長崎県内では山あいの地域を中心にコメの田植えが本格的に始まっています。
コメの価格が高騰するなか、中山間地の川棚町にある棚田が広がる地域でも田植えが行われていますが、高齢化などで思うようにコメを増産できない農家が出ています。

川棚町木場郷にある「日向の棚田」は、山あいを流れる川の両岸に石積みの棚田が広がっていて「日本の棚田百選」に選ばれています。

この棚田では先週から田植えが始まり、このうち10枚余りの田んぼでコメを作っている山中俊満さん(76)は6日から田植えを始めました。

山中さんは、水を張った扇形のような形の田んぼで、田植え機を操って何度も方向転換をしながら「なつほのか」という品種の苗を植えていました。

山中さんは20枚余りの田んぼを持っていますが、コメの価格が高騰するなかでも、高齢による体力の低下や人手不足などで半分ほどの田んぼにしか苗を植えることができず、思うようにコメを増産することができないということです。

山中さんは「コメが高くなっているので、本当は作付けを増やしたいのですが、棚田は作業効率も悪くて体力的にもそれができないのがジレンマです」と話していました。

県内の田植えは山あいの地域を中心に本格的に始まっていて、来月初めごろまで続く見込みです。

【主食用コメ増産の農家も】
コメの価格高騰を受けて、県内のコメ農家のなかには主食用の作付け面積を増やす動きも出ています。

県内最大のコメの産地、諫早市の農家の田川政明さん(40)は、およそ20ヘクタールの田んぼで主食用や飼料用などのコメを栽培しています。

田川さんの水田では、これまで主食用のコメは買い取り価格が低かったため、去年は作付け面積を12ヘクタールほどにとどめて、残りの田んぼで生産すると助成金が支払われる飼料用のコメを栽培していました。

しかし、コメの価格高騰を受けて、ことしは主食用の作付け面積を田んぼ全体のほとんどにあたるおよそ18ヘクタールに広げることにしています。

これにより、売り上げはこれまでよりも上がる見込みですが、肥料や農薬などの価格が高騰していることや、トラクターなどの機械の更新に費用がかかることから利益は多くないといいます。

田川さんは「主食用のコメを作るよりも、畜産の飼料用のコメを作って買い取ってもらい、国から助成をもらわなければ生活ができないのが現状だった。今やっとコメの価格が上がってきて、自分たちが主食用のコメ作りだけで勝負していきたいという状況になったので、できれば今のような価格で安定していってほしい」と話していました。

【長崎県内 コメの作付け面積は前年並みの見通し】
コメの価格高騰が続くなか、長崎県内でことし収穫される主食用のコメの作付け面積は去年とほぼ同じ水準の「前年並み」となる見通しです。

農林水産省はことし収穫されるコメの作付け面積について、ことし4月末時点で調査した見通しを発表し、全国の主食用の作付け面積は、当面、買い入れを中止している備蓄米向けのものも含めると、去年から6%近く増えて133万4000ヘクタールに上り、過去5年間で最大となりました。

都道府県別にみますと、備蓄米向けのものを除いた主食用の作付け面積は1%を超えて増加するのが34の道県、増減が1%以内の「前年並み」となるのが11の都府県、1%を超えて減少するのが2つの県と、去年よりも増える見通しの地域が多くなっています。

このうち、長崎県内でことし収穫される主食用のコメの作付け面積は9300ヘクタールと、去年とほぼ同じ水準の「前年並み」となる見通しです。

市や町ごとにみますと、1%を超えて増加するのが諫早市など5つの市や町、「前年並み」が雲仙市など12の市や町、1%を超えて減少するのが松浦市など4つの市や町となっています。

【専門家「作付け面積 増やすのも難しい」】
ことし収穫される主食用のコメの作付け面積について、全国的には多くの地域で増える見通しとなった一方で、長崎県では「前年並み」となる見通しだったことについて、農業政策に詳しい九州大学大学院農学研究院の渡部岳陽准教授は「コメの生産である程度経営を成り立たせていれば、主食用米の方を拡大して作付けしていこうという動きになると思うが、長崎県は大規模にコメを生産する経営体がないということと、平たん部が少なく傾斜地が多いということで、新たに作付けを増やそうと思っても、作業効率の面でなかなか難しい」という見方を示しました。

そのうえで「コメの価格が高くなっている一方で、燃料代や肥料農薬代、それに資材の値段も上がっている。例年に比べれば、コメによる所得が増える見込みは立ってきたと思うが、だからといって水稲の作付けを増やすことにつながるかは別の話だ」と述べました。