[New門]は、旬のニュースを記者が解き明かすコーナーです。今回のテーマは「刀剣ブーム」。
車内で一夜を明かし、目覚めると全く知らない町に…すっかり見る機会が減った寝台列車
ゲームや漫画で火が付いた刀剣ブームの勢いが止まらない。愛刀家の裾野は従来の年配男性から若い女性や外国人にまで広がり、日本刀を文化観光の柱にする自治体が出てきた。美術品としての価値が再認識される中、刀を制作する刀
鍛冶(かじ)
は減少傾向で、技術の継承が課題だ。
謙信・景勝の愛刀「聖地」作りに活用 かつて備前国だった岡山県東南部の瀬戸内市では、吉井川周辺に長船派など刀鍛冶の流派が興り、平安時代から日本有数の刀の生産地だった。中国山地で採れる砂鉄や、陸路、水運に恵まれ、優れた刀工を輩出した。
市は刀で地域活性化を目指す。2020年、ふるさと納税制度を活用した「クラウドファンディング」などで約8億円を集め、戦国武将の上杉謙信、景勝の愛刀として知られる備前刀「太刀 無銘一文字(
山鳥毛(やまとりげ)
)」(国宝)を5億円で購入。市内にある刀剣文化の伝承施設「備前長船刀剣博物館」で、年1回程度公開する。
同館を軸に「日本刀の聖地」とする文化観光拠点計画をつくり、21年に文化庁に認定された。地元住民や事業者らと連携し、刀剣ゆかりの場所に詳しい地元ガイドを育成し、山鳥毛のラッピングタクシーを走らせる。 市文化観光課の若松挙史課長(50)は「来館者の満足度は高く、さらに市全体で山鳥毛を感じられるようになれば」と意気込む。ゲームキャラ 人気の一因 近年の刀剣ブームは、15年に配信された日本刀を擬人化したオンラインゲーム「刀剣乱舞ONLINE」も一因とされる。個性豊かな男性キャラクターは特に女性に人気で、アニメや舞台になった。 人気漫画とコラボした刀剣の展覧会は盛況だ。岐阜県関市にある関鍛冶伝承館では昨年2月、「るろうに剣心」とタイアップし、主人公のライバルの愛刀を地元の刀鍛冶が再現。約1か月半の展示で1万2000人が来館した。今年2月からは、「花の慶次」の主人公で戦国武将の前田慶次が、豊臣秀吉の暗殺を念頭に入手したという刀を再現して展示し、約2か月で5000人が訪れた。 日本の漫画やゲームが世界中に広まる中、日本刀は外国人にも人気だ。備前長船刀剣博物館では22年、イギリス人のトゥミ・グレンデル・マーカンさん(28)を採用した。館内の英語による解説やSNSでの海外向け発信、訪日外国客ツアーの案内などを担っている。技術継承に危機 ブームの裏で刀鍛冶は減少傾向にある。「全日本刀匠会」(岡山市)によると、35年前に約300人だった会員はほぼ半減した。 高齢化と受注の減少も進んで実際に作っているのは全国で70~80人程度で、「裾野を広げなければ技術の継承は厳しくなる」と坪内哲也・同会事業部代表理事(64)は語る。 刀を制作できるまでの道のりは険しい。刀鍛冶に入門して5年以上修業し、文化庁の実質的な試験を修了することが条件となる。入門先は志望者自身が探すのが一般的だが、近年は同会への問い合わせが増え、8年前から未経験者向け研修会を始めた。修業は厳しく、独立までの投資が高額になることなどを伝え、志望者の本気度をみて入門先の相談に応じる。毎年30人ほど集まり、今春、刀鍛冶となった参加者もいる。 新作刀の販路も増やそうと昨年4月、京都市の武道具専門店「東山堂」と連携し、新作刀に特化した店を市内にオープンした。最も高く売れた刀は800万円で、売れ筋は200万円前後。今年4月には1日に3振り売れたという。来店者の9割は外国人で、美術品としての認知の広がりを感じさせる。
残り:582文字/全文:2090文字
読者会員限定記事です
新規登録ですぐ読む(読売新聞ご購読の方)
読者会員の方はこちらからログイン
![[エンタメ・文化] ゲームや漫画で火が付いた「刀剣ブーム」、文化観光の柱にも…刀鍛冶は減少し技術継承が課題に [エンタメ・文化] ゲームや漫画で火が付いた「刀剣ブーム」、文化観光の柱にも…刀鍛冶は減少し技術継承が課題に](https://www.walknews.com/wp-content/uploads/2024/05/1715458758_20240511-OYT1I50105-1-1024x576.jpg)