『日韓ポピュラー音楽史』
金(キム)成(ソン)玟(ミン)

 日本と韓国は互いに影響しながら大衆音楽を形作ってきた。その視点から両国の戦後音楽史と相互関係を読み解く意欲作。

 注目は1990年代以降に関する論考だろう。世界第2位の巨大音楽市場を背景とするJポップは、欧米の流行から比較的自由な独自性で韓国にも影響した。だが、Kポップはそれ以上の波及力で、BTSやTWICEといった世界的グループを輩出していく。
 90年代の日本の音楽業界やメディアは世界の表現の主流だったヒップホップに大きく反応せず、「異種
混淆(こんこう)
」に消極的だった等の指摘は、音楽史にとどまらず社会論としての示唆にも富む。(慶応義塾大学出版会、2750円)(洋)
『古代出羽国の対蝦夷拠点 払田柵跡』吉川耕太郎著
 古代律令国家が東北の対
蝦夷(えみし)
政策で築いた城柵。多賀城をもしのぐ規模を誇った
払田柵(ほったのさく)
跡(秋田県)は、昭和初期の発掘で存在が確認されたが、文献上には見られない“謎の遺跡”だ。

 考古学の最前線を紹介するシリーズ「遺跡を学ぶ」の新刊。調査担当者が創建(9世紀前半)から
終焉(しゅうえん)
(10世紀後半)まで丁寧にたどる。100年近く調査されながら、いまだ不明なことが多いことに驚かされる。

 謎の分だけ論争を生むが、東北史の
碩学(せきがく)
は、一見異端な学説も否定せず、提示し続ける重要性を説く。地域の歴史の解明が、地道な調査と
真摯(しんし)
な議論の積み重ねで成り立つことを払田柵跡は教えてくれる。(新泉社、1870円)(多)

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