4月27日に開館した「奈良監獄ミュージアム by 星野リゾート」(4月20日の内覧会にて撮影)
「星野リゾート」による国の重要文化財「旧奈良監獄」(奈良市)を活用した日帰り施設「奈良監獄ミュージアム」が4月27日に開業した。監獄の歴史や役割が多角的に紹介されており、自由や人生について考えさせられる内容となっている。
■「美しき監獄からの問いかけ」がテーマ
今年6月に開業予定のラグジュアリーホテル「星のや奈良監獄」に先駆け、同じ敷地内にオープンする「奈良監獄ミュージアム」。歴史的建造物の保存と継承を図るとともに、新たな奈良のアイコンを目指し、ミュージアムとして一般に開かれる。
4月27日に開館する「奈良監獄ミュージアム by 星野リゾート」(4月20日の内覧会にて撮影)
コンセプトは「美しき監獄からの問いかけ」。有名企業のコーポレートアイデンティティや、NHK Eテレ『デザインあ』などを手掛けるアートディレクター・佐藤卓氏と、世界の美術館の常設展示デザインをおこなうアドリアン・ガルデール氏が監修している。
「奈良監獄ミュージアム」トークセッションにて、(左から)館長の八十田香枝氏、佐藤卓氏(4月20日・奈良県奈良市)
■「奈良監獄」をはじめ監獄の歴史と建築を語る【A棟】
ミュージアム内は「A棟」「B棟」「C棟」の3つの展示エリアと、かつて受刑者たちが過ごした独房のある「保存棟」、「ショップ&カフェ」で構成。
【奈良監獄ミュージアム】中央の見張台から放射状に舎房が伸びる「ハヴィランド・システム」がわかるフォトスポットも(4月20日の内覧会にて撮影)
A棟は「歴史と建築」をテーマに、奈良監獄の歴史と建築についての展示を、8つのセクションに分けて解説。奈良監獄が歩んできた歴史の年表や、奈良監獄で服役していた受刑者たちが作ったレンガ、奈良少年刑務所時代の歩みなどが紹介されている。
【奈良監獄ミュージアム】A棟の展示(4月20日の内覧会にて撮影)
また、奈良監獄の模型展示では、1/420スケールで建物の象徴的なデザイン「ハヴィランド建築」の全体を観察できる。全体を見ることで、効率よく監視ができる構造となっていることが分かる。
【奈良監獄ミュージアム】A棟、明治五大監獄の模型(4月20日の内覧会にて撮影)
奈良監獄の模型のほか、明治五大監獄の模型も。それぞれのデザインの違いが一目で分かるほか、これらの監獄の整備により、明治政府が日本を法治国家として国際的に認めさせ、不平等条約改正を見据えていたことなどを学ぶことができる。
■ 刑務所でのくらしを、デザインを通じて表現する【B棟】
「規律とくらし」をテーマに、一般的な刑務所での暮らしやルールについて、受刑者の目線で日常を紐解くB棟。「導入」の部屋では、入所時に支給されるものや頭髪の規律など、刑務所に入所した際の流れが紹介されている。
【奈良監獄ミュージアム】B棟「規律の部屋」(4月20日の内覧会にて撮影)
また「食事」の部屋では、各監獄の献立や食器が展示されるなど、地域ごとの違いが可視化されていておもしろい。
【奈良監獄ミュージアム】B棟「食事の部屋」(4月20日の内覧会にて撮影)
【奈良監獄ミュージアム】B棟「食事の部屋」(4月20日の内覧会にて撮影)
そのほかにも、「規律」「衛生」「作業」「お金」など各部屋のテーマに沿って、普段は見ることができない刑務所での暮らしが、佐藤卓氏らしい目線でグラフィカルに紹介されている。自分たちの生活と照らし合わせながら、自由について改めて考えるきっかけになりそうだ。
【奈良監獄ミュージアム】B棟「衛生の部屋」(4月20日の内覧会にて撮影)
【奈良監獄ミュージアム】B棟(自由の部屋)(4月20日の内覧会にて撮影)
