シンプルな料理ほど難しい」とよく言われますが、寿司はまさにその典型です。手を加えない分、素材の目利きと調和の技が問われます。


「好きな日本食ランキング」全世代で第1位

第二に、寿司は「健康的で安心感」がある点です。魚は良質なタンパク質に魚種によってオメガ3脂肪酸を豊富に含み、酢飯には抗菌作用や整腸効果があるといわれます。


ネタや形態も様々なため、それらを選んでいけば、子どもから高齢者までが安心して食べられます。


ホットペッパーグルメ外食総研の2024年調査によると、「好きな日本食ランキング」で寿司は全世代で第1位。20~30代では、実に8割以上が「寿司が好き」と回答しています。世代を超えて同じ料理を囲める背景には、寿司がもつ“健康と安心”のイメージがあるのです。


第三に、寿司は「多様性を受け入れる料理」である点です。江戸前の握り、関西の押し寿司、ちらし寿司、手巻き寿司、さらには海外で生まれたロール寿司まで――寿司は時代や地域の嗜好に合わせて姿を変えてきました。


その土地の米や酢、水、魚に合わせて自然に進化してきたことが、寿司の懐の深さを物語っています。「変わらない本質」と「変わり続ける柔軟さ」。この両立こそが、寿司が長く愛され続ける理由です。


Share.