兵庫県豊岡市の農業法人が、米国のアウトドア衣料メーカー「パタゴニア」と連携し、太陽光発電と農業を同時に行う「ソーラーシェアリング」に取り組んでいる。太陽光パネルの下で米などを栽培し、電力はパタゴニアが購入している。気候変動対策と生物多様性の両立に挑み、環境省の「自然共生サイト」に認定された。(熊谷暢聡)

ソーラーシェアリングの太陽光パネル(櫻井一平(C)2026Patagonia,Inc)ソーラーシェアリングの太陽光パネル(櫻井一平(C)2026Patagonia,Inc)

 農地の真ん中に支柱が立ち並び、上部に取り付けられた太陽光パネルが日差しを浴びて光っている。豊岡市三宅の農業法人「坪口農事未来研究所」が設置したソーラーシェアリング施設だ。パタゴニアの直営店やオフィスで使用される電力を発電し、パネルの下では水稲や野菜を栽培している。

ソーラーシェアリングについて説明する平峰さん(兵庫県豊岡市で)ソーラーシェアリングについて説明する平峰さん(兵庫県豊岡市で)

 パネルは角度を付けて取り付けることで遮光率を30%程度に抑え、パネル下の農作物の生育を妨げないように工夫している。坪口農事の事業部長、平峰拓郎さん(63)は「パネルの外と比べて収量はやや少ないが、売電収入があるので農業経営の安定につながっている」と説明する。

 坪口農事は水稲を中心に約35ヘクタールの農地を管理し、生き物との共生を重視する「コウノトリ育む農法」などを通じた環境負荷の低減に積極的に取り組んできた。ソーラーシェアリング事業は2019年に始め、農業用ハウスを含め、農地5か所に設置した発電所(223キロ・ワット)のうち、4か所はパタゴニア日本支社(横浜市)の投資で実現した。

 同社は、ソーラーシェアリング事業に関し、千葉県匝瑳市での取り組みに続いて参画した。電力の調達だけでなく、コウノトリ育む農法や有機農業などを通じ、温室効果ガスの排出削減や生物多様性の保全につながると判断したという。

 坪口農事などと共同で、民間の手で生物多様性が守られている地域を認定する自然共生サイトに申請した。自然共生サイトは、陸と海のそれぞれ30%以上を保全地域にするという国際目標の実現に向けて創設された制度で、ソーラーシェアリングの導入農地を含む8・85ヘクタールが昨年9月に認定された。

 水田を中干しする際に水生生物が退避できる溝(マルチトープ)を設けるなどの取り組みが認められたという。「環境再生」を掲げ、パタゴニアなどが創設した農業認証「リジェネラティブ・オーガニック認証」の取得も目指している。

 同社日本支社の担当者は「坪口農事とは環境に配慮した農法で私たちが向かっていこうとしている方向とビジョンが一致していた。他地域に展開可能なモデルだ」と強調。平峰さんは「環境や気候変動対策に貢献することで自分たちの生産物の差別化や高付加価値化にもつながる。環境に配慮した豊岡の農業をもう一歩前に進めたい」と話している。

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