■ 5組のアーティストと受刑者によるアートで構成される【C棟】
C棟では「監獄とアート」をテーマにしたギャラリーを展開。「罪と罰」「時間と命」などをテーマに、5組のアーティストによる作品が並ぶ。
【奈良監獄ミュージアム】C棟展示作品(西尾美也「声を縫う」)(4月20日の内覧会にて撮影)
展示室に入って最初に出合うのは、大きな1枚の布で作られた奈良出身のアーティスト・西尾美也氏による「声を縫う」。受刑者たちが書いた詩を、ワークショップで200人もの人たちが刺繍し、それらをランダムにつなげた作品だ。布に刻まれた言葉から、さまざまな感情が伝わってくる。
【奈良監獄ミュージアム】C棟展示作品(西尾美也「声を縫う」)(4月20日の内覧会にて撮影)
そのほか、服役した実体験に基づき獄中生活のリアルを描いた漫画家・花輪和一氏による「刑務所の中」、三田村光土里による「過ぎてゆく部屋」など、監獄をさまざまな手法で表現したアートを通して、新たな視点から監獄について考えることができる。
【奈良監獄ミュージアム】C棟展示作品(キュンチョメ「海の中に祈りを溶かす」)(4月20日の内覧会にて撮影)
また、「刑務所アート展」の応募作から、受刑者たちが自主的に手がけたアートや書道、文芸作品などの展示も。
【奈良監獄ミュージアム】C棟展示作品(刑務所アート)(4月20日の内覧会にて撮影)
「むすびの部屋」では締めくくりとして、ミュージアムを通して感じたことを振り返り、言葉にして綴る『プリズン ポスト カード プロジェクト』を実施。投函されたカードは展示されるほか、実際に刑務所へ届けられる予定となっている。
【奈良監獄ミュージアム】C棟展示作品(むすびの部屋)(4月20日の内覧会にて撮影)
■ 受刑者が過ごした独房も、一部がミュージアムとして公開
主に宿泊エリアとして使用されている「舎房(受刑者たちが過ごす部屋)」が、事前予約限定でミュージアム来訪者も一部見学できる。公開されているのは放射状に広がる「ハヴィランド建築」の中心に位置する「第三寮」。
ハヴィランドの中心に位置する「第三寮」が保存エリア(4月20日の内覧会にて撮影)
重要文化財に指定された当時の姿をそのまま残しており、受刑者たちが過ごした空間がそのまま残されている。一部の部屋には入ることができ、そこで過ごした人の人生や自分の人生などを深く考えさせられる。
【奈良監獄ミュージアム】保存エリア「第三寮」(4月20日の内覧会にて撮影)
■ ショップ&カフェでは限定フードやグッズが勢揃い
「ショップ&カフェ」では、奈良監獄を象徴する赤レンガを模した「レンガカレーパン」(600円)や「チーズケーキ1908」(600円)などの飲食が可能。
【奈良監獄ミュージアム】カフェで購入できる「レンガカレーパン」(600円)など(4月20日の内覧会にて撮影)
また、ショップでは奈良監獄の建築美を収めたポストカードやマグネット、ファイルなどのミュージアム限定グッズをはじめ、アートディレクターの佐藤卓氏が選りすぐった刑務所作業製品の購入ができる。
【奈良監獄ミュージアム】ミュージアムショップのグッズ(4月20日の内覧会にて撮影)
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「奈良監獄ミュージアム」は4月27日開業。料金は大人2500円から(奈良県民は2000円)。公式サイトでの事前予約を推奨している。営業時間は9時〜17時(最終入館16時30分)。直通バスで「奈良監獄ミュージアム前」下車、徒歩約1分。
取材・文/野村真帆 写真/Lmaga.jp編集部
