沖縄を舞台とする、現状唯一のクラシックカーラリーが「Giro dell’Isola OKINAWA(ジーロ・デッリゾラ沖縄)」。その起案者であり、初回から実行委員長をつとめる矢口可南子さん曰く、「沖縄の美しい海と豊かな自然、琉球王国の時代からアジアの中心として独自の歴史・文化を育んできた沖縄の魅力を、ラリーイベントというかたちを通じて伝えたい」という熱い思いが込められているという。
【画像はこちらから】沖縄の美しい海や景色の中をクラシックカーたちが走り抜ける
第3回を迎えた今年は、3月20〜22日の三日間にわたり沖縄本島中部~北部を舞台として開催。その密着レポートを、ここにお届けさせていただきたい。
大会初日の朝、沖縄本島中部・恩納村にあるリゾートホテル「ハイアットリージェンシー瀬良垣アイランド沖縄」に集結したエントリー車両は、エントラント(参加者)で多くを占める首都圏や東海・関西圏在住者にとっては少々遠方である沖縄が舞台。ゲスト参加チームを含め総計16台の参加となった。
台数に対し、エントリー車両たちのユニークさは、日本のほかのクラシックカーラリーでは、なかなか見られない壮観なものだった。
残念ながら、第2回に登場した「日産P510ブルーバード・クーペ1800SSS」や「日産PAO」のような国産クラシックカー/ハチマルクラシックの出場は今回見られなかったものの、古くは1960年式および67年式の「アウトビアンキ・ビアンキーナ」や二台の「ポルシェ356C/SC」にはじまり、ゲスト参加車両を除けばもっとも年式が新しいのは1989年型の「ポルシェ911スピードスター」。でも今回とくに目を惹いたのは、沖縄には驚くほどに良く似合うアメリカンなクルマたちである。
1967年式「ACシェルビー・コブラ427」に端を発し、同年式の「フォード・マスタング・ファストバック」、1970年型「ダッジ・チャージャー」に71年式「シボレー・カマロ」など、ハリウッド映画でおなじみのアメリカ車がスタートに並ぶ。
くわえて、驚くほどに長くて豪奢な1979年式「リンカーン・タウンカー」、正真正銘の払い下げ軍用車である1985年式「AMゼネラル・ハンヴィ(HMMWV)」など、現在の日本では超レアとなったクルマたちが続々とスタートし、行く先々で遭遇した地元の方々やギャラリーたちの歓声を受けることになったのだ。
さらには、このイベントでは第一回からの常連である1988年式「フェラーリ・テスタロッサ」や、若きオーナー夫妻が入手直後にラリー参加に挑戦したという1980年式「モーガン+8」など、国内のクラシックカーラリーでは定番ともなっている名車たちもエントリーして、イベントを大いに盛り上げていたのだ。
そして、これら名車たちにドライバー/コ・ドライバーとして登場する二人組のエントラントも、夫婦ペアや親子ペアなど多種多様。いずれの方々も個性的で素敵な人たちばかりで、沖縄という素晴らしいロケーションをとても楽しみにされているご様子であった。
沖縄を満喫できる美しいルートで構成された三日間
冒頭に述べたオーガナイザーの目的を満たすため、今年も走行ルートは沖縄の風光明媚な景色を存分に楽しめるよう、三日間ともに極上のロケーションが選りすぐられていた。
まず初日は、前泊および前夜祭の場でもあった恩納村・瀬良垣から仮スタート。その直後にラリーの要である「P.C.競技(一定区間の通過タイムを0.1秒単位で競うもの)」が、恩納村内の大型スポーツ施設「赤間総合運動公園」で行われた。
そのあとは「北谷フィッシャリーナ中央広場」にて、観衆に見送られながら正式なスタートセレモニーが行われたのち、「読谷村村営図書館」の芝生広場で車両展示。さらに沖縄古来の陶芸が行われている読谷村「やちむんの里」では、新造されたばかりの古代窯を見学するなど、魅力的な立ち寄りも用意されていた。
明けて二日目となる土曜日は、朝から時おりの雨に見舞われる、ちょっと残念な天候となってしまう。それでもP.C.競技が随所で行われたほか、近年人気の観光スポット「又吉コーヒー園」にてスタンプ&コーヒーを提供。また、太古の自然を感じさせる「やんばる(山原)」地域を一望できる「アスムイハイクス」がランチ会場とされる。
その後は大海を横目に走り、宿泊地となったヒルトン北谷沖縄リゾートに帰着。この夜にはガラ・ディナーが開催され、沖縄料理をアレンジした美味しいビュッフェ形式の食事が提供される。また、北谷町の花火を間近で堪能したあとには沖縄民謡「エイサー」の迫力ある実演から、最後はエントラント/スタッフも含めた全員で民族舞踊「カチャーシー」を踊りつつ、夜は更けていった。
そして最終日となる三日目は、今回初の朝から快晴。南国の日差しが熱く感じられる。この日は、北谷から沖縄半島を横断するかたちで東部海岸にわたり、左右を海に挟まれた「海中道路」を経てクルマで行ける離島、伊計島に到着。レジャー施設「AJリゾートアイランド伊計島」にて、これまたユニークなカートによるP.C.競技を展開したのちに再び北谷へと戻り、ここで感動のゴールセレモニーとなった。
「ジーロ・デッリゾラ沖縄」で特筆すべきは、三日間ともに走行ルートの美しさが国内イベントでは最高ランクに属することである。シーサイドコースが多くを占める沖縄の大動脈、国道58号線が今回の設定ルートでも基幹となっていたのだが、それ以外の内陸部に入っても、遠目に大海が視界に飛び込んでくる。また、やんばるの森の中を駆け抜けるなど、あらゆる設定ルートを走っても、いかにも沖縄らしく美しいシーンが眼前に広がる。
くわえて、市街地以外では信号がきわめて少なく、当然ながら渋滞とは無縁に近いコース設定が功を奏したのか、クラシックカーにとっても快適なドライブ環境だったことも相まって、三日間のラリーでは大きなトラブルに見舞われることもなく、日曜日午後には北谷フィッシャリーナ中央広場のゴールに、エントリー車両とドライバー/コ・ドライバーたちが、日焼けした笑顔いっぱいで戻ってきたのだ。
ちなみに筆者は「Giro dell’Isola OKINAWA」を2023年の第一回から取材し、その楽しさを国内最上級のものと見なしてきたが、その感想は三年目にしていっそう強まった。
ホテルや食事などのホスピタリティはゴージャスかつ洗練されているかたわら、さまざまな場面で主催チームの暖かい心遣いが感じられる。そしてこの感想は、表彰式で屈託のない笑顔を見せていたエントラントたちとも、間違いなく共有できていたようだ。
イベント名として掲げられた「Giro dell’Isola」とは、この種のラリーの本場、あるいは聖地とも言うべきイタリアの言葉で「島巡り」を意味するという。
「美ら(ちゅら)島」と呼ばれる沖縄での島巡りをクラシックカーラリーとしたこのイベントは、日本国内においても唯一無二のものと確信しているのだ。
Nostalgic Hero 編集部
