1泊100万円超でお城に泊まり、殿様気分を味わえる「城泊」事業に乗り出す自治体が増えている。先行する大洲城(愛媛県大洲市)などに続き、丸亀城(香川県丸亀市)と福山城(広島県福山市)が今年7月から開始し、他に8自治体で実証実験などが進められている。コロナ禍からインバウンド(訪日外国人客)が回復する中、観光庁が専門家を地方に派遣するなどして普及を支援している。(高松総局 浦西啓介、松山支局 丹下巨樹)

■人力車で「入城」 丸亀城は「石垣の名城」として知られ、江戸時代以前に建てられた「現存天守」を持つ全国12の城の中で初めて城泊を始める。丸亀市観光協会が、殿様気分を感じさせる仕掛け満載の1泊2日のプランを用意した。 宿泊客は、JR丸亀駅から人力車で「入城」し、太鼓演奏の出迎えを受ける。夕食は、旧丸亀藩・京極家屋敷の一部を移築した三の丸「延寿閣別館」で瀬戸内の海産物などを楽しみ、天守に設けられる「ナイトラウンジ」でお酒も飲める。2日目は、茶席や特産のうちわ作りを体験する。 城泊実施にあたり、市は約2億2700万円をかけて、延寿閣別館に寝室や浴室、トイレを整備。旅館業法や食品衛生法に基づく営業許可を取得する作業を進めている。 料金は2人1組で126万5000円(税込み)。今月から予約受け付けを開始し、市は年間30組の利用を見込む。大きな利益を生む事業ではないが、誘客の目玉として波及効果が期待され、担当者は「日本の歴史・文化が好きな外国人観光客への訴求力が城泊にはある」と自信を見せる。■専門家派遣 国内初の城泊は、期間限定のイベントを実施した平戸城(長崎県平戸市)だ。民泊仲介サービス会社が2017年に「キャッスルステイ」と銘打ち、抽選で1組を1泊2日で招待。7428組の応募があり、4241組が海外からだった。 平戸城での反響もあり、インバウンド拡大を目指す国は、城泊や城下町の観光資源開発を推進する。観光庁は20年度から、文化財の保存や耐震化、地域の合意形成などを支援する専門家派遣事業を開始。派遣先からは、常設での城泊を始める事例が生まれている。 20年7月スタートの大洲城を手始めに、21年4月に平戸城が開業。丸亀城、福山城がこれに続く。観光庁によると、このほか、昨年12月に実証実験を行った伊賀上野城(三重県伊賀市)や、白河小峰城(福島県白河市)、岩村城(岐阜県恵那市)、津山城(岡山県津山市)、松江城(松江市)など8自治体に専門家を派遣している。■外国人客にも評判大洲城では、宿泊客も含めて甲冑(かっちゅう)や着物姿で入城セレモニーが行われる(愛媛県大洲市で)大洲城では、宿泊客も含めて甲冑(かっちゅう)や着物姿で入城セレモニーが行われる(愛媛県大洲市で) 大洲城では、宿泊者が年々増えている。20、21年度は10~20人台だったが、22年度は53人、23年度は83人に拡大。外国人客にも少しずつ評判が広がり、23年度はアメリカやシンガポールなどの9人が泊まった。 木造の復元天守への宿泊や、火縄銃の祝砲による出迎えなどのリアルさが人気で、今年3月に泊まった会社役員(50)(神奈川県横須賀市)は「タイムスリップしたような特別感があって、ワクワクした」と話す。 平戸城の担当者によると、神楽鑑賞や茶道を体験した米国人観光客は「日本文化を肌で感じられた。帰国して自慢できる」と喜んでいたという。観光客の分散効果を期待も 訪日外国人客を巡っては、京都など有名観光地への集中による観光公害が課題となっており、まだ魅力が知られていない「地方」での城泊には、分散効果も期待される。 日本政府観光局によると、訪日外国人客数は、コロナ禍前の2019年に過去最多の3188万人に達し、24万人に激減した21年を経て、23年は2506万人まで回復。今年は円安もあり、3月の推計値は308万1600人と、単月で初めて300万人を超えた。 観光庁は、城のほか、寺や古民家など地方に数多く残る歴史的資源を活用した観光まちづくり事業を実施中で、同庁観光資源課は「地方への誘客を進め、城や寺などへの宿泊後、周辺施設も利用してもらう『点から面への展開』を期待したい」としている。

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