近年、デジタル主権の問題は、米国のテクノロジー企業、特にMicrosoftに対する不信感を強める欧州連合(EU)の組織にとって、深刻な懸念事項となっている。その懸念の高まりを象徴する動きとして、Red Hatが独自のEU特化型プログラム「Red Hat Confirmed Sovereign Support(RHCSS)」を発表した。これは、米国企業として初の取り組みであり、重要なIT運用をEUの管理下にとどめることを保証するものである。

 RHCSSは、非EUのテクノロジープロバイダーへの依存を軽減し、データ、技術、運用に対する欧州の主権を強化したいという地域のテクノロジーリーダーの要請に応える形で設計された。この地域特化型モデルは、規制への対応にとどまらず、地政学的な圧力の変化から組織を守り、運用の回復力を高めることを目的としている。

 同プログラムの主な特徴には、年中無休で地域内に限定された技術支援、EU市民によって構成される認証済みのサポート要員、そして500社以上のEUクラウドパートナーによる強固なエコシステムが含まれる。サポート体制を欧州域内に固定することで、Red Hatは、クラウドやAIインフラを含むIT環境の近代化を進める組織に対し、EU規制への準拠を確保しつつ、自律性の向上、サプライチェーンの透明性、法域に基づくセキュリティの確保を支援する方針である。

 RHCSSの技術支援は、欧州を拠点とするマネージャーによって統括される予定であり、技術基盤には「Red Hat Enterprise Linux(RHEL)」と、より広範なオープンハイブリッドクラウドおよびAIポートフォリオが含まれる。これにより、組織はあらゆるソブリンクラウド環境において、現在および将来のIT展開の独立した導入・運用・維持が可能となる。

 Red Hatのシニアバイスプレジデントで欧州・中東・アフリカ(EMEA)担当ゼネラルマネージャーを務めるHans Roth氏は、「Red Hatは欧州のデジタル主権に対し、明確かつ具体的に投資している。欧州の組織は、自らのインフラに対する管理を必要としており、その管理は、それを支える人材から始まらなければならない。RHCSSを通じて、当社はエンタープライズ向けオープンソースソリューションに対し、EU市民が主導するサポートチームとワークフローを提供することで、このニーズに直接応えている」と述べた。

 この新サービスは、より広範な業界動向への対応でもある。SUSEをはじめとする他のLinuxベンダーも、EU域内の人材とインフラに重点を置いたソブリンサポートの提供を開始しており、これは金融、電気通信、公的機関といった規制対象セクターからの継続的な市場の声を反映したものである。これらのセクターは、EUのAI法、デジタルサービス法、データ法といった新たな規制の下で、より厳格な要件への対応を迫られている。

 実際、ここ数カ月で多くのEU政府機関が、Microsoftのソフトウェアやサービスからオープンソースソリューションへの移行を進めている。例えば、ドイツのシュレースヴィヒ=ホルシュタイン州は、オープンソースプログラムへの移行の一環として「Exchange」と「Outlook」の使用を中止した。これに続き、オーストリア軍、デンマークの政府機関、フランスのリヨン市なども、同様に同社からの脱却を図っている。

 Red Hatの最高技術責任者(CTO)でグローバルエンジニアリング担当シニアバイスプレジデントのChris Wright氏は、「デジタル主権を確保する唯一の信頼できる道は、オープンソースを通じたものである」と述べた上で、「当社の新製品は、顧客が自らの技術的な運命を掌握できるよう、オープンで透明性が高く、監査可能な基盤を、現地の専門知識と組み合わせて提供する」と説明している。

 RHCSSは、2026年初頭に提供開始予定である。同社は、この取り組みが、高度に規制された業界の顧客に対し、地域特化型のサポートソリューションを十数年にわたり提供してきた経験に基づいており、欧州におけるデジタル自律性と回復力への強いコミットメントを示すものであると強調している。

この記事は海外Ziff Davis発の記事を4Xが日本向けに編集したものです。

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