
茨城県は2026年5月11日から、外国人を不法就労させる事業者に関する通報報奨金制度を全国で初めて導入する。不適切に外国人を雇用する事業者の情報を県が受け付け、摘発につながった場合に通報者に1万円の謝礼を支払う仕組みだ。不法就労を防ぐ目的の報奨金制度は出入国在留管理庁が入管難民法に基づき運用しているが、自治体が独自に設けるのは全国で初めてという。
県内では不法就労外国人が4年連続で全国最多を記録し、特に農業分野での集中が深刻化している。制度をめぐり、法令遵守を求める称賛の声が上がる一方、人権団体からは差別助長や社会分断を懸念する批判も出ている。
制度の詳細と運用方法
茨城県の通報報奨金制度は、不法就労の温床となっている事業者を直接対象とする点が特徴だ。通報は県労働政策課のホームページから行い、匿名は不可で個人情報と身分証明書の写しを提出する必要がある。県が事実確認を行い、不法就労が認められた場合には県警に通報する流れとなる。摘発が確定した場合、通報者に一律1万円の謝礼が支払われる。
対象は不法就労者を雇用する事業者で、外国人労働者個人を直接通報するものではない。県は誤用防止のため、身分証明書の提出を義務付けている。大井川和彦知事は違法行為への是正措置であり、差別や偏見を助長するものではないと強調。制度は2026年度予算に計上され、準備が整い次第速やかに開始される方針だ。出入国在留管理庁の制度は、不法滞在や不法就労の外国人個人に関する情報提供に対し、退去強制令書発付時に最大5万円の報償金を交付可能としている。
ただし2021年から2025年までの交付実績はゼロに近く、茨城県の制度はこれを補完し、雇用主側に焦点を当てた独自の取り組みとなっている。県は事業者対象とすることで不法就労の根本原因に直接アプローチすると説明している。
茨城県の不法就労実態
茨城県の不法就労問題は深刻だ。出入国在留管理庁のデータによると、県内不法就労者は4年連続で全国最多を記録。農業従事者が約7割を占め、野菜生産が盛んな県の特性が背景にある。
国籍別ではタイ人が約半数を占め、ベトナム人やインドネシア人が続く。失踪技能実習生がブローカー経由で農業現場に流入するケースが目立つ。鉾田市などでは不法就労者の集積地化が進み、直近5年間の外国人犯罪摘発数はピーク時比で45パーセント増と、全国減少傾向の中で県内だけが突出している。
県は首都圏の食料供給基地として人手不足が慢性化。正規雇用負担が高い一方、繁忙期のみ安価で働く不法就労者に頼る事業者が存在する構造的な課題を抱えている。
制度導入の背景と県の狙い
茨城県が制度導入に踏み切ったのは、不法就労が地方社会の秩序を根底から揺るがす深刻な問題と位置づけているためだ。大井川知事は不法就労の蔓延は外国人の適正雇用秩序を破壊すると指摘。県民からの意見では、外国人増加に伴う治安不安や不法就労への懸念が多数寄せられている。従来の行政指導や啓発だけでは限界があると判断し、市民参加型の通報制度を導入。適正雇用推進宣言制度の創設や業界団体との連携も並行して進める。
県は不法就労者を雇わない、雇わせない、見過ごさないをスローガンに掲げ、外国人労働者約6万1000人を超える県内で法令遵守を徹底する姿勢を示している。
ネット上の称賛の声
制度発表後、XなどのSNSでは称賛の声が相次いでいる。茨城県素晴らしい、他県も追随すべきとの意見が主流だ。事業者対象に限定している点を賢い設計と評価する声もある。
全国展開を求めるコメントも多く、茨城だけでは他県に迷惑がいく、全国的にやってほしいとの指摘が目立つ。報奨金1万円については実効性が高い、摘発につながれば効果的との肯定的な反応が広がっている。県民からは地方社会を揺るがす問題に行政が対応するのは当然との支持が集まっている。
人権団体からの批判と県の反論
一方、茨城県弁護士会は会長声明を発表し、外国につながる人々に対する過剰な偏見と差別を生み、社会の分断を招くと撤回を求めた。在留資格の判断は専門的で、第三者による通報は偏見に基づきやすいと指摘している。外国人人権法連絡会など11団体も共同声明を出し、密告を奨励し相互監視社会を生む、正規在留外国人にも疑いの目が向けられると批判。
在日本大韓民国民団県本部も撤回要望書を提出した。人権団体は技能実習制度の課題や人手不足の構造的問題を放置した罰則強化では根本解決にならないと主張している。これに対し大井川知事は記者会見で違法行為の是正が差別や偏見を助長するという主張は成立しないと反論。
国にも同様の制度がある点を挙げ、なぜ茨城県だけが批判されるのか論理的でないとの見解を示した。県は不法就労の是正は人権保護そのものと強調している。茨城県の通報報奨金制度は、農業を中心とした不法就労問題に正面から取り組む全国初の試みだ。
5月11日の開始後、通報件数や摘発効果、社会的影響が注目される。法令遵守と外国人との共生を両立させるため、運用実績を踏まえた丁寧な周知と説明が求められそうだ。