規制を強めれば利用者は規制の内側に集まる——。この前提が崩れる実例がEUで示されました。

バイナンスが欧州連合(EU)でサービスを停止した後、ユーザーが引き出した資金のおよそ70%は、MiCA(EUの仮想通貨市場規則)の認可を持つ他の取引所ではなく、利用者自身が秘密鍵を管理する「自己管理型(セルフカストディ)ウォレット」に移りました。共同CEOのリチャード・テン氏がロイター主催のカンファレンスで明らかにしたものです。

認可取引所に移った資金は30%にとどまり、規制側が想定したはずの「認可事業者への乗り換え」よりも、当局の監督が及ばない場所への移動が多数派だったことになります。金融商品取引法への移行という形で規制強化が進む日本にとっても、他人事とは言い切れない数字です。

認可の期限が来た日、資金は「外」を選んだ

バイナンスは6月24日にギリシャでのMiCAライセンス申請を取り下げ、認可のないまま移行期間の期限である7月1日を迎えました。EU域内の顧客に対しては6月下旬の時点でサービス停止を通知しており、域内ユーザーに残された選択肢は事実上、資金の引き出しだけでした。

6月29日からの1週間にバイナンスから流出した資金は純額で12億3,000万ドルと、前の週から207%増加。その行き先の7割が認可取引所ではなく自己管理型ウォレットだったことになります。

テン氏はこの資金移動についてMiCAが掲げる消費者保護の目的を果たせているのかと疑問を呈しています。規制の内側に残った3割は認可済みの競合取引所へ移り、EUではクレディ・アグリコル系CACEISやドイツのDZ銀行など、認可の関門を越えられる伝統的金融機関に主導権が移りつつあります。

規制強化が進む日本、同じ構図は起きないのか

日本でも規制強化は現在進行形です。仮想通貨を「金融商品」と位置づける金融商品取引法などの改正案は6月11日に衆議院を通過し、インサイダー取引規制の導入や無登録業者への罰則強化が盛り込まれました。金融庁はかねて無登録の海外取引所に対する警告を繰り返しており、規制の網は着実に狭まっています。

一方で、日本の利用者が規制の外側を使う構図はEUの例を待つまでもなく既に存在しています。国内取引所ではレバレッジが2倍に制限され、取扱銘柄も審査を経た一部にとどまるため、これらを求める利用者は自己管理型ウォレットを利用してきました。国内の規制が強まり、海外業者への締め付けが実効性を持つほど、こうした利用者の資金がEUと同様に監督の外側へ向かう経路は残り続けます。

日本の設計はEUと異なる「留まる利点」を持つ

EUと異なるのは日本の改正案が規制強化と同時に「規制の内側に留まる利点」を組み込んでいる点です。

税率20%の申告分離課税への移行、損失の3年繰り越しなどがそれにあたり、監督の強化だけを先行させたMiCAとは制度の作り方が対照的です。

日本の制度移行が問われるのはこの「留まる利点」が制約を上回る誘因として機能するかどうかです。内側の魅力を十分に高めれば資金は国内に留まる一方、利点の適用範囲が狭かったり施行が遅れたりすれば、EUと同じ物差しで日本の制度も測られることになりそうです。

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記事ソース:cryptobriefing.com

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