2008年、長年勤めた経済産業省をやめ、アマゾンに転職した当時、同社は「ネット書店大手」と呼ばれていた。それが業務を多角化し続けた結果、今やグーグル、アップルなどとともに巨大IT企業と目されるまでになった。
『インティマシー・コーディネーター 正義の味方じゃないけれど』西山ももこ著
成長した要因は様々あるが、実は公共政策部門も大きな役割を果たしていた。その部門の日本の責任者を15年務めた著者が、同社でのロビー活動の一端を明かした。 「経営者が車の運転手だとしたら、助手席に座るのが法務部門。そして運転しやすい道をあらかじめ整備するのが公共政策部門」。かつての同社での仕事をこう例える。 新たなサービスを展開しようとすると、旧来の法制度との調整が必要になることがある。例えば、「置き配」の実現を巡っては、廊下などに避難の支障となる物件が放置されてはいけないとする消防法に触れる恐れがあった。著者らは経産省や国土交通省に働きかけ、前向きな反応を引き出し、規制の回避に成功する。受け身の日本企業、自主的に見直さない省庁 もちろん規制の回避だけが仕事ではなく、誤解に基づく批判に対応するため、政策立案者のところへ説明に出向くことなどもある。ただ、こうした活動をしていて著者が気になったのは日本企業の同じような部門の姿だった。「情報収集中心で、ルールは変えられるものという認識が乏しかった」。著者はこの姿勢を「静的なロビイング」と呼ぶ。 日本の省庁側にも気になる点があった。「規制は政府が作ったいわば商品。民間企業なら商品やサービスは必ずアップデートするのに、自主的に見直すことはほぼない」 ロビー活動には、いまだに良くないイメージを抱いている人もいるだろう。だが、望むと望まざるとにかかわらずいまやロビー活動抜きに世の中は動かない。そんな時代の必読の書である。(中央公論新社、1980円)十時武士
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