趣味は「お笑い」――。本業をもちながら、お笑いにいそしむ「社会人お笑い」が今、じわりと話題となっている。プロとも賞レースを戦う実力者が出てきた一方で、「仕事」「家庭」のはざまでお笑いに打ち込む彼らが、どんな生活を送っているかは知られていない。ある「芸人」に密着した。これは、ただの「趣味の話」。(デジタル編集部 古和康行)出番前、楽屋でネタ合わせをする「下町モルモット」出番前、楽屋でネタ合わせをする「下町モルモット」

「ラランド」の先輩が立つステージは 4月上旬、新宿のライブハウス「バティオス」。60人の客席は満員だ。この日は、社会人として趣味でお笑いを楽しむ、「社会人お笑い」のイベント「わらリーマン」が開かれていた。トリを任されたのはお笑いコンビ「下町モルモット」の2人だった。このコンビは社会人漫才師日本一を決める「社会人漫才王」で4大会連続で決勝、2度の準優勝の実績を持つ。有料にもかかわらず会場は満員だった有料にもかかわらず会場は満員だった 「わらリーマン」は、学生時代にお笑いサークルなどに所属しながら、社会に出てからお笑いを披露する場所を失った人たちの受け皿になろうと始まったイベントで、一般社団法人社会人お笑い協会が運営する。この日の第1部には男女18組が出演した。学生からお笑いを始めた人、職場の同僚と出演した人。ネタとしての完成度もマチマチ、観客のウケ方もさまざまだ。漫才中の「下町モルモット」奥山さん漫才中の「下町モルモット」奥山さん 「下町モルモット!」。BGMが鳴る。進行役が2人をステージに呼び込む。照明がつく。「サンパチ」マイクの前に立つ。ネタは「ゴルフの打ち方」。序盤はややウケ。間を丁寧に取って、ボケる、ツッコむ。終盤に畳みかける。笑い声が上がる。 ステージ後、下町モルモットのボケ役、奥山喬史さん(30)は言った。「新ネタでした。ウケると思ったところがウケなかった。もうちょっと修正していかないとですね……」イベントの出番前、近くの公園でネタ合わせをする奥山さん。周囲には「お笑い」のネタ合わせをする人が多数いたイベントの出番前、近くの公園でネタ合わせをする奥山さん。周囲には「お笑い」のネタ合わせをする人が多数いた 奥山さんの本業は、IT企業「ZOZO」に勤めるエンジニア。ファッション通販サイト「ZOZO TOWN」のデータ基盤開発を担当する。お笑いを始めたのは、学生時代。上智大学で「サークルの勧誘で声をかけてくれた先輩がかわいかったから」と軽い気持ちでお笑いサークルに入った。ボケのれいギャラクシーさん(本名非公開)とコンビを組んで下町モルモットを結成。大学お笑いの全国大会で上位入賞したこともある。 サークルの後輩には、人気お笑いコンビ「ラランド」もいる。自身も脚光を浴びていた学生時代から数年後の今、奥山さんは2人の姿を見ても「あそこまで売れきったら競う相手でもないかな」。大学院に進学したのもあって、「就職か博士課程に進むかの二択でした。プロを目指そうとも思いませんでした」と振り返る。下町モルモットの奥山さん(左)とれいギャラクシーさん下町モルモットの奥山さん(左)とれいギャラクシーさん でも、同時にこうも思う。「承認欲求は強いんです。自分のことを知ってほしいという気持ちが強い。だから、お笑いを続けている部分もある」。仕事があるから、食うには困らない。30歳代、「売れたい」とは少し違う気持ちで、心が揺れる。R-1ファイナリストは「副業厳禁」で退職決意 今年のピン芸人日本一を決める「R-1グランプリ」には、過去最多の5457人がエントリーした。決勝の9人に駒を進め話題になったのが、会社員として働きながら、アマチュアとして出場したどくさいスイッチ企画さん(本名:青山知弘さん)(36)だった。 1 2 3 4

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