大きな岩の下からたくましく葉を広げて咲くタンポポは「怪力タンポポ」、コンクリートの割れ目から出てきて途中で直角に曲がった低木は「路上盆栽」――。アカウント名「路上園芸学会」のSNSには、道ばたの植物の写真とともにシャレの利いた一言が添えられている。
川沿いの柵にからまる木も気になる村田あやこさん 今年4月、東京都千代田区のJR神田駅。「路上園芸学会」の投稿者であるライターの村田あやこさん(41)は、鮮やかなグリーン色のコートを羽織って現れた。
一緒に歩き始めてすぐ、「マニア」の一面があらわに。「ここ見てください!」と指さした先には、レンガ造りの壁の下から顔をのぞかせたカタバミ。どこにでも生える雑草だ。でも、村田さんは「泥とホコリの多い場所で、この草がどうやって生きてきたのか。想像するだけでワクワクするんです」と声を弾ませた。 そう言われてあたりを見渡すと、街路樹の周りに誰かが植えたらしきアロエや、マンホールの穴からもさもさと顔を出す緑の存在にハッとさせられた。 「人工物ばかりの中で抑えきれない野性味があふれている。そんな路上の植物に、人間社会になじめない自分を重ねてしまうんです」。歩く村田さんの目線は、植物を求めてずっと斜め下を向いていた。路上植物に人々の「気配」 村田さんは、大学院修了後の2007年春、東京都内の化学メーカーに就職した。 営業を担当していたが、無機質な数字とばかり向き合う日々につらさを感じ、08年末に退職。この頃、疲れ切っていた自分を癒やしてくれたのは、電車の窓から見えた「緑」だった。植物を使ったデザインの仕事に就くため、専門学校に通い始めた。
信楽焼のタヌキが鎮座するプランター(村田あやこさん提供) 当時住んでいた神奈川県茅ヶ崎市内を歩いていると、個人商店の軒先にあったプランターが偶然視界に入った。どこにでもあるプランターに生える雑多な草花の真ん中に鎮座していたのは、信楽焼のタヌキ。計算された美ではないが、荒れているのとも違う。自然と共存している姿に「肩の力が抜けていていいな」と思わず見入っていた。 それからは、無意識に街中の緑が目に付くように。都会のど真ん中でも、一歩路地を入れば誰かが育てる植物があったし、名前も知らない花がアスファルトを割ってたくましく咲き誇っていた。 路上の植物は、近くに暮らす人たちの「気配」を感じられるから好きだ。「誰かが置いた鉢植えが割れて根付いちゃったのかな」と妄想するのも、路上園芸のめで方の一つだという。占い師のアドバイスで世界とつながる 村田さんは2009年頃から、道ばたで見つけた植物の写真を知人に見せたり、知り合い向けのライブ配信で紹介したりしていた。ただ、どこが面白いポイントなのかうまく言葉で表現できず、周りからも「何が楽しいの?」と聞かれる始末だった。
「路上盆栽」(村田あやこさん提供) 14年のある日。通っていたライブハウスのバーで、タロット占いを見つけた。500円を払って「どうしたら路上植物の面白さが伝わるでしょうか?」と尋ねると、女性占い師は「写真の撮り方や添えられたコメント次第で面白いか決まるわよ」と返してきた。 「占い関係ないじゃん」とも思ったが、何となくその日のうちに、X(旧ツイッター)とインスタグラムに、「路上園芸学会」という名のアカウントを作った。そして、1日3枚をノルマに、写真にコメントを添えて投稿する「一人大喜利大会」の修業を始めた。 しばらくすると、自分の伝えたいことが言語化できるように。国内はもちろん、英語のハッシュタグをつけた投稿には、アメリカやフランス、ブラジルといった海外からも予期せぬ反響が続々と集まった。 「私と同じように路上植物を楽しむ人は世界中にいるんだ」とうれしくなり、修業の道にのめり込んでいった。 1 2
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