イスラエル・テルアビブ(CNN) 式典の開催場所は直前まで秘密だった。暴力や嫌がらせを恐れ、上映会の会場は事前に登録を済ませた参加者のみに知らされた。それしか開催する方法がなかったと主催者は打ち明ける。

数十年におよぶ衝突と、2年以上続いた戦争の地。イスラエルとパレスチナの双方から参加者が集い、イスラエルの追悼の日の前夜の20日夕、互いの悲しみと喪失を分かち合う年次追悼式典が開かれた。

今年で21年目になる合同追悼式典は、終わりの見えない衝突の中で、家族を失ったイスラエル人とパレスチナ人を結び付けている。

「痛みは1人の母親や一つの人々だけのものではありません」。イスラエルが占領するパレスチナ自治区ヨルダン川西岸ジェニンの住民クルード・ホシエさんはそう語った。ホシエさんは2023年1月に息子1人をイスラエル軍の銃撃で殺害され、もう1人はイスラエルで行政拘禁されている。

「これほどの喪失の中でも、私たちは平和への道を選びました。血は血を招くだけだからです」。ビデオメッセージの中でホシエさんはそう続けた。

式典は、対話と和解を目指すイスラエル人とパレスチナ人でつくる二つの草の根団体が主催した。主催者によると、テルアビブの主会場にはユダヤ人とパレスチナ人約1000人が集まり、ヨルダン川西岸のエリコでも並行して式典が行われた。イスラエル国内や世界各地の上映会は、さらに数万人に届いた。

「私が今日ここにいるのは、ここに希望があるからです」。リオラ・エイロンさん(73)は2023年10月7日、ガザのイスラム組織ハマスに襲撃されたクファルアザの住民で、息子のタルさんを殺害された。「この場所は私に信じる力を与えてくれます。いつか私たちは声を上げられるようになる、そしていつかこれが終わると」

10月7日の襲撃事件の生存者で、クファルアザ・キブツ出身者のリオラ・エイロンさんが合同追悼式典でスピーチを行う様子/Alexi Rosenfeld/Getty Images
10月7日の襲撃事件の生存者で、クファルアザ・キブツ出身者のリオラ・エイロンさんが合同追悼式典でスピーチを行う様子/Alexi Rosenfeld/Getty Images

式典はヘブライ語とアラビア語で営まれ、2言語の歌やイスラエルとパレスチナの詩の朗読が行われる中、参加者が証言した。イスラエル入国を阻まれて参加できなかったヨルダン川西岸とガザのパレスチナ人は、録画したビデオメッセージを寄せた。

今回の戦争で家族を何人も失ったガザのナヒル・ハヌーナさんは「私たちパレスチナ人は、ほかのみんなと同じ人間です」「平和と自由の中で暮らして、恐怖に駆られることなく子どもたちを育てたいと思っています」と訴えた。

23年10月7日のハマスによる襲撃ではイスラエル人1200人以上が殺害された。続くイスラエルのガザでの戦争では、パレスチナ人7万2000人以上が殺害された。ここ数カ月はヨルダン川西岸で入植者による暴力が激化している。

テルアビブ大学が今年3月に実施した世論調査によると、ヨルダン川西岸のパレスチナ自治政府との交渉を支持すると答えたユダヤ系イスラエル人はわずか26%にとどまり、交渉を通じて今後数年以内に和平が実現するという回答は13%のみ。ギャラップがヨルダン川西岸と東エルサレムで実施した2025年の世論調査では、イスラエルとの恒久的な和平が実現するだろうという回答は23%にとどまった。

そうした状況の中、主催者はイスラエルの式典会場を非公開として厳重な警備を固め、オンラインでの参加希望者のために式典の様子を複数の会場に中継している。中には脅迫や妨害に遭った会場もある。

今年はベンヤミン・ネタニヤフ政権幹部とつながる右派活動家らが、テルアビブ南部に上映会場を設け、大音響の音楽を流して「左翼に死を」の叫び声を上げた。