「怪しい勧誘には乗ってはいけない」と注意を促す清水勇希弁護士(大阪市北区で)「怪しい勧誘には乗ってはいけない」と注意を促す清水勇希弁護士(大阪市北区で)

 恋愛感情を抱かせて金をだまし取る「ロマンス詐欺」の被害が急増している問題で、広告会社から被害金回収の業務提携を持ちかけられ、断った弁護士が読売新聞の取材に応じた。「弁護士名義を貸してもらう代わりに報酬を支払う」と説明されたという。弁護士法違反にあたる恐れもあるが、報酬目当てに手を組む弁護士もいるとみられ、各地の弁護士会が注意を呼びかけている。(林信登) 被害金回収を巡っては、詐欺被害者から依頼を募るサイトが散見され、着手金を払ったのに被害金が戻ってこない「二次被害」が問題化している。これまで弁護士の関与は明らかになっていたが、業者側による勧誘行為の一端が浮かんだ。 取材に応じたのは、大阪弁護士会の清水勇希弁護士(29)。大手法律事務所から独立して3か月ほど経過した昨年1月、知人から「詐欺被害の相談者を紹介できる人がいる」と声をかけられた。 東京の広告会社社員を名乗る男性を紹介され、数日後にオンラインで面談。男性は「弁護士の名義を貸してもらいたい。その対価として毎月報酬を支払います」と切り出し、「国際ロマンス詐欺被害救済事業のご提案」と題されたスライドを示して説明を始めた。 事業では、会社側が詐欺被害の救済をうたうサイトを作成し、弁護士の名前や顔写真を掲載して運用。相談者を募り、電話やLINEで寄せられた相談には会社側の事務員らが対応する。弁護士は、相談者との面談(15~20分)などを担当するだけで、報酬が支払われる仕組みだった。 弁護士法は、弁護士が名義を無資格者に貸す「非弁提携」、弁護士資格がないのに報酬目的で法律事務を行う「非弁活動」を禁じ、詐欺の被害金回収は法律事務にあたる。 清水弁護士が、弁護士法に違反する恐れを指摘すると、男性は「その可能性はあります」と答えた一方、「すでに業務提携している弁護士はいる」と三つのサイトを示したという。 ロマンス詐欺では、弁護士でも被害金を回収できる確率は極めて低い。清水弁護士は「怪しい」と感じ、依頼をすぐに断った。 その約7か月後、業者が示したサイトを運営していたとされる弁護士の一人について、所属する千葉県弁護士会が「懲戒処分に相当する」と発表。誇大広告で被害回復に過度な期待を抱かせたのが理由で、同会には詐欺被害の相談者から「着手金を支払ったが、回復が進まない」との相談が多く寄せられていた。 清水弁護士は取材に「仕事をほしがる弁護士が業者に狙われていると感じた。二次被害に遭うのは相談者で、弁護士にはうまい話に惑わされない職業倫理が求められる」と警鐘を鳴らす。 一方、広告会社は取材に、サイトの広告を運用することはあると認めた上で、「(弁護士法違反にあたる)弁護士業務は行っていない」とし、弁護士への勧誘については「していない」と否定した。「救済にも仕事にもなる」信用  同様の仕組みで別の業者と提携し、弁護士法違反に問われた東京弁護士会所属の竹原孝雄被告(82)の刑事裁判でも、業者側の手口が明らかになっている。 大阪地裁であった8日の初公判で、竹原被告は自営業・村松純一被告(42)(起訴済み)らに被害者対応させていたことを認め、「(業者側から)『被害救済にも仕事にもなる』と勧められ、信用していた」などと語った。 検察側は冒頭陳述で、被害者から相談を受ける事務員に対し、村松被告が「依頼者から被害金回収の可能性を聞かれた場合、大げさに8割とか言っちゃっていい」と指示していたと指摘。竹原被告は事務員の面接や業務指導をしていなかったのに、報酬として毎月30万~50万円を受け取っていたとした。 大阪弁護士会は昨年12月、広告会社に弁護士名義を貸して被害金回収の対応を任せていたとして、弁護士の懲戒請求を公表。設置した被害者向けの電話相談窓口には、5日間で全国から184件の相談があった。 東京弁護士会や千葉県弁護士会も、ホームページで被害者に弁護士への依頼を控えるよう促している。

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