映画「ゆるし」に込めた思いを話す平田監督(26日、京都市で)=川崎公太撮影映画「ゆるし」に込めた思いを話す平田監督(26日、京都市で)=川崎公太撮影

 宗教2世だった親友が自死を選んだことをきっかけに、元信者の女性が、宗教を背景とする虐待の実態に迫る映画「ゆるし」を制作した。親友は「ただ、親に愛してほしかった。神様ではなく、私を見てほしかった」という遺書を残しており、女性は「2世が抱える苦しみを伝えたい」と決意。300人以上の宗教2世から証言を集めた。今春から全国各地で上映されている。 映画を制作したのは、脚本、主演も務めた平田うらら監督(23)。平田監督は、立教大2年だった2020年7月、就職活動を通じてできた知人に勧誘され、ある宗教団体に入信した。自信を失っていた時で、自分を肯定してくれる言葉をかけられ、教団を「居場所」のように感じた。 ただ、信者の集会に通ううちに、交際相手や友人と縁を切るよう迫られた。違和感を抱きつつも離れられない日々が続いたが、家族の支えを受けて、1年近くたってから脱会できた。 親しかった宗教2世の女性の自死を知ったのは、その3か月後。集会で出会った信者の中で、唯一心を許せる相手だった。自分だけが先に脱会して親友を救えなかったことに罪悪感を抱き、遺書の中身を聞いて怒りが込み上げた。「教団は、生まれた瞬間に親を奪い、自由を奪い、人生を奪った。全てを奪って何が救いだ」 もともと大学で映画を学んでおり、自分で撮って実態を伝えようと思った。SNSなどを通じて取材を重ねていた22年7月、安倍晋三元首相銃撃事件が起きた。容疑者(当時)の母親が、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の熱心な信者で、教団への恨みから事件を起こしたと伝えられた。宗教2世に対する社会的関心が高まり、様々な教団の2世が取材に協力してくれた。 「センシティブ(繊細)な内容のため、主演をお願いした俳優が2度降板した」といい、自分で代役を務めた。制作費約170万円の多くはクラウドファンディングなどの寄付で賄った。 映画は約60分で、架空の宗教の信者を親に持つ「すず」が主人公。マラソン大会への参加や誕生日を祝うことを禁じられる一方、献金のためアルバイトに精を出し、教義に反すると、母からベルトで打たれて夜は寒空に放り出される――。2世の体験を基に、マインドコントロールの怖さや人間関係の崩壊などを描いた。平田監督は「虐待から逃れたい気持ちと、親への捨てきれない愛との葛藤に苦しむ2世は多い。実態に目を向け、自分に何ができるかを考えるきっかけにしてほしい」と訴える。 30日まで、京都市のアップリンク京都(075・600・7890)で上映。その後、名古屋市や山形県鶴岡市などで上映される。平田監督は「先生や生徒など学校関係者に見てほしい」と話しており、平田監督のX(旧ツイッター)のアカウントを通じて連絡を取れば、教育現場で無料上映し、講演も行う。