オープンAIは日本法人を立ち上げ、生成AIの日本語対応に力を入れる(15日、東京都千代田区)

対話型の生成AI(人工知能)「Chat(チャット)GPT」を手掛ける米オープンAIが日本での事業に本腰を入れる。基盤技術である大規模言語モデルで、日本語の処理能力を従来の3倍に高めた改良版を企業向けなどに提供する。国産AIを手がける日本勢にとっては手ごわい競合相手となる。

「日本はオープンAIにとって重要な市場だ」。日本法人の本格稼働にあわせて15日に都内で記者会見したオープンAIのブラッド・ライトキャップ最高執行責任者(COO)はこう述べ、日本語に最適化した「カスタムモデル」と呼ぶ基盤技術のデモを披露した。

同社の最新の大規模言語モデル「GPT-4」で日本語の処理能力を高めた。特に翻訳や要約の性能が向上し、出力にかかる時間が従来の3分の1程度になったという。数カ月以内に企業向けなどに提供を始める。

回答を生成する時間が短縮できれば、AIを使った対話型のサービスのやりとりをよりスムーズにできる。先行してオープンAIのカスタムモデルを導入した米スタートアップの英会話アプリ「スピーク」では、データ処理を効率化することでコストを47%削減した。

オープンAIは2022年11月にチャットGPTのサービスを開始した。その後も新たな大規模言語モデルや改良版を相次いで公開し、回答の精度や安全性などの性能を高めてきた。4月12日にも最新版の「GPT-4ターボ」について、有料会員向けに提供を始めると発表したばかりだ。

オープンAIの大規模言語モデルはもともと日本向けに最適化しているわけではない。それでもすでに高い日本語能力を見せている。米ウェイツ・アンド・バイアスィズが公開する大規模言語モデルの日本語能力の指標では、上位4つをオープンAIのモデルが独占する。

オープンAIが生成AIブームに火を付けて以降、NECやNTT、ソフトバンクといった国内大手企業が生成AIの開発に参入した。東京大学発のイライザ(東京・文京)などの国内スタートアップの台頭も目立つ。

ただ、オープンAIと同じ土俵で闘うには至っていない。純粋な言語能力でみると国内企業が開発した大規模言語モデルはオープンAIの旧モデルと同等であることをうたうものが多く、周回遅れの印象は否めない。

オープンAIが日本の制度や慣習、法律、ビジネスなどに詳しい生成AIを実現すれば、同社の技術を利用する国内の企業や消費者がさらに増える可能性がある。ライトキャップ氏は日本企業と協調していく考えを示すが、国産技術で市場の開拓をめざす日本勢にとって脅威となりうる。

世界に目を転じると、多言語に対応できる大規模言語モデルの開発ではオープンAIも競合の追い上げを受けている。米グーグルが開発した「Gemini(ジェミニ)」や、米新興アンソロピックが3月に公開した「Claude(クロード)3」は、一部の性能でGPT-4を上回ったとしている。

テクノロジー企業がより大規模なモデルの開発を競った結果、計算基盤となるデータセンターで大量の電力を消費してしまうといった弊害も指摘されるようになっている。日本企業がこの分野で生き残るには、省エネルギー性能などで独自の強みを発揮していく取り組みが必要になる。

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