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エコノミスト、「日本成長戦略会議」有識者メンバー
米中対立が激化するなか、日本はどう対応すればいいのか。エコノミストで日本成長戦略会議の有識者メンバーの会田卓司さんは「地政学上のリスクを考え、官民ともに中国依存を軽減しようとする動きが活発化している。しかし、巨大な中国市場から完全に撤退することは難しく、基幹産業の依存度をできるだけ低下させていく戦略が不可欠だ」という――。(第2回)
※本稿は、会田卓司『サナエノミクス 高市成長戦略』(ワック)の一部を再編集したものです。

中国共産党総書記の習近平氏(写真=FinnishGovernment/CC-BY-4.0/Wikimedia Commons)
米中対立の背景にある「トランプの焦り」
――トランプ大統領は中国封じ込めを狙いたいけれど、レアアースの問題などもあって、強くは突き放せないのではという見方もありますが。
それは中国も同じです。国内需要が足らないので海外に向かわざるを得ない。しかし世界最大の需要創出国は米国であり、米国の需要から完全に切り離されたら、中国は深刻なデフレ不況になってしまう。しかし、G7各国が20年間官民連携でしっかり投資しなかった間、中国は積極的に投資に邁進まいしんし、驚異的な発展を遂げてきました。
特にこの20年間、ITやAI技術を含めたデジタルの分野で驚くべき進歩を成し遂げています。EVを先頭に、官民あげてAI関連も含めた先端産業に莫大な投資をしたら、たまたまテクノロジー進歩が急激に加速する局面に合致し、飛躍的に国力を増してきました。
それは米国にとっては国家安全保障の危機です。したがってトランプ大統領は対中国政策として製造業を復興させることを目指し、関税政策を打ち出したのです。しかし中国にレアアース禁輸をちらつかされて、米国の態度は軟化してしまいました。
でもその反面、トランプ関税は、米国の製造業復活のための資金集めという側面もあるようです。やはり中国を抑え込むことよりも、自国が上に行く方法を考えるのが米国という国です。
中国とロシアを周りから封じ込めたい
現状では中国を押さえ込むのは無理だと感じたら、今後、中国が膨らむ速度を抑え、自国を強くしようとする方策に出た。これこそ米国流の自国第一主義、あるいはトランプ流のリアリズムなのかもしれません。
トランプ政権は、ベネズエラとイランに攻撃を行いました。中国が原油の輸入で依存している国々です。南米と中東の政治情勢が安定すれば、欧州、インド、日本と合わせて、中国とロシアを地政学的に封じ込めることができると考えているのかもしれません。
世界地図を見れば、欧州、中東、インド、東南アジア、台湾、日本とつなげば、中国とロシアを封じ込める半円ができ上がります。北からの脅威に備えるため、トランプ大統領はグリーンランドの領有を主張しています。すべては対中国に向けた国家安全保障戦略で読むことができるかもしれません。
たとえ、高市政権の経済政策が成功しても、日本が直ちに中国を追い越すことはできないでしょう。ただ、少しでも近づいておかなければなりません。そのために成長カーブを描ける環境をつくることが重要です。そして、中国に過度に依存しない強靭なサプライチェーンを構築しなければなりません。
