2025年10月7日 午前7時30分

 【論説】障害のある人たちで結成された鯖江市のバンド「ミックバラーズ」をモデルにした映画「きみの音が見えたとき」の製作が進んでいる。1980年代にバンドの演奏を聴き心動かされたタレントの八波一起さんが温めてきた企画で、エンターテインメント作品に仕上げる構想だ。音楽と多様性は世界に通じるメッセージであることから、海外での上映も視野に入れている。

 モデルとなったミックバラーズは、鯖江市の社会福祉法人「光道園」の視覚、知的障害の重複障害者9人で、1967年に結成されたバンドだ。全国で精力的に演奏活動した彼らは「奇跡の楽団」と呼ばれ、テレビの情報番組でも紹介されるなど注目を集めた。その歩みは舞台にもなり、2002年に県内でも上演されている。

 映画はバンドが結成された1960年代ではなく、現代が舞台となる。主人公は障害者施設でボランティアとして音楽を教える20代の女性で、光道園の元園長でバンドの生みの親である男性、山内進さんがモデル。障害者との共生という社会問題の提起にとどまらず、夢を諦めて故郷福井に戻った女性の奮闘と成長の物語として描かれるようだ。どのような作品に仕上がるのか楽しみだ。

 クランクインは来年の初夏から秋ごろを予定する。新進の若手俳優を主役に起用する方針であり、現在キャスティングが進められている。実際に障害のある人の起用も検討されているようだ。撮影は「オール福井ロケ」で行い、エキストラも県内で募集する計画。製作資金はクラウドファンディングで広く支援を呼びかけ、福井県や県内の自治体にも協力を要請している。

 福井を舞台とした映画であり、県民、行政それぞれができる方法で応援できないだろうか。応援は撮影場所の提供や資金の支援、エキストラとしての出演などに限らない。撮影に関する情報をSNS(交流サイト)で発信したり、完成後には映画館に足を運んだりと、普段の生活の延長線上で協力できることもあるはずだ。

 映画が福井の魅力発信につながるのは間違いないだろう。ただ、福井の観光名所や名産品の紹介にとどまるのでは寂しい。

 製作陣は、60年代に障害者バンドが誕生した福井県には多様性の精神が息づいていると考え、ミックバラーズを育んだ福井にこだわりたいと語っている。多くの県民が映画作りに関わることで、風土や県民の気質といった目には見えない福井の魅力が伝わる作品となってほしい。

Share.