山梨県警は2026年4月17日、警察情報を不正に入手し、その情報をもとに接触した男性を脅して、好意を抱いていた知人女性と別れさせようとしたとして、県内の警察署に勤務する30代の男性巡査長を書類送検し、停職6か月の懲戒処分としました。巡査長は同日付で依願退職しています。
何が起きたか
県警によると、この巡査長は2026年1月、不正に入手した個人情報をもとに県内の男性宅を訪れたほか、2月には複数回にわたり、男性の携帯電話に電話をかけて留守番電話へ脅迫的な内容を残していました。
留守番電話には、車確認。壊れてると思うよ、今日中に要求通り別れないとどうなるかな などの趣旨のメッセージが入っていたとされます。目的は、好意を抱いていた知人女性とその男性を別れさせることだったとみられています。
被害男性が警察署に申し出たことで事案が発覚しました。
問題となった行為
今回の件で特に重いのは、警察官という立場を利用して、業務とは無関係に警察情報を不正照会していた点です。県警によると、巡査長は業務中に計30回にわたり警察情報を不正に照会していました。
さらに、勤務時間中にも複数回、被害男性に電話をかけていたほか、男性の車の一部に石を叩きつけてへこませていたとされています。単なる個人的な感情トラブルではなく、職務上アクセスできる情報と立場を私的目的に流用し、脅迫や嫌がらせにまで発展した事案です。
原因
原因として見えているのは、警察情報へのアクセス権限を持つ職員が、その権限を私的な目的で使えてしまった点です。本来、警察情報は厳格な業務目的のもとでのみ照会されるべきものですが、今回の件では、個人的な感情を背景に不正利用されていました。
加えて、業務中の不正照会が計30回に及んでいたことから、アクセス権限の管理だけでなく、照会理由の妥当性確認や監査の実効性も問われる事案といえます。
県警の対応
県警は4月17日、この巡査長をストーカー規制法違反、強要未遂、個人情報保護法違反の3つの容疑で書類送検し、停職6か月の懲戒処分としました。
巡査長は県警の聞き取りに対し、間違いありません。被害者に対して大変申し訳ない と話しているということです。
県警の首席監察官は、県警職員がこのような事件を起こしたことは県民の警察に対する信頼を著しく失墜させるものであり、誠に遺憾 としたうえで、指導教養の徹底と再発防止、信頼回復に努める考えを示しています。
情報システム部門が見るべきポイント
今回の事案は、外部からのサイバー攻撃ではなく、内部権限の不正利用が重大な被害につながる典型例です。個人情報の保護では、外部侵入対策だけでなく、正規権限を持つ内部者による不正照会をどう防ぐかが重要です。
特に、閲覧権限の最小化、照会理由の記録、異常な照会回数の監視、定期監査、私的利用を前提とした牽制の仕組みが機能していなければ、今回のように業務データが個人的なトラブルに使われる危険があります。
警察に限らず、自治体、金融、医療、通信など大量の個人情報を扱う組織では、内部不正対策を形式的なルールで終わらせず、実際に不正利用を検知できる運用まで落とし込めているかが問われます
出典
「別れないとどうなるか」個人情報を不正入手し“恋敵”脅す 巡査長を懲戒処分 山梨
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投稿者:三村
セキュリティ製品を手がける上場企業にて、SOC(セキュリティオペレーションセンター)運営およびWebアプリケーション脆弱性診断の営業に8年間従事。その後、システムエンジニアへ転身し、現在はMDMや人事系SaaSの開発に携わる。
8年の実務経験と開発者としての知見を活かし、「セキュリティ対策Lab」ではダークウェブ調査、セキュリティインシデントの分析、および高度なセキュリティ対策解説の執筆・編集を統括しています。
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